2014年4月29日火曜日

凍結胚移植後1卵性双胎、高血圧合併妊娠で無事出産、本当に幸運でした!

おめでとうございます。そして産科の先生、ありがとうございました。
先日、30代後半の方で、妊娠前の血圧が192/122だった方が、降圧剤を飲みながら、凍結胚盤胞移植、1卵性双胎で妊娠し、30週中頃で双子を出産されたとのご報告を頂きました。
大変な経過であったようですが、何とか出産まで漕ぎ着けられたことは、非常に幸運であったと思います。御本人の覚悟と努力、そして産科の先生のご尽力にもよるところです。産科の先生に御礼を、そして御本人にはお祝いを申し上げます。
この方の経緯は、まさに様々な施設と先生方の総力戦でした。
当初、右の卵管閉塞に対しては、当クリニックで卵管鏡下卵管形成術を施行。
その後、左の重症の卵管水腫には、他院で腹腔鏡下に卵管切除。
降圧剤は、多剤併用し、妊娠の許可に関しては、内科や大学病院にコンサルトし、その上で体外受精。胚移植4回目(凍結胚盤胞移植1個)で、一卵性双胎となり、当クリニック卒業。
大学病院ではバイアスピリンも使用し、早産傾向もあり管理入院。妊娠35週前に血圧が危険状態に上昇となり帝王切開となりました。児はNICUに入院したものの無事その後退院。
お子様も特に問題なく、本当に良かったです。

さて、この方の結果的に良かったことのみを皆さんにお伝えすることが主目的ではなく、これを読んでいる皆さんに何が参考になるか考えてみましょう。
①まず、血圧に関しては、最初の血圧は妊娠を許可される状態ではありませんでした。高血圧のまま妊娠すると、とても30週以降まで妊娠を維持できません。妊娠後に血圧をコントロールすることは非常に難しく、薬を使用してもコントロールできる保証は全くないのです。結果として、脳出血、痙攣、胎盤剥離などをおこす可能性が高くなり、妊娠を中断し、人工中絶も考えることになるのです。
皆さんは、単に妊娠することが目的ではありません。元気なお子さんを手に抱くことが目的です。したがって、妊娠前に、出産までを考えた準備が必要なのです。
この方は、妊娠前から降圧剤を使用していました。薬を使用することをためらうのではなく、もし妊娠継続に不利な条件が今あるならば、それに対する対策をしっかりと取る必要があるのです。
この方は肥満ではなかったのですが、肥満の方は減量をして、高血圧や高血糖をしっかりとコントロールする必要があるのです。
②この方は35週前で帝王切開になりましたが、これがぎりぎりの選択だったと推測されます。妊娠24週ぐらいで妊娠継続が不可能な場合もあり得るのです。皆さん、妊娠したら最後まで妊娠継続できると漠然と考えていませんか?様々な合併症があると、最後まで妊娠継続できる可能性はかなり低くなるのです。一般的に、合併症のある場合には、最後まで妊娠継続できない可能性についても理解して頂く必要があります。
③この方は比較的若く、卵巣機能もしっかりしていたので、卵管水腫の切除もおこなう余裕がありました。例えば40歳以上の方や、卵巣機能がすでに低下している方には、重症の卵管水腫があってもその手術をする意義が低下し、余裕もないのです。年齢や卵巣機能の低下により、不妊治療の選択肢も徐々に狭まっていくのです。したがって、治療を迷っている方は、まずは一人を急いで妊娠/出産することを考えてみては如何でしょうか。
④妊娠/出産で死亡される方は、日本でも毎年40人程度いらっしゃいます。これは世界的には最も低いグループの数字です。一例を挙げると、日本では2010年の妊産婦10万人あたりの死亡は4.1人ですが、アメリカは63人、ヨーロッパでも20人なのです。いかに日本の産科の先生方ががんばっているかをご理解頂きたいと思います。日本の産科の成績は、世界的には奇跡的なものなのですね。しかし、妊娠中の対策は、本人と赤ちゃんの両方を考えておこなう必要があるので、対応できる限界が様々あるのです。この方にも、いつ御本人に異常が起きてもおかしくない状況だったと思います.御本人もご家族も、実際に命を賭けての挑戦だったと思います。妊娠のみではなく、出産までの道のりを考えて、リスクがある場合には、その必要性の理解と、覚悟が必要になるのですが、その覚悟の元に、今できる対策をどんどん進めていきましょう

この方は、ご自身の覚悟と努力が実を結んで本当に良かったです。しかし、不妊治療は結果が出ないことも少なくありません。その可能性を少しでも上げるためには、スピードも含めて、その対策をしっかりと取っていきましょう。

2014年4月24日木曜日

日本産婦人科学会参加報告2014年4月

去る4月20日、日本産科婦人科学会第66回学術講演会に参加してきました。
今回は東京フォーラムでの開催です。
今回は、縁があり、Dr. Sedar E. Bulumご家族とも交流する機会を得ました。今回、産婦人科学会から招聘されて、今回の学術講演会で、講演をなされました。生殖内分泌、子宮筋腫の原因の究明などで有名な、アメリカ・シカゴのNorthwestern Universityの教授です。
私の参加の証拠写真、セルフィッシュ?も取りましたが、非常に残念なのが、手をいっぱいに伸ばして撮影したものの、ほとんど自分の顔で、証拠となる背景がほとんど映りません。残念の極みです。また会場では、笑顔を作れませんでした。周辺に産婦人科医がいっぱいいる中で、一人で笑顔を作って写真を撮ることがいかに難しいか、ご理解下さい。



 
学会場を出て、KITTEの空中庭園から東京駅をバックに、笑顔を作って撮影しましたが、結局のところあまり変わりませんね~。残念~~。
 
さて、前置きはこれくらいで、今回の皆さんへのご報告です。
 
①PCO女性に、レトロゾール(フェマーラ)を使用すると、1.1~1.6個の卵子がとれ、胚盤胞まで成長したならば、胚移植あたりおよそ50%の妊娠率が得られた。・・・胚移植するまで、キャンセルが半分以上あると思いますが、試してよい方法と言えます。
②40歳未満のAMH<0.1の方では、約半数の方に、甲状腺の自己抗体陽性でした。閉経にも関係しているようで、今後当クリニックでも検査してみたいと思います。
③琉球大学の報告では、採卵後6日目の胚盤胞は、5日目胚盤胞と同等の妊娠率であったが、流産率が高い傾向にあった。・・・当クリニックでも、5日目、6日目の胚盤胞での妊娠率に差はありませんでした。
 
他にも、もう少し調べてから、導入してみたい薬もありました。
その際には、また皆さんのご協力をお願い致します。
 
 
 

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)の子宮内膜症ガイドライン(抜粋)

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)の、子宮内膜症に対するガイドラインが、Human Reproduction 2014年3月号に載ったので、不妊治療に関する項目を抜粋してみました。
①子宮内膜症のある不妊女性に、スプレキュアやボンゾールなどの薬を試みるべきではない。・・・つまり、内膜症のある不妊女性には、不妊治療として薬剤療法が中心とはならないと言うことでしょう。手術やHMG-AIH、体外受精などが中心となるべきであると言うことです。
②子宮内膜症の1期、2期(つまり軽症~中等症)の不妊女性には、手術療法(最近は腹腔鏡手術)による癒着剥離で妊娠率を高められる。
③3期、4期(つまり重症の内膜症)の方には、待機療法よりも腹腔鏡手術により、妊娠率の上昇が期待できる。・・・つまり、重症の方には、手術などが必要であり、排卵誘発剤や人工授精などでは妊娠率の上昇は期待できないと言うことでしょう。最近では体外受精が主流になっています。
軽度の内膜症患者さんには、HMG-AIHをおこなうことで、待機療法(つまりタイミング法など)よりも5.6倍妊娠率が上昇する。
自然周期のAIHよりも、HMG-AIHでは5.1倍の妊娠率が得られる。
内膜症のある不妊女性に、体外受精をおこなう場合には、3~6ヶ月前から、ナフェレリール、ブセレキュア、リュープリンなどの治療薬を使用すると、妊娠率の向上が得られる
⑦3cm以上のチョコレート嚢腫があっても、体外受精前に手術をおこなうことで妊娠率が高まる根拠はない。・・・つまり、体外受精をするならば、3cm以上のチョコレート嚢腫があっても、手術せずにそのままおこなって良い、ということです。ただし、卵胞を取りにくい場合には、手術の意義はある。

内膜症への対応の目安となるガイドラインだと思います。皆さんも参考にしてみては如何でしょう。

2014年4月22日火曜日

今年2回目の、ふた桁妊娠!やはりうれしいのです。

先日、今年2回目のふた桁の妊娠数が出ました。堂々の11例の妊娠です。
内訳は、クロミフェン+AIHでの妊娠2例、凍結胚移植妊娠8例、体外受精新鮮胚移植1例でした。凍結胚盤胞移植妊娠が大多数を占めており、全国的な流れですが、今後も凍結胚移植の妊娠が増加していくのでしょう。
この日は、患者さんも比較的多く、午前中の診療が終わって、ややバテ気味でしたが、午後に妊娠6例目、7例目の妊娠者が出てきたときには、10例に達するかもしれない、という期待感が出てきて、むしろ気持ちは高ぶってくるのが判りました。(非常に単純な精神構造には諦めもありますが、、、、)
そして、8例目になると、看護師さんにも「どうかな?どうかな?」と話しかけながらの診療です。
診療が終了近くになり、妊娠の検査が、もうないかどうか、検査室まで様子を見に行く始末。
診療が終わるか、10例に達するか、の瀬戸際のぎりぎりの鍔迫り合い!(いったい日々の診療で、何の戦いをしているのだ~~~)
そして、ついに10例に達すると、周りに職員や、1階のラボ課の技師さん達にも触れ回る(若干、約1名のみの)騒ぎです。ヤッタ~~!
職員のみんなも一緒に喜んでくれるのは、またとてもうれしいですね。喜びも増幅されます。
さあ、今夜はうれしく過ごせそうだ。
また、こんな気持ちの良い日を目指して、皆さんと一緒に、またがんばるぞ~。
また、最後まで読んで下さった皆さん、お付き合いありがとうございました。

2014年4月14日月曜日

凍結精子による人工授精という選択肢(単身赴任夫婦)

先日、35歳前後の方で、夫が北海道や九州などの遠隔地に単身赴任している状況で、凍結精子を用いて人工授精をおこないました。初回のAIHで妊娠されて、無事卒業されました。
 この方は、前医で2回すでにAIHを受けており、当クリニックへは、体外受精も考えての転院でした。卵管造影検査をおこない、精子凍結して1回目のAIHでの妊娠です。
 精子は凍結すると、およそ半分は運動を停止します。したがって凍結精子を用いる場合には、注意が必要です。
 AIHでは相当数の運動精子が必要なので、正常な精子で無いとAIHには使用できません。また1回のAIHで、1回分の凍結精子をすべて使用する必要があります。
 一方、顕微授精をするならば、多少精子が悪くても、わずかな精子でICSIが可能なので、いくつにも小分けして凍結できますし、1回の射精精子で何度でもICSI可能です。
 夫が単身赴任で遠隔地にいる場合には、このように凍結精子を用いての人工授精も可能なのですね。ただし、AIHでは1回ですべて使用するので、何回分も凍結する必要があります。その分の凍結費用(約1万円)も必要とします。したがって一般的には凍結精子を用いる場合には、体外受精や顕微授精が主におこなわれているのです。
 ただ、体外受精をまだ考えておらず、人工授精を数回受けたい場合には、このような選択肢もあるのですね。

生殖医療専門医制度認定研修施設証とどく!

 日本生殖医学会の「生殖医療専門医制度認定研修施設証」が届きました。この4月から5年間、生殖医療専門医の研修施設として認められたと言うことになるのです。
 千葉県では、千葉大などの大学病院付属病院4カ所、個人クリニックでは、当クリニックともう1カ所の、合計6カ所のみでした。全国では196施設あります。
これは、生殖医療専門医が1名以上常駐し、年間100例以上の体外受精をおこなっている、という基準があります。
これ自体が、なにかの目標になるものではありませんが、一つの基準を取得している指標と考えて頂ければ幸いです。
 
 クリニックに掲示致します。皆様も是非一度見て頂けますか。
職員のがんばりの一つの証明なのです。

 


2014年4月12日土曜日

1017件のアクセスへの感謝。まだまだがんばらねば!

4月3日に、このブログの1日のアクセス?が1,017件と、初めて一千件を超えました。
この数字がどの程度のものなのかはよく分かりませんが、とにかく多くの方がブログやホームページをみて下さっているのだと再認識しました。
このブログを見ている皆さんに感謝申し上げます。
開業した15年前には、ネットでのこのようなブログやフェイスブック、ツイッターなど、まだ良く存在が判らなかったのですが、今では情報を探す中心になっているのですね。
未だにこれらの情報ネットワークの構造を良く理解できずに、何とか判る範囲で利用している、いつまで経ってもネット初心者の私ですが、テクニックは未熟でも、何とか中身のある不妊治療の情報をお届けしていきたいと思います。
時には(しばしば)ふざけた言葉もありますが、その辺はご理解、諦めて頂き、眺めて下されば幸いです。
またがんばるぞ~~!

2014年4月11日金曜日

Dr.Quinnがやってきた! 15th Anniversary night at TAKAHASHI WOMEN'S CLINIC

Dr.Quinnがやってきた!
15th Anniversary meeting at TAKAHASHI WOMEN'S CLINIC
4月8日に、DR.Patrick Quinnが、高橋ウイメンズクリニックに、表敬訪問に来院しました。皆さんは、DR. Quinnをご存じでしょうか。25年前に、体外受精の市販培養液を作製した世界的にも有名な博士なのです。25年前、私は体外受精を日本で先駆けて始めていた虎の門病院で、体外受精にたずさわれたのですが、Dr. QuinnのHTF培養液を使用することで、妊娠率が劇的に改善したのでした。
そのHTF制作者のDr.Quinnが、訪問してきてくれたのです。始めてHTFを知ってから、なんと4半世紀経っての交流であり、非常に感激、感慨深いものがありました。
今回はQuinn の培養液のユーザーとの意見交換と、将来の培養液の提案でクリニックを回ってきたようです。ちょうど4月が、当クリニックの15周年だったので、
TAKAHASHI WOMEN'S CLINIC
15th ANNIVERSARY NIGHT with Dr. Quinn
 と銘打って、ミニカンファレンスを開催致しました。
 私のクリニックからは、昨年の実績と妊娠率などの成績や日本の体外受精の特徴などを話しました。今回は、関東近辺の主だった施設への3泊でのハードスケジュールな訪問で、千葉県では、当クリニックだけの訪問だったようです。



今回は、Ms. Kiri(胚培養士・コーディネータ-)も同行されました。英語で成績を発表して、また英語で話をするのがもう大変なのです。しかし、内容を判ってくれたかは不明なのですが、大事なことは、「めげずに話し切る。とにかく、話を進める」ことなのですね。例えば、お笑い芸人のすごいところは、たとえ会場がしらけても、ネタを話しきることなのです。それがプロなのですね。(いったい私は何の話をしているのでしょうか。感動する話をしているのですが、ネタが滑るお笑い芸人のすごさを話してしまっている自分が情けない。何を目指しているのだ~~。)

 
レクチャー後に、千葉大学の産婦人科の先生方とも、一緒に集合写真!いつもサポートありがとうございます。
 

講演会後の懇親会! これは燃えるのです。酔うと、舌も滑らかに、英単語が出るわ出るわ、よどみない英会話が出来る(個人の感想であり、効果を保証されるものではありません、、、、)のです。単に酔っ払って、相手が何を言っているのか、自分がどういっているか、を全く気にならなくなるからでしょうか。私の場合、酔った方が良いようなのです。問題点は、口が滑らかになるほど酔っていると、肝心の学術的な話が出来なくなってしまうのです。折角の機会が、単なるオヤジの飲み会となってしまったことに自己嫌悪!顔の大きさの違いにまた愕然!
どうしたら良いのでしょうか?

不妊治療を通じて、今回のDr.Quinnとの出会いのように、様々な方との交流をおこなえることは本当に幸せなのですね。拡大写真にして、エドワード博士との写真の横に、クリニック内に掲示します。

2014年4月2日水曜日

2014年3月の妊娠数

2014年3月の妊娠数の報告をいたします。

1)3月の妊娠数 81例       今年の累積妊娠数 212例   全累積妊娠数 10,532例

 ART妊娠    65例    (内訳:  IVF 23例  ICSI 5例     凍結胚移植 37例) 

 AIH妊娠    6例     

その他一般不妊治療      10例  (タイミング、クロミフェンなど) 

1月55例、2月76例、3月81例と妊娠数は増加しています。これは治療日数の増加に比例しており、成績は同等と考えられ、安定した治療をおこなっている指標と考えています。   
 前月との大きな変化はありませんが、凍結胚移植妊娠の増加が比較的大きな特徴です。
 
 

 昨年の同期の成績と比較すると、妊娠総数は同等ですが、一般不妊治療での妊娠数は低下し、ARTの妊娠数が上昇しています。当クリニックの受け入れ体制の事情から、昨年4月から体外受精を考えている、治療を急ぐ方のみ、新規に受付ているのですが、現在8割がART関連の妊娠となっています。
 



 高濃度総合ビタミン剤の「アシストワン」は、現在、当クリニック通院中の方のみに院内での販売としています。しかし、最近、院外からの問い合わせも多くなり、院外販売も開始する事に決定致しました。インターネットでの注文、宅配で、6月上旬の販売を目指して、現在準備中です。
 今しばらくお待ち下さいますよう、お願い申し上げます。

 本日も、今までたくさんのサプリメントをのんでいた方から、お褒めの感想を頂きました。
アシストワンの特徴の一つとして、その利便性と、保存法、携帯性、を挙げて下さいました。
 ①20種類以上のビタミン、サプリが1回で、高用量飲める
 ②1回毎に、パックされているので、毎日ふたを開ける必要が無く、サプリメントが古く(酸化)されない。
 ③旅行などにも、いくつものかさばる容器をいくつも持ち歩かず、必要な回数分のパックを持ちあるけて、かさばらない。



 
 
 今まで、看護師の人員不足で、皆さんの待ち時間が長くなり、大変ご迷惑をおかけ致しました。
 4月に入り、人数は十分に補充され、待ち時間も徐々に改善されています。
 新人の方が,また慣れてくれば、待ち時間は今後も徐々に改善される見通しですので、もう少し猶予を頂きたいと存じます。
 比較的午後は待ち時間が少ないので、午後の診察時間もご利用下さい。