2015年5月17日日曜日

着床前診断のメリットと限界、流れとは?

日本遺伝カウンセリング学会誌が送られてきました。
IVFなんばクリニックの中岡義晴先生が「着床前診断の現状と今後」という題名で、シンポジウム論文を投稿されていましたが、参考になりましたので、私の視点での要約をご紹介致します。

日本の着床前診断(PGD)の適応は、
①重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある遺伝子変異ならびに染色体異常を保因する場合
②均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産
です。
つまり、

着床前診断は、

1)重症の遺伝病のある場合か、

2)お二人のどちらかに染色体異常のある習慣流産の方、

のみが対象になるのです。

PGDの意義としては、

1)羊水検査での異常と診断された場合に中絶するような事態を防ぐことが可能である。

2)均衡型染色体異常では、70%が流産しますが、これを防ぐことが可能である

3)流産を避けたいカップルには有効である

などが、考えられます。

一方、

PGDでの、不都合な面は、

1)PGDにより、生児獲得率(赤ちゃんが得られる可能性)は上がらない

2)妊娠するのに体外受精を必要としないカップルにも、体外受精をすることになる

PGDで赤ちゃんが得られる可能性が高くなると勘違いされている方が、少なくありません。
PGDを行うことで、正常胚が増えるわけではないのです。
むしろ正常胚に対しても、胚の一部分をはぎ取ってくる操作が必要なわけですから、正常胚の着床率が低下する可能性もあるのです。(最近のデータでは、PGDをおこなっても着床率はほぼ同じであるとの報告もありますが、正常胚の着床率が上昇するのことはないのです)
ただし、染色体異常の胚は移植しないので、胚移植あたりの妊娠率は上昇します。(欧米から一例として、胚移植あたりの妊娠率は、46%から71%に上昇した。流産率が9%から3%に低下した、などです)また、年齢が上がっても、流産率はほぼ一定の10%だったとの報告もあるようです。(PGDでも流産を完全に防げるものではないのです)

PGD実施までの準備、期間
PGDには、日本産科婦人科学会の承認が必要です。手続きには
①自施設での遺伝カウンセリング
②第三者機関での遺伝カウンセリング
③自施設での倫理委員会の承認
④日本産科婦人科学科への申請、承認

承認まで必要な期間は、平均6ヶ月かかり、その後に体外受精をするので、妊娠までは約10ヶ月かかるとの事でした。
実際には、遺伝カウンセリングや倫理委員会をもっている施設は非常に限られます。
千葉県では、実際におこなっている施設はないでしょう。
現在、日本ではわずか300例のPGDがおこなわれているようです。
今後、簡略化されて広まる可能性はありますが、その意義と限界をしっかりと理解する必要があるでしょう。









2015年5月16日土曜日

脳下垂体腺腫手術後の妊娠例(2ヶ月つながりです)

20歳代後半の脳下垂体腺腫手術後の妊娠例をご紹介致します。
脳下垂体腺腫の手術後であり、卵巣刺激ホルモンのLH<0.1、FSH0.13をかなり低く、そのままでは卵巣は眠ってしまい、排卵も生理もない状態です。生理をおこすには、ピルなどのホルモン剤を使用しますが、排卵をおこすにはHMG注射が必要です。

前医では、HMG注射でのタイミング12回、AIH4回、体外受精2回(1回目ロング法で7個採卵、2回目はアンタゴニスト法で採卵できず)とのことでした。

当クリニックでは、再度卵管造影検査をおこない、ビタミンDも投与し、HMG注射で排卵誘発し、妊娠され、胎児心拍を確認されました。直前のご紹介例と同じ来院後2ヶ月目でした。(2ヶ月つながりですね) 体外受精を受けていても、体外受精以外の方法での妊娠の可能性も同時に追求してよいのです。

この方に伺うと、HMG注射での排卵誘発で、HCGをうつタイミングは超音波検査のみでおこなっていたそうです。この方のようにLH、FSHが低い方へのHMG注射では、卵胞が2cmと大きくなっていても、卵胞ホルモン(エストラジオール)が低いことがしばしばあります。したがって、HCG投与前にはホルモン検査でエストラジオールがしっかりと分泌されていることを確認する必要があるのですね。また、HMG注射での排卵誘発では、プロベラ、ルトラールなどの黄体ホルモンは必要なのです。使用しないと高温期が短くすぐに生理が来てしまうことがしばしばおこります。

(ちなみに、クロミフェン周期では、黄体ホルモンの使用により妊娠率が上昇することはあまり期待できませんので、クロミフェン周期での黄体ホルモンは当クリニックでは高温期が明らかに短い方にのみ使用しています)

当クリニックでは、体外受精のみをお勧めしているのではなく、(ただ、体外受精もいとわない、すべての方法を考えている覚悟のある方には) しっかりと検査をおこない、少しでも妊娠する可能性を上げる為に治療の可能性をひろく考えていきたいと思います。

AMH<0.1で、体外受精で妊娠し2ヶ月での卒業例

38歳でAMH<0.1の方が、すぐに体外受精をうけて、幸運にも妊娠されて卒業されました。
この方は他院ですでにAMH0.89が低かったのですが、AIHを6回受けていらっしゃいました。
1年後のAMHの再検査でAMH<0.1であり、意を決して当クリニックにいらっしゃった方です。
当クリニックの再検査でもAMH<0.1であり、DHEAsも低く、DHEAを補充しながら、子宮鏡などの一通りの検査をおこないました。
検査終了の翌周期に、自然周期10日目におよそ2cmの卵胞を認めたので、体外受精に挑戦しました。
2個採卵でき、1個は未熟卵、1個が受精し、採卵後2日目で胚移植し、そして妊娠されました。来院後2ヶ月での卒業となったのです。
AMH<0.1でも、その値だけで諦める必要はありませんが、簡単に妊娠できるとはお考えにならないで下さいね。この方はむしろ稀な例なのです。AMHをみると本来は、もっと早期にIVFに入っていても良かったかもしれません。
当クリニックでは、38歳以上の方やAMHが低い方には、体外受精のみをお勧めしているのではなく、「何をするにも急いで行きましょう」とお話ししています。この方は結果的には体外受精での妊娠でしたが、少しでも妊娠する可能性を高めるために、はじめから体外受精のみをお勧めしているのではなく、急いで一通りの検査をして準備もしっかりとしてから進めております。
皆さんも当クリニックの方針をご理解頂きたいと存じます。
このところ、皆さんへご紹介できるような例が数例続いていますが、日々の診療、ベースをしっかりすることを心がけて行きたいと思います。
良い結果が届くように、今後も経過が順調に進むことを祈るのみです。

45歳の方の妊娠。連日の卒業のご報告

先日、45歳で初めての体外受精で妊娠し、卒業された方がいらっしゃいました。
連日の45歳クラスの方の卒業は、非常に稀な事です。
この方は、8年ぶりの再来院でしたが、この間、不妊治療はおこなってなかったとの事でした。
アンチミューラリアンホルモンは、2.52で38歳~39歳相当と、卵巣年齢は実年齢を下回りました。子宮前壁には、5cmの子宮腺筋症がありましたが、子宮内腔の変形、拡大はありませんでした。
クロミフェン-HMG-アンタゴニスト法で排卵誘発し、4個採卵、3個正常受精し、2個胚移植して妊娠し、今回の卒業になりました。
事前検査で、ビタミンC、D、DHEAsが低かったので、アシストワンと、DHEAを補充しました。年齢が高いため、事前におこなえる準備はすべておこなっての挑戦でした。
昨日も、46歳の方の卒業をご報告しましたが、AMHは実年齢以上に若く、卵子も複数採取できました。やはり、好条件がそろう必要がありますね。
この方も、今後の経過が順調であることをお祈りするのみです。
また、同じようなうれしい結果が得られるように、引き続きがんばっていきましょう。

2015年5月15日金曜日

46才の方の卒業。今年トップかも。

先日、46歳の方が妊娠し卒業されました。今年トップの年齢で、今まででもトップタイの年齢だと思います。
45歳で3年ぶりの体外受精再挑戦でした。
4個採卵し、4個受精。2個新鮮胚移植し、化学的妊娠。胚盤胞が1個でき、凍結保存。
今回、凍結胚盤胞を移植し、妊娠、卒業の運びとなりました
この方は、特別な方法は何もせずに、クロミフェンのみでのシンプルな体外受精でした。
胚培養士の技術の真っ向勝負、とでもいいましょうか。クリニック、胚培養室の地力の見せ所であったかもしれません。
通常は、年齢的には採卵できた卵子の8割は染色体異常であり、正常受精、胚盤胞到達、胚移植することさえ、なかなか難しい状況なのです。しかし、このような順調にいく方もいらっしゃるのですね。ですから、年齢的には妊娠が非常に難しいのですが、年齢のみで諦めるようなことは言えないですね。
私たちのする事は、今後もこのような幸運な方がひとりで増えるように地力をつけていきたいと思います。
あとは妊娠経過が順調に経過する事をお祈りするのみです。

5月18日放送 NHK Eテレ 「U-29 人生デザイン」の 予告編が更新されました!

5月18日(月)7時25分放送の、NHK Eテレ 「U-29 人生デザイン」の予告編

が昨日更新されました。U-29世代の「人生の選択」を描く密着ドキュメント番組ですが、今回当クリニックの胚培養士が取り上げられます。
番組ナレーターは、俳優の松坂 桃李さん。聞いたことがあるぞう。たぶん今人気の、イケメン俳優でしょう。
予告編は24秒で、当然私は出てきません。(あったりまえだろ~~~!すみませんm(_ _)m 初めての顔文字使用です)

ウィキペディアによると、
「U-29世代(29歳以下)」の悩みや不安に加え、新たなチャレンジを通して、“社会に出るとは○○○ なんだ”を描く“生きかた番組”で、内容は主人公の仕事や暮らしの様子をドキュメントして、働く醍醐味や、収入と支出、さらには、オンとオフの過ごし方を伝える。なお、この『人生デザイン U-29』という番組タイトルは、「自らの人生をデザインしようと奮闘中の29歳以下代表」という意味が込められている」との事です。

なるほどなるほど、
直前になって、すでに編集も終えているはずの時期に、番組の勉強をしている私の不勉強さ。撮影されたスタッフもさぞかしトンチンカンなことを言っている院長だと思ったかもしれません。しかし、それはプロでしょう。しっかりと編集して、スーパーな院長に仕上げてくれていると期待しています。
さて、ブログでは、あたかも自分が主役であるかのような宣伝をおこなっている、(完全な勘違いオヤジか~~の)私の姿をご覧あれ~~~!

2015年5月10日日曜日

他院で反復不成功だった方からの出産報告2例

先日、他院で反復不成功であった方から同時に出産報告が届きました。
偶然の妊娠の可能性もありますが、参考になることがあるかカルテを見直してみました。

1)年齢30才中程 他院2施設で、3回の採卵

 
 
 アンチミューラリアンホルモン(AMH)は、2.05と40才相当と高くはありませんでしたが、超音波検査ではPCOのようでした。卵管水腫があり、すでに両側の卵管は切除されていらっしゃいました。
前医では前回13個の採卵で受精卵が得られなかったようです。これはPCOによる未熟卵であったのかもしれません。今回はHMG-アンタゴニスト法で誘発し、卵胞数は多めでしたが、ある程度卵胞が大きくなるのを待ちました。
その結果、30個の採卵、受精は体外受精と顕微授精の両方をおこなうスプリット方を採用しました。その結果は、体外受精で10個中7個受精、顕微授精で10個中8個受精しました。また、最終的に8個の胚盤胞を凍結保存できました。
その後、凍結胚盤胞移植1回目で妊娠、今回の出産となったのです。
この方は、ビタミンC、ビタミンDが低めで、酸化ストレスが高い方でした。総合ビタミン剤のアシストワンを 使用し、OHSS傾向がありましたが成熟卵を多く得る目的で卵胞が大きくなることを粘ったのです。結果的には、多くの胚盤胞も保存できました。PCOの方には、まずはマイルド法が採用されます。この方はすでに前医で2回マイルド法を受けていたので今回は中等度のHMG-アンタゴニスト法を採用したのです。排卵誘発は様々あり、それぞれメリット、デメリットがあるのです。「元も良い方法」が決まっているのではないのですね。同じ方法のみでなく、別な方法を試すのも一つの対策です。
一方、AMHは2.05とむしろ低めであったのに、予定より採卵数がかなり多くなってしまいました。AMHも絶対的な指標とは考えてはいけないと、認識させられた例でした。
 
 
2)30代後半  前医で採卵7回、胚移植を9回受けていました。
 
 

 AMHは1.33と43才相当と低く、DHEAsも低めのためDHEAを使用。酸化ストレスは中等度でさほど高くありませんでしたが、ビタミンCが低めで、治療経過もありアシストワンも使用しました。
前医では着床障害の疑いを指摘されていましたが、子宮鏡検査では問題なし。
治療経過に大きな問題はない(最高6個の採卵)と判断し、前医と同じHMG-アンタゴニスト法で排卵誘発。10個採卵し、男性因子により顕微授精を施行し、培養には新型の培養器のエンブリオスコープを使用。10個中8個受精し、2個胚移植し妊娠。今回の双子の出産となりました。
この方は、特に有効であった方法が何かは分かりません。
しかし、「着床障害」とは現時点での臨床では、重症の卵管水腫がない事を確認し、子宮鏡で子宮内をしっかりと検査しておけば十分なのです。
「特別な着床障害」があるかのような「雰囲気」があまりにも大きく取り上げられている傾向を感じます。
着床するかどうか(つまり妊娠するかどうか)は、漠然とした子宮との間の着床障害があるのではなく、胚の状態(つまり卵)が良いかどうかが大きいのですね。
 






新医師のご紹介(Dr.熊耳)

5月より、熊耳(くまがみ)医師が、当クリニックの診療に加わりました。

熊耳敦子医師は、藤田真紀医師と同じく医学博士であり、また、臨床遺伝専門医でもあります。
遺伝関係にも詳しいので、遺伝について詳しく知りたい場合には、熊耳医師の予約をお取り下さい。
なお、新体制により、土曜日の診療も、医師二人体制でおこなえるようになりました。
今までは、土曜日には、待ち時間が長くなり皆さんにお不便をおかけしましたが、今後はかなり改善されています。今後も様々改善できるように努力してまいります。
熊耳医師からのコメントを ご紹介致します。

「赤ちゃんに会いたい」という想いに向かって、患者様と共に歩んでいく医療を目指したいと考えております。

不妊治療においては、共に情熱を注ぎ、共に悩み学び、そして共に信じることが大切だと思っておりますので、どのようなことでも気軽にお問い合わせください。

また、家系内の病気(病状)が赤ちゃんに遺伝するか教えてほしい、出生前診断について詳しく知りたい、等の遺伝に関わるご相談にも対応致しますので、宜しくお願い申し上げます。」

ブログアクセス連日1000件超えの御礼

先日、ブログへのアクセス数が、連日1,000件超えました。
1ヶ月前は、所用が重なり、ブログの更新が滞っていましたが、GW中に充填しましたところ、急速にアクセス数が増加しました。
皆さんの早い反応と注目に驚き、そしてまた今後も様々な情報の提供を継続していかなければ、との良い意味での重責を感じました。
以前も述べさせて頂きましたが、皆さんの妊娠、出産は私の喜びでありパワーを頂けるのです。
なかなか良い結果が出ずに、苦しい思いをすることの方が多いのですが、それだけ良い結果が出たときの喜びは(もちろん当事者のみなさんの方が大きいとは思うのですが)私にとってもひとしおなのです。
昨日、新人歓迎会がありました。(写真を撮るのを酔っ払って忘れてしましました。残念!今後は私が酔っ払っても、イベントの写真を忘れないように担当にお願いしましょう)
今後も職員全員で、皆さんと一緒に共通の目的に向かってがんばっていければと願っています。


すでにお知らせしていますが、
高橋ウイメンズクリニックがNHK、Eテレで、放送される事になりました。
胚培養士という仕事が、どのようなものかを紹介する番組です。
5月18日(月)午後7:25~(24分番組)
NHK Eテレ 
「人生デザイン U-29~岡部美紀・胚培養士~」です。
生殖補助医療(高度生殖医療)は医師だけで診療ができるものではなく、専門的な、看護師、医療事務、胚培養士、カウンセラーなど、チーム医療が必要なのです。
胚培養士はヒトの卵子を扱う重要な役割を担っているのですが、日々奮闘している仕事ぶりを理解して頂ければ幸いです。

2015年5月7日木曜日

2015年4月の妊娠数報告

皆様、GWも終わりましたが、どのように過ごされましたでしょうか。
私は,今年は旅行に行くわけではなく、のんびり?と気にかかっていた雑用をして過ごしました。
少しは、また自分を振り返る時間も得られたと考えています。やはり休暇は必要ですね。

気持ちを新たに、また仕事に邁進致しましょう。
皆さんの妊娠は、やはり私にはとてもうれしい事であり、がんばれる源なのです。

さて、2015年4月の妊娠数をご報告致します。

2015年 4月の妊娠数 91例 

ART妊娠    79例    (内訳:  IVF 21例  ICSI 11例    凍結胚移植 47例) 

 AIH妊娠    6例     

その他一般不妊治療   6例  (タイミング、クロミフェンなど) 

4月の妊娠数91例はとても惜しいです。連続100例突破とはいきませんでした。
しかし、4月の91例の妊娠は、4月妊娠数の歴代トップタイ(2010年)です。
4月までの妊娠数は336例であり、年間妊娠数1,000例のペースを維持しています。
このままのペースを油断せずに継続していきたいと思います。

すでにお知らせしていますが、
高橋ウイメンズクリニックがNHK、Eテレで、放送される事になりました。
胚培養士という仕事が、どのようなものかを紹介する番組です。
5月18日(月)午後7:25~(24分番組)
NHK Eテレ 
「人生デザイン U-29~岡部美紀・胚培養士~」です。
生殖補助医療(高度生殖医療)は医師だけで診療ができるものではなく、専門的な、看護師、医療事務、胚培養士、カウンセラーなど、チーム医療が必要なのです。
胚培養士はヒトの卵子を扱う重要な役割を担っているのですが、日々奮闘している仕事ぶりを理解して頂ければ幸いです。



2015年5月6日水曜日

高齢(38~42歳)婦人の治療方針は何を選択すべきか?

高齢(38~42歳)婦人の治療方針は何を選択すべきなのでしょうか。
当クリニックでも、「37歳以上の方は、体外受精も選択肢に入れて頂けますか」(体外受精しかありません、と言っているのではありません)とお話ししています。

2014年、アメリカ生殖学会雑誌から(抜粋)ではどうだったでしょうか。
妻が38~42歳  原因不明  6ヶ月以上の不妊カップル

クロミフェン-AIH  51組
FSH注射-AIH   52組
すぐにIVF      51組    にそれぞれ2周期行い、妊娠率を比較した。

2周期での累積妊娠率は
クロミフェン-AIH   21.6%
FSH-AIH        17.3%    (クロミッド-AIHとの妊娠率に有意差はない)
IVF            49.0%     IVFではやはり妊娠率が高かった

最初の2周期のAIHで妊娠しなかった患者が、IVFに切り替えた場合、最終的には、3つのグループで出産率は同じになった。

したがって、38~42歳の原因不明カップルでは、
結果を急ぐ場合には、すぐに体外受精を、
コストパフォーマンスを考えるならば、体外受精前に2回程度のAIHを入れてよい、との結論でした。
これは、高橋ウイメンズクリニックでの考え方ともほぼ一致しています。
卵管に異常がなく、精子も正常ならば、体外受精のみでなくAIHやタイミングでの妊娠の可能性もあるのです。体外受精のみに治療を限定する必要はなく、併用しても良いのです。

一方、43歳以上では体外受精での妊娠率も極端に低下します。やはり40歳以上では早期の体外受精も考えて頂く方が良いでしょう。
また、今回では、卵管に問題があったり、子宮内膜症、子宮筋腫、精子の状態不良、などのあるカップルは含まれません。このような問題がある場合には、体外受精の導入はより早期にした方が良いでしょう。




2015年5月5日火曜日

5月18日当クリニックがNHK Eテレで放送されます!皆さんみて下さいね。

皆さんにお知らせです。

何と! 高橋ウイメンズクリニックがNHK、Eテレで、放送される事になりました。じゃじゃ~~ん!(このフレーズも古いか)

当クリニックもよくNHKに取り上げられるように良くなったものです。感慨深く、思わず泣けてきます。(なんて、ちょっと大げさ過ぎますでよね~)

実際には、クリニック自体が取り上げられるのではなく、胚培養士という仕事が、どのようなものかを紹介する番組です。

5月18日(月)午後7:25~(24分番組)

NHK Eテレ 

「人生デザイン U-29~岡部美紀・胚培養士~」です。

胚培養士という職業は、まだ一般的にはよくは知られてはいません。しかし、生殖補助医療(高度生殖医療)は医師だけで診療ができるものではなく、専門的な、看護師、医療事務、胚培養士、カウンセラーなど、チームでの医療が必須なのです。胚培養士はその一翼を担い、ヒトの卵子を扱う重要な役割を担っているのです。

放送規定があり、私も実際にどのような映像に仕上がるかは事前には分かりません。しかし、体外受精、顕微授精、凍結胚など、まだ技術の歴史は新しく、分かっていないことも少なくない、その様な中で、ヒトの卵子を大切に扱っていく胚培養士の日頃の奮闘ぶりを垣間見ることができると思います。

当クリニックの特徴としては、卵子や胚の状態は、胚を直接扱っている胚培養士が、患者さんに直接説明しています。当クリニックの培養士は、おそらく、日本で最も患者さんに近いグループに入る培養士だと思います。

このように、もちろん?私が主役ではありません。やはりくたびれたオヤジでは、絵にならないのでしょう。ですが、少しは私も映ると思いますので、ホラー映画の感覚で観ては如何でしょうか?なお私の顔が思い出されて、夜中にうなされそうな場合には、指の隙間からご覧下さい。

(この部分を強調する意味が分かりませんか? 大丈夫! 書いている私もよく分かりません!)

近日公開!!!!  請うご期待!!

 
 
 

 

2015年5月4日月曜日

サプリメントは、いつまで続けるのでしょうか?、

最近、当クリニックでお渡ししているサプリメントをいつまで使用するか?との問い合わせが増えてきました。
今回、整理しましたので、皆さんにもお知らせ致します。

 

妊娠したらやめるサプリメント

1)アシストワン
 アシストワンには、十分量のビタミンC、D、葉酸などが含まれており、このビタミン類は妊娠しても服用して問題ありません。しかし、コエンザイムQ10 、アルファリポ酸、Lカルニチンなどの抗酸化物質は、危険ではないのですが、妊娠中の服用は保証されていませんので、妊娠がわかったらやめましょう。
2)DHEA
 DHEAは男性ホルモン、女性ホルモンの大元のホルモンであり、すでに体内にたくさんあるホルモンです。通常、測定して低下している方に使用しているので、妊娠しても大きな問題はないはずですが、これも妊娠中の使用が保証されているものではないので、妊娠がわかったならば中止して下さい。
3)メラトニン
 メラトニンは睡眠ホルモンで強い抗酸化作用があります。メラトニンもすでに体内にあるもので危険ではありませんが、妊娠中の保証がされていませんので、妊娠が分かった時には中止して下さい。
4)レスベラトロール
 強い抗酸化物質で、長寿遺伝子のサーチュインのスイッチを入れるとされます。
 危険ではありませんが、これも妊娠中の安全性が保証されていませんので、妊娠が分かった時点で中止して下さい。


妊娠しても使用継続して良いサプリメント

1)葉酸
 葉酸は本来は妊娠前からのんで下さい。1日400μgの量が推奨されています。赤ちゃんの神経系などの発育を促進します。妊娠しても服用して結構です。少なくとも妊娠12週までは使用して下さい。その後も使用を継続して問題ありません。

2)ビタミンD
 ビタミンDは、妊娠しても使用を継続して結構です。ビタミンDの低下は、妊娠しにくくなりますし、妊娠しても妊娠中のトラブルの増加につながります。実際には、日本人の約半数がビタミンDが不足しています。当クリニックでは,実際にはビタミンDを測定して低下しているかたに使用をお勧めしています。しかがって、そのような方は妊娠してもビタミンDを継続する方がよいでしょう。


サプリメントのブログの紹介

当クリニックでは、サプリメントとして、

総合ビタミン剤   アシストワン

葉酸         アシストFA(エフエー)

ビタミンD      アシストD

 を採用しています。

 当クリニックと提携している、(有)千葉アンチエイジング研究所のホームページhttp://www.chiba-aa.comでは、主に生殖とサプリメント、生殖とアンチエイジングのブログを開設しました。

このブログは共同執筆で、アシストワンの共同制作者の細川忠宏さん(株式会社パートナーズ代表取締役)http://www.babyandme.jp/と、小浦ゆきえさん(健康食品アナリスト、NR・サプリメントアドバイザー)http://www.e-quartet.com/との3人でおこなっております。

3人の異なる視点から、どのように妊娠しやすい生活をするか?などの参考になる情報やヒントが得られるのではないかと思います。生殖医療とサプリメント、アンチエイジングの様々な情報を今後も提供していきますので、一度、千葉アンチエイジング研究所のホームページを訪問してみて下さい。

2015年4月30日木曜日

44歳の方からの、とてもうれしい出産報告

先日、体外受精で妊娠、44才で出産された方からの出産報告が届きました。
出産までに長い経過ではありましたが、御本人の努力が実ったうれしい一例をご紹介致します。

当クリニックでは39才から治療を開始しました。
AIHは3回で妊娠しなかったので、年齢も考えて体外受精も開始しました。

体外受精を中心に治療を進め、最終的に、43才時、13回目の採卵で、5個採卵、4個受精、2個が胚盤胞まで成長し、1個胚移植し、始めて妊娠し、卒業。そして、今回の出産報告が届いたのです。
12回目の採卵以降は、アシストワンと、メラトニンを開始していました。

今回は13回目の採卵という長い道のりでしたが、この間、治療を継続できたのは、胚盤胞ができていたことも望みの一つでした。胚盤胞は、実際には平均で受精卵の半数以下しかできませんし、高齢になるほど胚盤胞まで進むことは少なくなるのです。道のりは長かったのですが、最終的にお子様を得られたので非常に幸運でした。

不妊治療は、続けていればいつかはお子さんが得られる、ものではありません。すでに40才以降の方には、この方は大きな希望の一例です。
ただ、今回は非常に幸運な稀な例なのです。37歳以上の方は、40歳まで大丈夫、とは考えずにステップアップを急いで下さいね。
このような方がひとりでも増えるように、皆さんと一緒にまたがんばって行きたいと思います。

重複子宮の妊娠・卒業例

先日、重複子宮の方が妊娠されて卒業されました。
皆さんの参考までに、ご紹介致します。

30代前半の方で、前医ですでにAIHを5回受けていました。
子宮鏡では、左の子宮は正常でしたが、右の子宮には子宮内膜ポリープがありました。
卵管は正常とされていたので、御本人の希望もあり、当クリニックでも2回AIHをおこないました。

AIHでも妊娠しないので、体外受精を行うこととなりました。
クロミッドーHMG・アンタゴニスト法で7個採卵、5個受精し、1個胚移植、3個胚盤胞保存。
1回目の体外受精で妊娠、卒業されました。

・重複子宮でも子宮内膜ポリープはおこり得ます。子宮鏡検査はしっかりと受けておいた方が良いですね。今回は、左の子宮が正常でしたので、右のポリープの手術はせずに、左の子宮に胚移植しました。
・HMG注射も追加したので、複数の胚盤胞凍結も行えました。
・重複子宮、単角子宮の方でも、妊娠率は通常を同じように得られます。今回はすでにAIHを7回受けていましたので、体外受精を行いました。しかし、重複子宮であっても、必ずしも体外受精を必要とするのではなく、通常のタイミング、AIHなどもおこなって良いのです。妊娠率は通常と同じとされています。単角子宮、重複子宮であっても悲観せずに、しっかりと治療を進めていきましょう。
・ただし、重複子宮、単角子宮の流産率は、およそ50%です。今後は、良い経過であることを、天に祈っていくことになるのです。


2015年4月28日火曜日

IFFS(国際不妊学会)参加証拠写真

今回、横浜で開催されているIFFS(国際不妊学会)に参加してまいりました。


 
今回は、久々の国際学会発表です。昨年のハワイで行われた、アメリカ生殖医学会(ASRM)で、抄録を送ったものの届いてなかった、という、間の抜けた事がありましたが、今回はしっかりと届いていました。
ただ、抄録集を見ても、英語だとなかなか頭に入らないのですね。他の方の発表内容については、見通しは暗いのですが、理解できましたらば皆さんにもご紹介致します。本能的に、無意識のうちに、視覚の時点で、すでに英語にブロックがかかっているようです。
 
 
 今回の内容は、体外受精、顕微授精で、正常受精を確認する2つの前核(精子と卵子の核)が、0個、1個の場合でも、胚盤胞まで育つことがあります。
従来は、これらは異常な受精の可能性があるとされてきましたが、今回、最後に残ったこのような胚を患者さんの了解の上で移植すると、妊娠率や流産率は全く同じであり、27人の生まれた赤ちゃんでも、染色体異常の赤ちゃんが増えることもなかった、という内容です。
前核がみえないのは、単に観察した時間差の問題であり、染色体異常との関係はないと考えられます。このことは、他の施設からの報告もいくつかありました。
0前核、1前核であっても、胚盤胞まで進んだ胚は、問題なく使用できると考えられますね。

ポスターの発表では、ポスターを貼って逃げ帰ってきましたが、診療の現場では逃げずに日本語で診療しますので、皆さんご安心下さい。

 

 

2015年4月27日月曜日

着床前診断で赤ちゃんを得られる可能性は上がるのか?(生殖医学会抄録から)

現在、横浜で国際不妊症学会(IFFS)と、日本生殖医学会の学会がおこなわれています。
日本生殖医学会のシンポジウムで、名古屋市大の杉浦教授の「着床前診断は生児獲得率改善に有効か?」との題名での抄録がありました。
簡単に言えば、「着床前診断(PGD)をすれば、赤ちゃんを得られる可能性が上がるか?」という事です。

結論から言えば、「着床前診断によって出産率が上昇することは期待できない」という結論です。それどころか「高齢不妊女性に対する着床前診断の多数の論文の検討では、むしろ出産率を低下させた」のです。

これは、当クリニックでも、着床前診断の質問のある方に説明していることと全く一致しているので、今回、もう少し詳しく考え方を説明致しましょう。

まず、具体的な数字では、染色体均衡型転座による習慣流産では、PGDを行うと27~54%の出産率と報告されています。一方、均衡転座があっても、自然妊娠による出産率は37~66%(むしろこの方が高いですね)、累積出産率は68~86%であった。したがって、PGDによって出産率が上昇することは期待できない。との事でした。

習慣流産の方が、着床前診断を受けるのを希望されるのは、赤ちゃん(胚)の染色体異常による流産を防ぐ目的です。
今回の例は、両親のどちらかが染色体の一部分が入れ替わっている、均衡型転座を持っているカップルに対する着床前診断の意義について述べています。
染色体の転座があるので、通常よりも、赤ちゃん(胚)の染色体の異常は多くなります。
したがって、その染色体異常のある胚を除けば、流産率は低下します。しかし、最終的に赤ちゃんを得られる率は上昇しないのです。

これはどうしてでしょうか。

実は、着床前診断では、胚盤胞になった細胞を数個はぎ取ってきます。
従って、はぎ取られた胚は、その過程で通常よりも長く外に出されており、また細胞をはぎ取られるわけですからそれだけストレスを受けます。ストレスを受けているわけですから、染色体が正常であっても、検査を受けた胚は、何もされていない胚よりも妊娠率は低下するのです。
一方、染色体が異常な胚は移植されませんから、胚移植あたりの見た目の妊娠率の上昇は期待できるかもしれませんし、(妊娠したら)染色体異常による流産は低下します。
ただし、繰り返しますが、1個1個の正常胚の妊娠率はストレスにより低下するので、そのカップルが最終的に赤ちゃんを得られる確率はむしろ低下するのです。

これらは、染色体異常が起こりやすい均衡型転座のカップルの場合ですが、通常の方が着床前診断で得られる意義はもっと少なくなるでしょう。

着床前診断は、流産率の低下はある程度期待できますが、出産率はむしろ低下する可能性があるものなのです。

 現在の着床前診断は、やはり、致死性の疾患の遺伝があるか、両親のどちらかに染色体に問題があり流産を繰り返す、場合に受ける意義がある、と考えるのが適当でしょう。
また、着床前診断には、そのカップル毎に、日本産科婦人科学会に申請をして、承認が下りた場合にのみ受けられます。現状では、簡単に受けられる状況ではないのです。












2015年4月16日木曜日

他院で7回胚移植後、当院で初回の体外受精で妊娠した方の出産報告

他院で3回採卵し、7回胚移植したものの妊娠せず、当クリニックにいらした方が、当クリニックの初回の体外受精で妊娠、出産された方からの出産報告の葉書が届きました。
たまたま妊娠された可能性もあるのですが、やはりこの様な葉書を受け取るとうれしくなります。
改めて、何か皆さんの参考になる要素がないかを見るために、カルテを取り寄せて見直してみました。

この方は、30歳代後半の方で、AMHは1.31と、40~41才相当の卵巣年齢でした。
反復不成功の方には、当クリニックでは様々な方法を試みることにしています。
基本的なこととしては、子宮鏡とビタミンDを検査しました。
すると子宮鏡では、写真の如く、子宮内膜ポリープが見つかったのです。また、ビタミンDも19.4と、20未満の、ビタミンD欠乏状態だったのです。



また、それ以外には、DHEAsも113と低い値であり、特殊ですが8OHdGでの酸化ストレスでは強度のDNAダメージを示していました。
この対策としては、
1)子宮内膜ポリープ切除術を日帰りでおこないました。
2)DHEAと、マルチビタミン(アシストワン)を3ヶ月前から使用しました。
3)排卵誘発は、前医でも胚盤胞が十分できていたので、同様なHMG-アンタゴニスト法を採用しまし、採卵数は17個と十分な卵子を採取できました。(以前の方法をすべて否定する必要はないのです)
4)胚移植は、2段階移植を採用しました。また、余剰胚盤胞も2個保存することが可能でした。

今回の方法では、最も重要であったのは、子宮鏡検査とポリープ切除術だったと思います。
最近は、多くの方が「着床障害」について気にされていますが、
①着床(妊娠)するかどうかは、卵子の質が最も大きな問題であり、
②着床障害の最も重要な検査は子宮鏡などで、ポリープや粘膜下筋腫、子宮内腔癒着がないことを確認することなのです。
③血液凝固能や免疫の影響による着床障害は、明確な原因としては一般的には未だ認められていませんし、原因があったとしてもそれほど多くはないのです。

次に、今回採用した、子宮鏡検査以外の効果は議論があり、明確な効果を示さないものもあります。
しかし、一番大事なポリープ手術をおこなった上で、卵子の質の改善を期待するならば、サプリメントや、2段階移植も意味はあると考えています。

基本的な対策をとらずに、DHEAやサプリメントのみを使用することはあまりお勧めしません。
反復不成功の方には、しっかりと再評価をした上で、基本的(つまり大切)なことをおさえた上で、様々な方法を試してみる事が良いでしょう。








2015年4月3日金曜日

月間妊娠100例達成(2014年3月)

祝 月間妊娠100例達成(101例)!!



2015年、3月の妊娠数をご報告致します。 

2015年 3月の妊娠数 101例 

ART妊娠  73例  (内訳:  IVF 23例  ICSI 7例    凍結胚移植 43例) 

 AIH妊娠  16例     

その他一般不妊治療   12例  (タイミング、クロミフェン、TCR手術後、など) 


3週間ぶりのブログです。

皆様ご無沙汰でした。高橋は生きております。

このところ、研究会参加、他施設の見学など、むしろ活発に動いていたので、ブログを書き込むことが疎かになっておりました。報告は、また別にご紹介致しますね。

しかし、私もおこなうべき事はしっかりとおこなっておりましたよ。(本当は、高橋以外のスタッフのがんばりのおかげなのですが、、、、) スタッフの皆さん、ありがとうございます。

月間100例を超えたのは、実は2回目なのです。初回はなんと震災前の2009年にさかのぼります。その時は、一般不妊治療の方も多く受け入れておりました。したがって現在の100例とは内容が異なっており、現在の方が、より妊娠が困難な方が多くなっているので、以前よりも内容が濃い妊娠数だと思います。

さあ、今後もこの勢いを安定して持続できるように、無理をせずに診療の質も保てる体制を今年は目指していきま~す。