2017年1月15日日曜日

子宮に問題があった方の妊娠例:その2(重複子宮)

子宮に問題(中隔子宮・重複子宮)のあった方がお二人卒業されましたので、ご紹介致します。
 
その2)重複子宮、30代後半、今回2回目の妊娠・卒業前医では、HSGでうまく造影できず、中隔子宮の診断。
当クリニックの診察では、膣中隔あり、子宮口も2個、重複子宮の診断。HSG、子宮鏡では、両側の子宮口、子宮内腔を確認。子宮の左右差はほとんどなくほぼ同じ大きさ。
AMH=5.6で、多嚢胞性卵巣症候群(PCO)、重症の乏精子症であり、顕微授精を施行。
①内服薬+HMG注射で14個採卵。1個胚移植し、妊娠、卒業。4個胚盤胞凍結。膣口が右側が大きめでしたので、 右子宮に胚移植1個。
重複子宮・骨盤位だったので、帝王切開分娩。
②今回、二人めを希望されて来院。
子宮鏡では、右子宮内腔は問題なし。左子宮は小さな子宮内膜ポリープを複数認めたため、今回も右子宮に移植することした。
凍結していた胚盤胞を1個移植し、妊娠、卒業となりました。

参考事項
①子宮奇形の診断は、結構苦労することもあるのです。今回はHSGで両側の子宮も造影できましたが、有効な不妊治療には、やはりしっかりとした診断が必要ですね、
②重複子宮も、不妊症の原因とは言えません。この方の体外受精の適応は、重複子宮ではなく、重症の乏精子症だったのです。
③重複子宮、単角子宮、中隔子宮の流産率はおよそ50%とされています。中隔子宮は手術可能ですが、重複子宮、単角子宮は手術の対象ではありません。しかし、半分は出産できるのですから、どんどん妊娠にチャレンジして良いのです。この方も無事にお子様が誕生されることを祈るばかりです。
④子宮口が2つある方の分娩様式は、通常は帝王切開することが多くなります。中隔子宮、単角子宮では、経膣分娩もしばしばおこなわれます。この方は、骨盤位でもあったので前回帝王切開になりました。今回の出産も帝王切開になります。また、このような方には、現在当クリニックでは、胚移植は1個ずつにしています。
⑤凍結胚移植の前には、やはり子宮鏡でポリープなどがないかどうか調べることも大切であると、今回再確認できたと思います。
























図はMamas upよりコピー。








子宮に問題があった方の妊娠例:その1(中隔子宮)

子宮に問題(中隔子宮・重複子宮)のあった方がお二人卒業されましたので、ご紹介致します。
 
その1)中隔子宮、AMH<0.1、30代後半、2回流産。

前医で、体外受精を2回受けており、自然妊娠と体外受精で1回ずつ流産していました。
採血上、来院時はAMH<0.1で卵巣機能はかなり低下しています。不育症の血液検査では、特に問題ありませんでしたが、HSG(写真)、MRIでは、中隔子宮の診断となりました。
ご本人と相談し、子宮中隔を切断することとし、当クリニックで、「子宮鏡下子宮中隔切除術」の日帰り手術を施行。
その後は、2回自然周期で体外受精するも、胚の正常発育なく移植できず。
3回目はHMG注射で誘発し、7個採卵、胚移植するも妊娠せず。
4回目、レトロゾ-ル周期で2個採卵、胚移植するも妊娠せず。
5回目、HMG-アンタゴニスト法で4個採卵・胚移植。今回妊娠し卒業。 
前回から10ヶ月後のAMHは0.52だった。


























この方の参考事項は?
①不育症の検査では、血液検査だけではなく、子宮の形も合わせて検査をする必要があります。これは、HSG、子宮鏡、MRI、超音波検査でおこなわれますが、不育症の基本的な検査なのです。
②一方、中隔子宮は、不妊症の原因ではありません。中隔子宮があっても、不妊症治療としては手術の必要は通常はないのです。今回は、流産が2回続いたので、不育症の治療としての中隔切除をおこなったのですね。子宮中隔を手術すると妊娠しやすくなるわけではないので、手術については、その目的を明確にしておく必要があるのです。
③現在では、中隔子宮も、日帰りで手術できるようになっているのですね。20分程度で可能です。
④AMH<0.1でも、卵胞が4~5個とれることがあります。その理由は、今回のようにAMH自体も、検査のばらつきがあります。AMH<0.1であっても、1個しか採卵できない、とは決まっていないのですね。また、人はいつでも同じ状態、ではないので、AMH<0.1であっても、複数個とれることもしばしばあるのです。ご自身の体の状態を、固定的に決めつけないで、治療をおこなうことも必要ですね。








2017年1月8日日曜日

2017年生殖医療ジャーナルクラブ参加報告

毎年恒例の新年早々の生殖医療ジャーナルクラブに参加してきました。
荒木先生主催の超人的な勉強会で、1年間の有力な不妊症関連の論文を2泊3日で読み切ってしまう勉強会です。私は日曜日朝からの参加です。軟弱ですみませ~~ん!
今年で18年だそうですが、顔ぶれも徐々にかわり、以前は私も若手だったのですが、いつの間にか中堅(実際にはすでにロートルか?)なっているのですね。
さあ、1年間の不勉強を一気に取り戻して、今年もがんばっていきましょう。


























勉強した一部をご紹介致します。

1)胚の染色体異常の予防法        Fertility&Steril 2016 105:548~559
 胚の染色体異常は採卵時におこっているのですが、ミトコンドリアのエネルギー産生能は染色体の分離にも影響しているようなので、染色体異常の予防に男女の生活習慣やサプリメントが役立つ可能性があるようです。

 男性:オメガ脂肪酸 抗酸化物質の投与(つまり、アシストワンやEPA:エパデールなど)
 女性:運動の推奨、肥満女性には体重減少、非肥満女性には激しい運動の回避、禁煙、アルコール回避                
 酸化ストレスは加齢、肥満、精液の質の低下、卵子や胚の質の低下、に関わるので、抗酸化剤の摂取が、男性、女性いずれにも勧められる。特に40才以上には配慮が必要。
 これにより、血管系に良い影響を及ぼし、男性ではEDの改善をもたらし、健康状態にも好ましい影響を及ぼすと考えられる。
 ミトコンドリアが関わるCoQ10も期待できる方法と考えられる。
 心理的ストレスは卵巣からの血液の流れを変更させ、卵の発育能を低下させると考えられる。

コメント)生活習慣やサプリメントで、卵子・胚の染色体異常の発生を減少させられる可能性を学会でもある程度認めていることは意義ありますね。



2)男性不妊がない場合には、ICSIはIVFよりメリットはない。(SART2016)
 男性因子がなければ、生児出産率はICSIはIVFよりも低い。
 ASRM(アメリカ生殖医学会)声明「男性不妊を伴わないものや受精障害の既往のない場合、すべての卵子にICSIをルーチンにおこなうのは正当化されない」と公式声明している。
 また「原因不明不妊に、ICSIは臨床結果の改善をもたらさない。「採卵数の少ない患者にICSIをおこなうこと、高齢女性にICSIをおこなっても臨床結果を改善しない」「受精障害を阻止することで患者の妊娠率を向上させようとして、実際には妊娠の確率の低下を招いている」ことがおきている。

コメント)アメリカ生殖医学会でも、ICSIを過剰におこなっている懸念を表明しています。受精さえすれば、IVFの方がICSIよりも妊娠率が高いので、ICSIが必要のない方におこなっても、妊娠する可能性を下げている可能性があると言っているのですね。採卵数が少ない、や、高齢だから、との理由でICSIをおこなうのはやはり、お勧めは出来ないのですね。


3)2段刺激法:卵巣予備能が低下した患者さんで、採卵の同一周期で卵胞と黄体期からHMG注射を開始しても同様数の採卵と胚盤胞が得られた。
 HMG注射は、day2からと、初回の採卵後5日目から開始。HMGアンタゴニストで誘発。トリガーはGnRHアゴニスト(ブセレキュア)使用。

コメント)卵巣機能が低下している方には、採卵後5日後に来て頂き、超音波検査で大きくなりそうな卵胞がいくつかあったならば、そこからHMG注射を再開して、再度採卵することも可能なのですね。当クリニックでもすでに何人かの方におこなっています。


4)Fertility&Steril 2016;105:539~544
 子宮鏡下ポリー切除術後には、2周期以上待機してもIVFの成績は向上しない。ポリープ切除翌周期に排卵誘発開始しても問題ない。

コメント)今までは、子宮鏡の手術をおこなった場合には、体外受精は2回の生理を待ちましたが、今後は手術後、1回目の生理周期におこなっても良いですね。ただし、子宮筋腫の切除術の後にはポリープと同じとは言えませんので、注意は必要です。



5)凍結胚移植で、ホルモン補充周期(HRT)は、自然周期よりも優れているというものではない。しかし、モニターは必要なく、簡便で柔軟性のある計画を立てることが可能である。成績はほぼ同じで、有意差はないがHRTより自然周期の方がややよいかもしれない。HRTの方がキャンセル率が高いとの報告もある。HRTでも卵胞が発育することが5%に認められる。
 HRTでのホルモン剤は漸増法と定量投与法の方で、妊娠率に差はない。

コメント)凍結胚の移植は、学会でも、HRTが優れいているとは考えてはいません。ただし、移植日の数日の変更が可能であるという、柔軟性があるという意義でありました。これは当クリニックの従来から皆さんにお話ししているのと同じですね。また、ホルモン剤は、はじめから定量で使用しても良いようです。こちらの方が簡単なので今後はこのように致します。


6)新鮮胚移植後に生理が来た場合、凍結胚移植を遅延させずに、すぐに胚移植しても妊娠率に差がない。

コメント)今までは、採卵周期の翌周期はお休みの期間としていましたが、今後はご希望の方にはすぐに胚移植していきましょう。ただし基本的にはHRTが必要です。
 

7)胚盤胞移植で、すべての方の妊娠率が上がるとは言えない。
・Fertility&Steril 2016;106:244-250
 新鮮胚移植と凍結胚盤胞移植で得られた累積妊娠率に関して報告された論文では、新鮮初期胚移植と、新鮮胚盤胞移植で累積妊娠率の差はなかった。胚盤胞移植では胚移植にならない周期数も増える。

コメント)これも、現在の当クリニックのスタンスと同じです。すべての方に胚盤胞移植をしても、キャンセルとなる方もおり、累積妊娠率が上がるわけではないのですね。


8)子宮内にHCG注入で妊娠率が上がった。
・HumanReproduction 2016:31:2520~2526
 採卵後0.5mlの生食に500単位のhCGを注入した。初期胚day3を移植。HCG群と生食群で、化学的妊娠率は59.2%:31.3%、臨床的妊娠率は50.7%:16.4%だった。

コメント)これも、今後の追加検証が必要ですが、なかなか妊娠されない方への試してみる方法として、採卵直後、または凍結胚盤胞では、排卵に相当する時期に、注入しても良いと思います。これもご希望の方には試していけるように準備致します。

 以上、すぐに試行開始できるものもありますので、準備してまいります。
ご希望の方は次回来院時にご相談下さい。







2017年1月7日土曜日

2016年妊娠者数確定!1,083例の妊娠でした!

昨年12月の月間妊娠者数と、2016年の妊娠数の確定した結果がでました。

2016年の年間妊娠数は、1083例でした。ありがとうございました。
当クリニックで初めての、妊娠千例越えです。
妊娠800例をこえてから、ずっと横ばい、東日本大震災後はまた一時的に低下するなどを乗り越えて、移転2年目で大台に乗りました。



一般不妊治療: 315例  (AIH妊娠例:184例
                  AIH以外:131例)    

当クリニックでの、一般不妊治療での妊娠数が315例は、かなりがんばっている数字だと思います。出来るだけその方の本来の妊娠能力を引き出せるようにしていますので、ART以外での妊娠もあきらめずに治療を進めていきましょう。
 

ART治療   : 768例 (凍結胚移植妊娠: 568例
                 IVF新鮮胚移植: 124例
                 ICSI新鮮胚移植: 76例)

ARTでの妊娠数は一般不妊治療の2倍以上になっています。中身は凍結胚移植での妊娠が大半を占めています。これは日本での一般的な傾向になります。
胚移植は原則1個であり、それ以外の余剰胚はできるだけ凍結するようにしているので、このようなな状況になるのです。








12月妊娠数 95例  

2016年12月の妊娠数をご報告致します。 

ART妊娠    73例    (内訳:  IVF 5例  ICSI 6例    凍結胚移植 62例) 

 AIH妊娠    13例     

その他一般不妊治療   9例  (タイミング、クロミフェンなど) 

12月の妊娠数95例は、年末の休診期間があることを考えると、十分な数字で、通常ならば100例を突破したに等しいと考えてよいと思います。
ART妊娠73例は年間3番目の多さで、凍結胚移植62例は今年2番目の最多妊娠数です。凍結胚移植の妊娠数最多トップ5はすべて8月以降であり、昨年後半の凍結胚移植妊娠数の増加が明確になっていました。

2017年1月1日日曜日

43才で不妊治療開始し、44才で卒業された例

43才で不妊治療を開始し、44才で妊娠卒業された方をご紹介致します。
この方は卵巣の機能が良く、非常に幸運な方ですが、栄養相談も継続的(9回)に受けて、体重も4kg減量して標準体重にもどすなど、体重管理も積極的に取り組んだ方でした。
この方のAMHは5.26と卵子はかなり残っていましたが、生理は不順で体重も肥満域にあり、多嚢胞性卵巣症候群(PCO)傾向を認めました。
血糖検査では、インスリン抵抗性があり、糖尿病の2歩手前。悪玉コレステロールも高値でした。
血管年齢も55才相当で、採卵時の血圧も154/92と、緊張もあるためか、ストレス時の血圧も高い傾向を認めます。 したがって、インスリンの感受性の改善や、動脈硬化予防のための薬剤、採卵時にはアシストワンやメラトニンなどのサプリメントも使用しました。
一般的にはPCOの方は、卵子は多くとれるのですが、質は良くない方が多いのです。対策としては、減量と、糖代謝異常がある場合にはインスリン感受性改善薬のメトホルミンを使用することもあります。

AMHが高いので、初回は中等度の強さのHMG-アンタゴニスト法をしましたが、あまり反応が見られず、5個採卵で受精せず。
2回目は、ショート法でしっかり誘発し、11個採卵。ICSIでも体外受精でも受精し、2個移植するも妊娠せず。胚盤胞4個保存。
年齢を考えて、3回目の採卵を優先し再度ショート法で16個採卵。ICSIでも体外受精でも受精し、全胚凍結。2個の初期胚と6個の胚盤胞を凍結保存。
その後、2回目の胚盤胞移植で妊娠・卒業されました。
凍結保存胚は10個あります。しっかりと排卵誘発することで、これだけの胚凍結できる方もいらっしゃるのですね。今後は、妊娠中、体重増加に気をつけて、血圧が上がらないように注意されて、順調に経過することを祈るばかりです。

この方はAMHが非常に高く、卵子がたくさん残っていたのが幸いしましたが、
1)体重管理をしっかりされたこと。
2)積極的に、血糖、コレステロール管理をおこなったこと
3)年齢を考慮して、出来るだけ多くの胚を採卵することを優先したこと
4)年齢を考えて、出来るだけ若いときの胚を凍結保存することを優先したこと
などが、参考になると思います。


DAZ遺伝子欠損の重症男性因子の方の妊娠例

30才前半の方で、ご主人がDAZ遺伝子欠損の方が、妊娠・卒業されました。
DAZ遺伝子は、男性のY染色体にあり、精子の形成に関わっている遺伝子です。

重症の乏精子症がある方には、ご主人の染色体分析(Gバンド)と、DAZ遺伝子の血液検査をお勧めしています。
このご主人は、DAZ遺伝子が欠損しており、精子の濃度が計算できずに、スライドガラス上で、数匹の精子が動いている、という状況でした。
顕微授精(ICSI)も 、ぎりぎりおこなえる状況だったのです。

AMHは3.68。
年齢が若いので初回は中等度の排卵誘発のHMG-アンタゴニスト法で、12個採卵。ICSIを8個おこない、正常授精は4個、1個胚移植するも妊娠せず。胚盤胞なし。
2回目は、ロング法でおこない、15個採卵。12個ICSIし、10個授精。胚盤胞2個、初期胚2個凍結。
2日目の凍結胚盤胞移植で妊娠し、卒業されました。

重症の乏精子症の場合(精子濃度が500万未満)には、男性の染色体分析とDAZ遺伝子の分析をお勧め致します。

DAZ遺伝子が欠損していても、精子が全くいないわけではないので、ICSIにより授精卵が得られて、妊娠する可能性は十分ある。
ことが参考になると思います。


顕微授精でも受精しにくい方の妊娠、卒業例

精子の状態が悪い場合には、顕微授精(ICSI)が通常おこなわれ、ICSIの授精率はおよそ80%程度とされます。ICSIでは、卵子内に精子を注入することはほぼ100%出来るのですが、注入された精子と卵子の核が融合すること(これは現在での本当の意味の受精です)は100%ではなく、精子と卵子の力次第であり、それがおよそ80%なのです。

しかし、ICSIをおこなっても、授精しない場合、授精率がかなり低い方もまれに存在します。その原因は、精子の核の状態が非常に悪いか、卵子の受精・分割能力が悪いか、明確には調べることが難しいのです。
このような場合には、精子を卵子の中に注入したあと(ICSI後)に、カルシウムイオノファーという薬剤や、電気刺激などをおこなって、授精分割を促進することがおこなわれますが、その効果はまちまちで、おこなってみないと分からない、という状況なのです。

この方は、30歳代後半の方で、AMH=2.84、前医で、ICSIを2回受けています。1回目12個採卵、2回目1個採卵で、2回ともICSIで授精卵が得られませんでした。
当クリニックでは、カルシウムイオノファーを半分使用する予定で、10個ICSIをしたのですが、初回は全く授精しませんでした。精子も良くなく、ICSIが必要でしたが、ICSI時の卵子の状態は悪く、精子よりも卵子の問題が大きいのではないかと判断しました。BMI=18.6と、肥満よりもむしろ痩せすぎに近い体型でした。
その後、ビタミンC、D、メラトニンも使用。2回目の顕微授精では、7個ICSIして、2個授精。4細胞1個(G1)を新鮮胚移植して幸いに妊娠、出産されました。

今回、二人目を希望して再来院。
アシストワンを併用し、産後1回目は9個ICSIし、2個授精、1個胚移植して妊娠せず。
2回目、遠赤外線のサンビーマーを併用し、16個ICSIし、5個授精。凍結初期胚を移植するも妊娠せず。胚盤胞なし。
3回目、6個ICSIし、1個授精。4細胞(G2)新鮮胚移植し、妊娠、卒業となりました。
カルシウムイオノファーは使用していましたが、多少の授精率の改善はあったと思いますが、卵子の問題か、劇的な改善とは言えなかったともいます。

ICSIも万能ではなく、ICSIしても授精しない、授精率が低いことは、時々おこることである。
ICSIの受精率が低いのは、精子の問題とは断言できず、卵子の問題のこともありうる。
ICSIでも卵子の質が良いことが最低限必要である。
カルシウムイオノファーも万能ではない。
1個でも授精するならば、妊娠の可能性がある。
 痩せすぎも、卵子の質に関係する可能性がある。

などが、この症例で参考になる事だと思います。




右卵管切除後、左卵管子宮外妊娠、MTX注射治療後のAIH妊娠例

新年明けましておめでとうございます。
今年は元日から、ひとけのない工事中のクリニックに来て仕事を始めました。
今まで以上に仕事に邁進する年にしたいと思います。

さて、仕事始めは前年に妊娠された方々のご紹介です。
ご紹介するのは、簡単妊娠されたわけではなく、ぎりぎりのところで妊娠された方々のご紹介が多くなるのですが、皆さんの参考になれば幸いです。

まずは、長い表題の方の妊娠例です。
30歳代前半の方ですが、過去に5回妊娠されていますが、1回は子宮外妊娠で卵管切除、反対側もその後子宮外妊娠でしたが、メトトレキセート(MTX)という一種の抗がん剤を使用して、 手術せずに治療された方です。クラミジア抗体は陽性で、過去にクラミジア感染したことを強く疑わせます。
一般的には、子宮外妊娠は卵管膨大部妊娠が多く、腹腔鏡下に卵管を切除することが多いです。この方は2回目の子宮外妊娠の時には、卵管の保存手術は困難であり、MTXを使用して治療できた方です。MTXが使用できるのは、心拍がなく、HCGのホルモン値もそれほど高くないような、あまり活動性が高くない場合が対象です。胎児心拍があるような活動性が高い子宮が妊娠には適応ありません。しかし、最近ではMTXを使用することも多くなっています。当クリニックでもMTXを使えないわけではないのですが、子宮外妊娠はいつ妊娠部位が破裂して、腹腔内に出血するか分からないので、緊急で腹腔鏡手術などを出来る施設でないと、子宮外妊娠例の対応は難しいのですね。

さて、この方は、MTX使用によって、片側の卵管は残っているのですが、正常かどうかは分かりません。卵管造影検査をおこない、残存卵管が開通していることを確認しました。
このような経過の方は、通常は体外受精をお勧めしており、この方にも体外受精をお勧めしていたのですが、ご本人の希望もあり、人工授精をおこないました。
そして、HSG施行10ヶ月後の、クロミッド-AIH(4回目)で妊娠されて、卒業となったのです。

一般的には、このような経過の方には、すぐに体外受精を強く勧めるのですが、HSGで残存卵管は正常であり、ご本人の希望もあり、AIHを継続しました。
まずは、やはりHSGはおこなっておいて良かったと思います。
子宮外妊娠になる可能性は、通常よりも高いことは、ご理解頂く必要がありますが、性交渉やAIHも無駄と決めつけずにおこなってみるのも選択肢なのですね。








2016年12月31日土曜日

2017年にむけて。

2016年もあと1時間足らずで終わり、2017年が始まります。
今年は妊娠1,000例を初めて達成できた年でもあり、数字的には前年を越えて、一歩進めた年であり、スタッフ全員に感謝したいと思います。
一方、それだからかもしれませんが、妊娠に至らなかった方々のカルテを見ていると、むしろその事が気にかかり、もっと出来たことがあるのではないかと考えてしまいます。
このブログでは、わかりやすくするために数字を頻繁に出していますが、決して数のみを追求しているのではなく、 やはり1人1人の事を考えて、少しでもその方が妊娠に近づけるように、今後もその方に合った治療法を提案できるようにしていきたいと思います。
 今年もありがとうございました。
また、来年も皆さんと一緒にがんばって、1人でも多くの方と妊娠の喜びを共有できることを目指したいと思います。
来年もよろしくお願い致します。


「妊活スタートBOOK 2017」(主婦の友社)が送られてきました。
高橋ウイメンズクリニックも68~69ページに載っていますので、是非見て下さい。
私も他の先生方のクリニックの実績を見て、非常に参考になります。
当クリニックの頑張り、良いところ、一方で、まだまだ他の先生方から学ぶべき事もたくさんあることも分かりますね。



























年末年始で、ビル全体の空調の刷新工事をおこなっています。
年明けからは、待合室でも、より快適な環境をお届けできると思います。
しかし、重要なのは、診療の中身ですね。
来年もよろしくお願い致します。

前医でICSI、2回胚移植後、ポリープ切除、自然妊娠卒業の例

長い紹介の表題となりました。
この方を紹介する理由は、2つあります。
1)ISCIを受けるほどの方でも、自然妊娠する可能性があると言うこと
2)着床障害の検査として、子宮鏡は重要であると言うこと

30才前半の方で、前医で4個採卵、3個ICSI、2個初期胚凍結、後日1個ずつ、2回融解移植するも妊娠せず。転居にて当クリニック受診しました。
 子宮卵管造影検査後に2回のAIHをおこないました。
AIH時の総運動精子数は、1回目は220万、2回目は750万でした。この2回の精子では、通常はICSIが必要な状態です。
その後の子宮鏡再検査で10×6mmの子宮内膜ポリープを認めました。




















 この方には、子宮内膜ポリープ切除術を日帰りでおこないました。
そして、術後2回目の生理の排卵周期で自然妊娠、卒業されたのです。

 この方での教訓は、
1)卵管が正常ならば、ICSIが必要な精子の状態でも、いつも同じ状態ではないので、自然妊娠、AIHで妊娠する可能性があり、日頃の性交渉も無駄ではなく、どんどん持つべきであると言うこと
 2)したがって、ICSIが必要でも、卵管造影検査も無意味ではなく、少しでも妊娠する可能性を追求するならば、HSGは必要である事
3)着床障害の検査としては、子宮鏡は非常に重要な検査であること

人間は常に同じ状態、ではないので、今回のようにしっかりと検査をして、可能性を広く持てるように治療を進めることも必要なことを確認できた妊娠例でした。


2016年12月28日水曜日

生殖医療専門医講習会報告(2016.12)その3 精子 編

Ⅲ) 顕微授精で生まれた男児の精子の正常について

ベルギーの大学から調査検査が発表されました。
18~22才のICSIで生まれた男児 54人

結果ICSIで生まれた男性の精子は、濃度、総精子数、運動率が、通常男性の半分程度だった。
WHOの定義では異常所見を示す人は2倍ぐらい多いのですが、顕微授精で生まれた子供が、自然妊娠する可能性は十分あり、全員が顕微授精を必要とするものではありませんでした。






















Ⅳ) 生殖免疫
 精子不動化抗体

不妊原因不明の13%の女性に、精子不動か抗体を認める。
 一般的には、全不妊患者の2.6%程度に認めます。(40人に1人程度)
抗体価は、SI50値で判断しますが、定性検査のSIVでは強さは分かりません。
抗体価SI50値は変動します。

 SI50値    低値<10  中等値10前後  高値 常に>10

AIH妊娠率  7/25(28%)  5/38(13%)    0/29(0%)   

IVFET     3/11(27%)  17/31(54%)  10/27(37%)

SI50値が、10程度以下ならば、タイミングやAIHをしても良さそうですね。
常に10以上ならば、体外受精を勧めましょう。

妊娠周期のSI50値

         妊娠数    SI50値
自然妊娠     3      2.9 
AIH        12      10.8
IVF         30       66

精子不動化抗体は、精子の透明帯への結合を阻害する。



生殖医療従事者講習会参加報告(2016.12)その2 生殖遺伝 編

生殖医療専門医、講習会 報告その2 (着床前診断)


Ⅱ)生殖遺伝 編
 着床前診断に関する講習が多くを占めました。

ある不妊治療専門クリニックが、国内では一般患者に行うことができないはずの「着床前遺伝子スクリーニング(受精卵検査、PGS)」を行っていたため、日本生殖医学会は11月に、院長の生殖医療専門医資格を取り消す決定をしました。
現状では、まだ一般患者に着床前遺伝子スクリーニング(PGS)は認められていないのに、一部施設で行われていることへの危機感からか、今回再確認の意味もあって、講習された面もあるでしょう。

「着床前診断」の日本産婦人科学会の見解(H27年6月改訂)
・適応:
原則として重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある、遺伝子変異ならびに染色体異常を補因する場合
但し、均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産(反復流産を含む)も対象。

・PGS(スクリーニング)の禁止:
診断する遺伝情報は、疾患の発症に関わる遺伝子・染色体の遺伝学的情報に限られ、スクリーニングを目的としない。目的以外の診断情報については原則として解析または開示しない。

 つまり、現状ではお二人のどちらかに、遺伝子変異か染色体異常がない場合には、着床前診断をしてはいけない、というのが、医学会の指針です。
PGSスクリーニングは、まだ、明確に禁止されている、のですね。
ただし、学会は何もしているのではなく 、高齢の方へのスクリーニングが有用かどうかの治験を進めているところです。少しでも早期に結果が出ることを皆望んでいますが、今は学会のルールを遵守する必要があるのですね。

なお、着床前診断を行うには、遺伝専門医によるカウンセリングが必須なのです。

PGD(着床前診断)
検査対象:特定の遺伝子変異
       特定の染色体不均衡型構造異常
対象者 :遺伝病(単一遺伝子病)
      染色体転座保因者の習慣流産
検査目的:特定の遺伝病の罹患卵や特定の不均衡型の染色体転座卵を除くため

 PGS(着床前スクリーニング) 
検査対象:全染色体の異数性(数的異常)
対象者:基本的に不特定(年齢や習慣流産を想定)
検査目的:すべての染色体の異数性(数的異常卵)を除くため

検査方法は、最近は、マイクロアレイ法から、次世代シーケンサーに移行しつつあります。
これで、かなり感度の向上と、スピードアップが出来るようになっているそうです。
ただし、問題点としては、感度が良すぎるために、微少の染色体の欠失や過剰が見つかったときに、それが問題なのかどうかがまだ分かっていないので、どうするかが決まっていないそうです。
また、胚には、モザイクの細胞がかなり混ざっているので、そのまま正常の子供が生まれることは良くあるのですが、モザイクが見つかったとき(30~70%に認めると報告されています)に、一概に異常とは言えず、正常に生まれる胚も異常として良いのかが決まっていないようです。

PGS(着床前スクリーニング)は、これまでは
・通常の不妊患者にPGSを実施する有用性は示されていない。
・高齢不妊女性、受精障害、着床障害、習慣流産では、有用かもしれない。
・4~8細胞からのFISH法では診断精度に限界がある。
というまとめのようです。

最近のPGSでは、
・マイクロアレイ法で、胚盤胞を使用しておこなうと、妊娠率が20%程度上昇する。
   (0%が100%になるのではありません)
・マイクロアレイ法よりも、次世代シ-ケンサーでは5%程度妊娠率が上昇する。流産率は、共に2%程度と、流産はかなり減るようです。


生殖医療従事者講習会参加報告(2016.12)その1 総論編

23日、天皇誕生日に、生殖医療従事者講習会に参加してきました。
生殖医療専門医向けの講習会であり、生殖医学会が、専門医に守って欲しいことなども話されます。現時点での生殖医学会の姿勢を提示しているので、皆さんにもご紹介致します。

 今回は①総論と倫理、②生殖遺伝と生殖免疫 などでした。






















Ⅰ)生殖医療総論
 最近の変化としては、日本では凍結周期が増えてきており、採卵周期あたりでの妊娠率や出産率の計算が、実態に合わなくなってきているので、単純に比較できなくなってきています。
 世界的には、顕微授精と体外受精は、32%対68%なので、およそ2/3が顕微授精になっているようです。講習会では、顕微授精の適応をしっかりと守るならば、このくらいの数字になるだろうとの話でした。
日本では、25~45才でのART周期数は、100人あたり2.5回の周期でした。これはかなり多いという印象ですが、皆さんは如何ですか?
2010年のデータからの推定として、ARTで一人生まれるための費用は、平均197万円と約200万円かかる計算でした。43才でおよそ1000万円、44才でおよそ2000万円、45才以上では5000万円を超える計算となっています。妊娠の成績からは、42才から43才ぐらいに壁を感じていたのですが、コスト面からもその感覚を指示する数字です。

世界的にも、ARTは増加しているのですが、やはり年齢の壁が依然として存在するのですね。われわれの年齢への挑戦は不可避なものでしょうが、早い時期に妊娠・出産へのアプローチを勧めることも同時に進める必要があるのでしょう。
次回は、生殖遺伝編です。








サンディエゴのHANABUSA IVFクリニックを訪問してきました。

この度、英ウイメンズクリニックの塩谷先生のご厚意により、アメリカ、サンディエゴのHanabusa IVFクリニックを訪問してきました。
サンディエゴは、アメリカ西海岸の最南端にあり、温暖で、非常に美しく、きれいな街でした。
院長は、Lyndon Chan医師で、非常に気さくで、親切、優秀そうな(絶対優秀だと思いますが、初対面の方なので)医師でした。さすが、塩谷先生が信頼を寄せる医師だなと感じます。
クリニックは、丘の上にあり、景色も抜群です。規模は診察室が二つで、コンパクトにまとまったクリニックでしたが、今後、より業務を拡大する予定とのことでした。
以前、塩谷先生は覚えているかどうか分かりませんが、うちの胚培養士も研修に受け入れてくれるとのお話も頂いていたので、研修に行ってもらおうかしら、、、、
着床前診断は、ニューヨークなど東海岸では、むしろまだ多くはないそうですが、西海岸の患者さん達は、新しいことにチャレンジする傾向が比較的高いそうで、結構行われているとのことでした。

どうです?
一応、まじめそうに写っているでしょう。
英語でジョークを言えないので、こんな表情になるのです。
ともかく、常に、必殺「微笑み返し」!!

下に写るは、モリタさん??
もはや自分でも表現のしようがなく、ノーコメント!
後ろに写るは、寝そべって休んでいる野生のアザラシ?さん達です。
アメリカってすごいな~。って驚くところが的外れか?
だって、ホテルから歩いて5分のこんな居住地の近くにアザラシ?さん達が寝そっべているのですよ。
アメリカってすごいな~!























自己注射DVD完成しました!

HPのリニューアル、体外受精DVDのリニューアルを契機に、今回、自己注射のDVDを作成致しました。
今回、看護師さんががんばって下さり、自分のおなかを提供してくれて、自己注射を実演してくれたのです。自己注射をお考えの方は、是非視聴してみて下さい。お貸し出し致します。
また、1月中旬をメドに、ネットでも視聴できるように作業中です。これは当クリニックを受診して、カルテ番号をお持ちの方を対象にしています。準備が整いましたらば再度お知らせ致します。

自己注射には、アンプル、バイアル、ペンタイプの3種類があります。
アンプルは、容器がすべてガラス製で、容器の上部を割って開けます。
バイアルは、容器の栓がゴム製です。
今回のDVDは、アンプルとバイアルのタイプのDVDで、お貸し出し致します。スマホでの視聴が不都合な方にはDVDをお貸し出し致します。

ペンタイプのDVDは、ゴナールFを採用していますが、これはすでに会社が製作した既存のDVDがありますので、お申し出下さればお渡し可能です。
ペンタイプは、インスリン注射と同様に、専用の注射筒にFSH製剤が入っており、注射針もより細く、痛みもほとんどありません。実際には、インスリン注射は小学生でも自己注射しています。恐がりの方はペンタイプがよいかもしれません。一方、ペンタイプは、細い針にも費用がかかっているので、アンプル、バイアルよりも、3倍ぐらいのコストがかかります。