2017年3月22日水曜日

抗精子抗体検査のばらつき(不確実性)

皆さん、抗精子抗体(精子不動化抗体)の検査を、けっこう確実なものとお考えではないでしょうか。
実は、そうでもないことが時々あるのです。その1例を経験しましたのでご紹介致します。

ちなみに、 抗精子抗体(精子不動化抗体)は、女性が持っていると、子宮内に入ってきた精子の動きを止めてしまい、妊娠が困難になってしますのです。人工授精でもなかなな妊娠しないことが多いのです。抗精子抗体には様々な種類があります。この中で、最も不妊症に関わっているのが精子不動化抗体なのです。

30歳代後半の方でしたが、抗精子抗体を測定したところ、(+) SIV値=6.4という値でした。
当クリニックでは、SIV値が陽性の場合には、確認検査として、別の検査会社に、精子不動化抗体の抗体価を測定するために再検査を依頼しています。

その値はSI50値で陰性でした。これは抗体価が低いときに時々おこることなのです。抗体は上下していますから、あるときは陽性、あるときは陰性ということがあり得るのです。
そのため、再度、今後はSIV値と、SI50値を両方とも検査に出しました。その結果は、驚くことに、SIV値は陰性、SI50値=1.7と陽性でした。

つまり               1回目検査  2回目 3回目

抗精子抗体(SIV)         陽性          陰性
  
精子不動化抗体価(SI50)           陰性   1.7(陽性)

という結果だったのです。このように、抗精子抗体の検査でも、検査の時期が異なると結果がばらつくことがあり得ます。結果に疑問がある場合には、再検査をしてみることも考えてもよいかもしれません。医療での検査とは、このように、普遍的でも確実でもなく、データは動くことを再認識されますね。


なお、抗精子抗体(SIV)は、実際には、陽性か陰性かを確認する検査です。SIV検査で、強陽性との結果がありますが、これは実際には精子不動化抗体の強さを示しているのではありません。精子不動化抗体の強さを見るには、SI50値を測定することが必要なのです。
今回のSI50値=1.7はかなり低い抗体価であり、自然妊娠する可能性も十分あります。
SI50が10以上は、高抗体価とされ、自然妊娠が難しく、体外受精が勧められます。10未満の場合には、タイミングやAIHも併用しても良いでしょう。
過去には、精子不動化抗体陽性も,自然妊娠されている方が、このブログでも4~5人ご紹介しています。皆さんがんばっていきましょうね。





43才、スポイト法(シリンジ法)での妊娠例


 先日、スポイト法(シリンジ法)で妊娠された43才の方がいらっしゃいました。 
 スポイト法(シリンジ法)とは、精液をご自身で膣の中に入れる、自宅でできる人工授精なのです。滅菌カップにご主人に採って頂いた精液を、ご自身、またはご主人に膣内に入れて頂く方法です。クリニックに来ないでも出来るので、人工授精にクリニックに来られない方には便利な方法です。対象は、精子の状態が正常ですが、性交渉が持ちにくい方が主な対象です。精子の状態があまり良くない方も対象にはなりますが、精子があまり良くない方は、洗浄した精子を濃縮して子宮内注入する通常の人工授精の方がよいでしょう。

 この方は、年齢の問題もあり、体外受精も受けていた方なのですが、妊娠の可能性は広くしておいた方がよいと考えられる例でしたのでご紹介致します。
 この方は43才で、AMHは0.2。過去には子宮卵管造影検査を受け、子宮内膜ポリープの手術も受けていました。当クリニックでも体外受精を受けており、2回は体外受精で妊娠されていました。また、過去にもすでに1回スポイト方で妊娠されていたのです。合計3回妊娠されましたが残念ながら流産となっていました。
  今回も、少しでも妊娠の可能性をあげるために、体外受精の合間にスポイト法をおこないました。そして今回、妊娠されたのです。
 年齢的には、不妊治療は主に体外受精が中心とした治療が勧められますが、その以外でも妊娠の可能性がある場合には、体外受精のみに決めつけるのではなく、そちらも追求した方がよいでしょう。実際に、体外受精の合間に自然妊娠される方も少なくないのです。
 先日、胎児心拍を認めました。 今後、順調に経過することを祈るばかりです。

2017年3月6日月曜日

不妊症・妊娠とカフェインの関係;コーヒー1~2杯はOK!

妊娠・不妊症とカフェインの関係を調べてみました。




カフェイン摂取と不妊症・妊娠の関係については、多くのデータがあります。コーヒー1〜2杯でもよくないという報告もあれば、全く関係ないという報告もあり、明確な線引きは難しいようでした。

 ただし、大方の報告で、ざっくりいうと、コーヒーの場合、だいたい3〜5杯を超えると妊娠率が低下したり、妊娠まで時間がかかるとの報告が多いです。
一方、体外受精ではカフェイン摂取による妊娠率、出産率などに差はなかったとの報告もあります。

ざっくりした考え方としては、コーヒーは、1日1〜2杯なら問題ない、というところでしょう。



このようなデータはほとんど海外の研究ですので、基準として「コーヒーを1日何杯飲んだか」で調査せいていることが多いのですね。

日本では、緑茶も多いので、多少状況が異なります。
 ちなみに、コーヒー1杯のカフェインは50100mgとされますが、1200500mg以上で差があるという報告が多いのです。その他、インスタント紅茶、煎茶、ウーロン茶、ほうじ茶は2040mgとされ、玉露は200mgとかなり多いようです。眠気覚ましには、コー日よりも玉露の方がよいかもしれません。しかし、妊活中や妊娠中は避けた方がよいかも。
一方、麦茶はカフェイン0mgですので、カフェインが気になる方は麦茶がおすすめです。

 妊娠した場合には、
赤ちゃんに悪影響を与えるのは、カフェインを過剰摂取したときです。
イギリスでは1日200mgまで、アメリカ・カナダでは1日300mgまではカフェインを摂取しても問題ないとされているようです。
各国で多少のばらつきはあるようですが、妊婦が1日に摂取してもよいカフェインの量は、100mg以内にすると問題ないと考えられているようです。
ただし、カフェインには鉄分の吸収を妨げるので、特に鉄剤を飲むときには、カフェインが含まれる緑茶、コーヒー、紅茶などでは飲まないようにした方がよいでしょう。

以下のようなデータがありました。
1) 各国のカフェインの上限
  • 世界保健機構(WHO)…コーヒーカップ3~4杯/日
  • オーストラリア保健・食品安全局…300㎎/日
  • 英国食品安全庁…200㎎/日
  • カナダ保健省…300㎎/日
  2)1杯あたりのカフェイン含有量
  ・コーヒー:50~100mg
  ・インスタント紅茶:30mg
  ・煎茶、ウーロン茶、ほうじ茶:20~40mg
  ・麦茶:0mg
  ・抹茶:48mg 
  ・玉露:200mg
  ・コカ・コーラ(350ml缶):34mg
  ・板チョコ(50g):20mg
  ・ココア:10~20mg

私はカフェイン少し摂りすぎかな~。

2017年3月5日日曜日

妊娠初期のHCG低値での卒業例

先日、凍結胚移植後の妊娠4週での血中HCGが19.9と低値の方が、胎児心拍を認めて卒業されました。
妊娠4週での血中HCG値は、当クリニックでは50以上を目標としています。これを下回ると確かにその後の成長が不良である事が多くなります。
この方は4週で19.9だったので、その後の経過を慎重に見ることになりましたが、1週間後には331と上昇し、妊娠6週には胎児心拍を認め、妊娠8週で卒業となりました。
医療では良くおこることなのですが、検査は絶対ではありません。検査会社も検査精度を上げようとがんばっていますが、そもそも人間の体はいつも一定、ではありません。また検査の誤差は常にありますし、検出部位の状態が通常とは異なる方もいらっしゃるのです。その場合には、「通常の正常値」では判断できないことも時にあるのです。
特に、妊娠初期の場合には、このような事はしばしばありますし、逆にHCGが高くても、心拍を認めずに流産となる方も少なくありません。
妊娠初期は皆さん、妊娠した喜びよりも、流産してしまうのではないかという不安の方が強く感する方が圧倒的に多いようです。
しかし、妊娠初期には、おこなえる事をしっかりおこなって、あとは赤ちゃんの力に期待しつつ、経過をしっかり見ていきましょう。
この方も、今後順調に経過して、元気なお子様が誕生されることを私も祈るばかりです。

自己注射動画の配信開始


3月1日より、自己注射の動画の配信を始めました。
院内では、動画のパンフレットを配布しています。
スマートフォンでも視聴可能な仕様にしています。
QRコードで入り、診察券番号と、Webパスワードで利用可能です。
是非皆さん、自己注射に迷っている場合や、自己注射を教えてもらったけれどよく分からなかった、などの場合には是非ご利用ください。
自宅での視聴用には、DVDもお貸し出ししています。
これで、自己注射を良く理解できる材料になれば幸いです。自己注射のハードルが下がってくれると、皆さんもっと楽になると思います。