2014年1月29日水曜日

AMH<0.1で、体外受精6回目で妊娠、卒業した例

AMH<0.1で妊娠された方は珍しくないことは、何度もご紹介していますが、今回はAMH<0.1で、6回目の体外受精(当クリニックでは3回目)で妊娠、卒業された方をご紹介致します。
年齢は30歳代後半
他院で、ロング法2回(採卵数は2回とも2個)、クロミフェンのみ使用で1回(採卵数1個)、胚移植は1回のみでした。
当クリニックでは、AMH<0.1であり、
1回目はクロミフェンのみで1個採卵1個移植。
2回目はクロミフェンーHMGで、2個採卵1個移植。
3回目は、フェマーラと同様な薬の、アナストロゾールのみで2個採卵、2個移植で、妊娠、卒業されました。

いくつかのコメントを致します。
①AMH<0.1でも、年齢がまだ30歳代で、卵子がとれるならば、がんばってみる意義はあると思います。AMHは卵子の質ではありませんし、妊娠しにくい事を示しているのではありません。
②AMHが非常に低いときには、ロング法のようなHMG注射を多く使っても、必ずしも多数の卵子をとれるものではありません。その場合には、マイルドな方法の方が良いのでしょう。採卵数は多いほどキャンセル率も少なくありますし妊娠率も高くなりますが、AMHにより誘発方法を考える事は非常に重要でしょう。
③前医では3回中1回の胚移植でしたが、当クリニックでは3回とも移植できています。準備としては、DHEA、ビタミンCやDを測定し、低下していたのでCとD、DHEAを補充しました。また3回目の2ヶ月目にはサンビーマーも毎日使用しています。これらも効果があったと希望的な見方をしています。
④3回目は、誘発方法として、フェマーラと同様なアナストロゾールを使用しました。子宮内膜への悪影響が少ないとされる薬ですので、新鮮胚移植には有効かもしれません。

さて、勝手なコメントを書きました。
当クリニックでおこなったことが有効であったかどうか、どれが有効であったか、全く有効なものがなく偶然妊娠されたのか、それは残念ながら1例の報告では分かりません。
したがって当クリニックのやり方が有効であったとは断言しません。実際にはこのような例が蓄積されることで、有効であったかどうかが徐々に分かるものでしょう。
しかし、このような例があることを皆さんにお知らせする意義はあるでしょう。
また、「試してみる意義がありそうな方法」の紹介にはなると考えています。
皆さんの参考になりましたでしょうか。


2014年1月25日土曜日

DAZ遺伝子欠損の方のICSI妊娠例と遺伝の注意事項

以前に、DAZ遺伝子欠損の重度の乏精子症の方が、ICSIで妊娠、卒業されました。
DAZ遺伝子は、Y染色体上にあり、精子の生成に関わっている遺伝子です。これか欠損すると、造精機能が障害されて、無精子症や重度の乏精子症になります。
しかし、DAZ遺伝子が欠損していても、必ずしも無精子症になるとは限らないのですね。
この方は、射精精液内に少ないながらも運動精子が認められ、ぎりぎりですが、射精精子でICSIがおこなえて、妊娠されたのです。このような方には、ICSIの技術が本当に役立った例と言えます。今回は2回目の妊娠ですが、良い経過であることをお祈りしたいと思います。

さて、今回の例では、皆さんに考えて頂きたいいくつかの参考事項と注意事項があります。
まず第一に、無精子症でなくても、重症の男性因子の場合には、染色体検査(Gバンド)とDAZ遺伝子の検査を受けておいた方が良い、ということです。今回の妊娠では、DAZ遺伝子の欠損がY染色体上になるのですから、お子さんが男児の場合には、男児に遺伝することになります。女児の場合にはY遺伝子はないので、DAZ遺伝子も関係ないことになります。つまり、染色体・遺伝子の問題が遺伝することがあり得るのです。料金は2つで5万円程度だと思いますがこれをしっかりと調べておくことは、対象の方にも有益な情報となり、学会でも推奨されております。

第二に、第一で述べましたが、男児には遺伝することになります。したがって、ICSIをする前から、男児の場合にはDAZ遺伝子欠損が遺伝することをご理解しておく必要があります。ただし、DAZ遺伝子欠損は、いわゆる奇形の発生とは関係ありません。

第三に、これは今後変わる可能性がありますが、現時点では、着床前診断の対象にはなりません。第二点で述べましたように奇形の発生や致死的な因子でもないので、着床前診断の対象としては認められないでしょう。

この方は、ICSIの恩恵を得られた典型的な方です。今後も多くの方に補助生殖医療の恩恵が届けられるようにがんばりたいと思います。
一方で、おこりうる問題などには皆さんもしっかりとした理解と対策が必要でしょう。疑問に思うことや不安に思うことは、様々な方法で解決しておきたいものですね。

2014年1月23日木曜日

人工授精の黄体補充 (生殖医療ジャーナルクラブ報告その3) 

人工授精での黄体補充は、HMG注射周期でのみ有効である。
人工授精では、排卵誘発をした方が妊娠率が高くなります。そして、黄体期にプロベラやルトラールなどの黄体ホルモンがしばしば使用されます。
当クリニックでは、単に黄体ホルモンを補充することは推奨しておらず、黄体機能不全の治療には、クロミフェンやHMG注射などの排卵誘発をお勧めしています。これは、黄体機能不全は、良い排卵がおこっていない結果であって、単に黄体ホルモンを補充することで卵子の質が改善して妊娠率が上がるとは考えていないからです。根本的には良い排卵をおこすために排卵誘発剤を使用することで、結果的に高温期も安定すると考えているからです。
人工授精でも、クロミフェン周期では、御本人の希望や、クロミフェンを使用しても高温期が短い方などに対して、黄体ホルモンは補助的な意味で使用していました。
一方、HMG注射での排卵誘発では、高温期が短いことがしばしばおこる(約20%)ので、HMG注射を使用する場合には、ルトラールを使用することを標準としてきました。

今回の2013年の報告(Fer.Ster. 2013;100:1373~1380)では、5つの有効な論文を集めて検討した結果、人工授精での黄体ホルモン補充は、HMG注射をおこなった場合に有効であったと報告されました。HMG注射+人工授精では、黄体ホルモンを補充した方が、1.5倍の妊娠率、2倍の生産率得られるようです。
一方、クロミフェン+AIH、 クロミフェン+HMG注射+AIHでは、黄体ホルモン使用による妊娠率の上昇は認められなかったようです。クロミフェン使用周期には、漫然と黄体ホルモンを使用するのではなく、黄体ホルモンが低く、高温期が短い場合などに限定する方が正しいのでしょうね。

これは今まで当クリニックでおこなってきた方法が正しかったことを証明した論文であり、黄体補充の意義を明確にしたものです。
皆さんへもこれで、今まで以上に明確に自信を持って黄体ホルモンの使用/非使用を説明できると思います。

2014年1月17日金曜日

JISART(日本生殖補助医療標準化機関)審査通りました!!

昨日、2013年のJISART(日本生殖補助医療標準化機関)施設認定審査が通ったとの連絡が来ました。
昨年の10月に審査を受け、是正事項を改善してこの度通りました。
培養室の停電時の対応策、超音波検査の定期点検、ホルモン検査の信頼性の確保、など、細かい点まで改善し、外部の点検を入れて、しっかりと信頼性と安全性を確保しているのです。
これも、様々な準備、点検、改善をしてくれた職員の皆さんの努力の賜です。
これが、審査を通過した証拠のバナーです。
もちろん、これを取ることが目的ではなく、いかに信頼の置ける、高度な水準の不妊治療を実際におこなっていくかが重要なのですが、この審査も一つの目標になるのです。
皆さんも、JISARTのホームページを訪れてみて下さい。現在27施設が認定されています。


今回の認定を励みに、今後も内容の伴った不妊治療を進めていきたいと思います。
今年は、より進歩したアンチエイジングも取り入れようと考えていまので、その際には皆さんのご協力もお願い致します。

追加説明です。
インターネットを見ると、JISARTは「卵子提供をおこなっている団体」とする情報がいくつか見られます。しかし、これは正しくはありません。
JISARTはそもそも、高度の不妊治療を目指す団体なので、卵子提供を目指している施設の集まりではないのです。
実際には、卵子提供に関しては、各施設の考えによります。卵子提供をおこなっている施設は現在4施設であり、JISART=卵子提供施設ではありません。ただし、JISART内では卵子提供に関しての検討はおこなっていますし、これは産婦人科学会や生殖医学会でも認められている検討です。


2014年1月14日火曜日

生殖医療ジャーナル 参加報告 その2 ライフスタイル

今日、プロフェッショナルをみました。
24歳ですが6冠の天才囲碁プロ棋士の話でした。過去、勝負所で「自分を信じる」ことが出来なかったために勝てないことが続いた壁の話を語っていました。若者ですが、勝負の世界に生きている勝負師の言葉で、とても共感できる話でした。私はこの年になってもまだまだ後悔、反省、ブレブレの日々ですが、やっと「自分を信じる」の言葉の意味を少しは理解出来つつあるのかな、と感じました。
確かに、不妊治療でも、お手本となる一流の先生方は、ご自分のスタイルを持っていますね。

さて、ジャーナルクラブのお話です。
今回はライフスタイルのお話です。(  )は私のコメントです。

肥満
・排卵誘発、AIH、IVFなどの治療では、肥満の方には体重減少を図ることで、排卵誘発率を高めて、妊娠率の向上が期待できる。
・BMIが25以上の女性の、IVF、ICSIでの、妊娠率は低下し、流産率は上昇する。
・BMIが20未満の女性でも、IVFの妊娠率は低下する。
(やはり、肥満は妊娠/出産には良くないのですね。理想的にはBMI;25以下を目標にしたいですね。一方、痩せすぎも良くないのですね。)

アルコール
・1日12g以上のアルコールを取ると、IVFの成績は低下する。

煙草
・IVF前に、煙草を吸っていると、IVFの成績は低下する。
・IVFの成功率は男性の喫煙でも1/2~1/3に低下する。
(体外受精を予定する方は、夫婦共に禁煙する必要がありますね)

カフェイン
・カフェインは、自然妊娠率、IVFの成績には影響を与えない、との報告と、悪影響がある報告が混在する。
・IVFでは、コーヒー2~3杯までは、影響がないとの報告もある。
(実際には2杯までは問題ないと考えています)

食事・サプリ
・乳製品(チーズなど)の取り過ぎは、精子の形態を悪化(奇形精子の増加)させる。
・週2回のサウナを3ヶ月続けたらば、精子の状態は悪化した。
・βカロテンやルテインで、前進運動精子が6.5%高かった。
・リコピンで正常形態精子の比率上昇。
・ビタミンCは、精子濃度を上げた

サプりメントのように楽に卵子の状態を得することは困難ですが、運動は最も明確な対策です。体を動かし、循環を良くすることが、明確な対策になります。
(やはり、しっかりと運動した方が良いでしょう)




2014年1月12日日曜日

生殖医療ジャーナルクラブ(15周年)参加報告 その1 

本日、栃木県りんどう湖のホテルで、毎年恒例の生殖医療ジャーナルクラブに参加してきました。
今年は15周年であり、15周年特別企画の不妊症の総論の講義もありました。
荒木先生、横田先生、ありがとうございます。
さて、皆さんには数回に分けて勉強した内容をご紹介致しましょう。
この会は、毎年1月に前年1年間の不妊症専門雑誌のすべてを、2泊3日で通読する過酷な修行の会なのです。朝は7時から、夜は8~9時まで、ホテルに缶詰になって勉強します。外は寒風吹き荒れるので、脱走者は命がない!のです。
私は今年は非常に残念?ながら、明日が休日当番なので12日の日帰り参加でした。\・)()(・/

今年は100名以上の方が参加されましたが、若手も多くなりました。
私もいつの間にか、ベテランの中に分類されているようです。
ついこの前までは、若手で通用していたのだけれどな~。
 



さて、肝心の勉強した中身です。

まず、大事なことは、論文や報告は、その一つで正しいとは限らないことです。その執筆者の1意見だと考えて頂いた方が良いでしょう。学会誌に掲載されている論文も、多くの方に認められるには数年かかるわけですから、インターネットの情報は、その正確性については、信頼性はかなり低いのです。
今回の1年間の論文の通読でも、主張されている意見が割れていることは多くにあるのですね。
したがって、論文はもとより、インターネットの情報はなおさら、それが正しいと決めつけない方が良いでしょう。
このブログの意見や情報も、私の視点がかなり入った情報の選択ですので、そのつもりで眺めて下さい。なお、私のつぶやきは(  )です。

まず第1回は、クロミフェン療法について、
・クロミフェンは排卵障害の方には第一選択の治療法です。
原因不明不妊のカップルには、クロミフェン+タイミングでは妊娠率(3.3%)は高くはならない
・原因不明のカップルには、クロミフェン+AIHならば、妊娠率の上昇(9.5%)が期待できます。
(・したがって、原因不明不妊の方には、①クロミフェン+AIH、②HMG注射(+AIH)の治療法が当クリニックではお勧めします。)

黄体機能不全の診断基準は、確定はしていないのですが、クロミフェンは、黄体機能不全の是正に用いられてきました。
(黄体機能不全の治療の第一選択は、クロミフェンだと思います。)
・クロミフェンの開始日を変えても妊娠率に差は認めない。
(当クリニックでは、子宮内膜への影響を考えて生理開始3日目からの使用を標準としていますが、さほど大きな差は無いので、3日目でも4日目でも、5日目でも、神経質になる必要は無いですね)
・クロミフェン単独で排卵しない場合には、メトフォルミンの投与が勧められる。ただし、メトフォルミンを使用する場合には肝臓と腎臓の検査も実施しておく必要がある。
(当クリニックでは、メトフォルミンは、PCOの方、肥満の方、糖代謝異常の方に使用しています。肝機能は通常おこなっていますが、腎機能も今後検査をしておきましょう。ご理解をお願い致します。またHMG注射の追加使用もあり得ますね。)
・クロミフェンの副作用としては、①情緒不安定、②ホットフラッシュ、があります。視力障害も2%未満でありますが、視力障害がある場合には、他の排卵誘発を試みるべきである。
・クロミフェンでは、先天奇形のリスクは高くならない。流産率も自然妊娠と変わらない。卵巣癌と排卵誘発剤の関係も、現在では否定されている。
などでした。
もうすぐ夜中の12時ですが、千葉駅に着きますので、本日、速報はここまでです。










2014年1月8日水曜日

次回の体外受精までどれだけあければ良いのでしょうか?

他施設のカンファレンスでの紹介記事です。

体外受精がうまくいかなかったときに、どれだけの期間を空ければ良いのでしょうか?
私が学会参加して得ていた知識としては、3ヶ月は明けた方が良いとの発表が以前ありました。また卵子が成熟するのには80日程度かかります。したがって「HMG注射をたくさん使い、HMG注射も使用した場合には、その影響がなくなる卵子が成長するまでには、3ヶ月明けた方が良い」と判断していたのです。そのような論文もあったと記憶しています。

しかし、今回の紹介の論文で2013年、(ニューヨーク)は、体外受精がうまくいかない場合には、1ヶ月あければ、次回の体外受精でも同様な反応であったとしています。2ヶ月以上あけた群との比較でも同じであったとしています。したがって、特に40歳以上の方のように、残されている時間が少ない場合には、1ヶ月明ければ再挑戦しても良いのかもしれません。

一方、一つの論文で、それが正しいとの判断は出来ません。他のいくつかの論文が出て、徐々にこの論文が正しいかどうかが明確になってくるのです。また人間はすべて同じではなく、同一人物でも毎回、同じ反応ではないのです。現時点では、「御本人が希望して、必要、かつ、条件が整っているならば、体外受精は1ヶ月明ければ再挑戦しても良いのでしょう」と考えるのが妥当だと思います。

2014年1月2日木曜日

お医者さん夫婦のカラダにやさしい長生き養生訓56

尊敬する産婦人科夫婦の堀口貞夫、雅子夫妻が、長生き養生訓の本を出版されました。
80歳と83歳の現役の産婦人科医のお話であり、非常に参考になりました。
年齢としては、私の両親とほぼ同じ年齢ですが、知って驚きました。とてもそのようには見えなく、非常にお若いのです。
やはりお手本になるご夫妻です。
ただ、私も25年も同じように出来る自信は全くありません。(家族からはまだまだ働くようには言われますが、、、)
しかし、この新年に、また目標が一つ見つかりました。長い目標ですが、「継続する」目標が明確になりました。

いくつかご紹介致しましょう。
「少年時代は粗食に限ります。」
-私も納豆を多く食べています。中年までは粗食で太らずに、ただし、高齢ではやや太り気味ぐらいが長生きします。
-フェルデンクライスという体操があるそうです。ストレッチの一種のようですが、調べてまた判りましたらご紹介致します。
「日中は全力で仕事に、生活に。それが出来ればよく眠れます」
-確かにそう思います。私も、しっかり仕事できないと逆に疲れるのですね。最も私の場合は、日々、生きるのに精一杯なのですが、、、
「何歳になっても勉強ですし、患者さんから多くのものを学ぶのが医者というものです」
-80歳の大先輩かからこのような言葉を聞くことが出来ると非常に安堵します。私もいまだに必死に勉強しないとならない日々を過ごしています。この年で何と不勉強であることか、、、
「増える一方の書籍や資料には鷹揚に。無理にかたづけるとかえって不都合です」
-これも非常に力づけられる言葉ですね。私の机の周りは堀口夫妻と同じに違いないと、今後は胸を張って生きていこう!!
「結局は、医師個々人の資質、人間力。いまでも”医は仁術”だと思っています。」
「ま、いいかと思えば万事、気楽です」
-この二つは、今の私には非常に高いハードルです。お手本となるご夫妻に近づけるのでしょうか?

最後にやはり、長く遠い目標であることを再認識します。
しかし、やはり「継続こそ力なり」でしょうか。
今年もがんばるぞ~~(毎年1週間ぐらいの記憶ですが、、、、)

 

2014年1月1日水曜日

反復・習慣流産の取り扱い(日本産婦人科学会ガイドラインより)

反復・習慣流産の日本産婦人科学会のガイドライン(案)より、
いくつかピックアップして皆さんに、知っておいて頂きたいことをご紹介致します。
これは現在新しいガイドラインを作成中の案で、多少の変更はありえますが、最も新しいとも言えます。

1)3回以上連続する自然流産を習慣流産と診断する。
  これは従来と変更無いようです。流産の間に分娩している場合には、3回以上流産していても習慣流産とは言いません。「連続3回以上」なのです。

2)精神的・心理的支援を行いカップルの不安を出来るだけ取り除く
  不安、憂鬱、怒り、喪失感、夫婦関係の不和、などがあると、流産率は上昇します。また医師との話す機会が多く、不安感が少ない場合には、流産率は低下します。したがって、習慣流産の検査をしないで不安でいるよりも、検査を受けた方が漠然とした不安は少なくなるでしょうから、不安感が強い場合には検査を受けるのも治療の一つと言えます。また当クリニックには臨床心理士もいますが、各施設の相談体制も利用する方が良いでしょう。

3)特に高齢でない既往流産が3~4回女性の場合、次回妊娠が無治療で継続できる率は60~70%である。
 流産の最も重要な因子は年齢です。早い妊娠を心がけることが、最も有効性の高い流産防止とも考えられます。反復流産でも胎児染色体異常が50%なのです。例として、31歳ならば、過去3回流産があっても約70%が出産でき、最終的には83~85%の方が出産できるとされています。

4)原因不明流産に対する確立された治療法はない。
 様々な検査を受けても50%以上が原因不明です。また原因不明の方が無治療でも、2回流産だった方は、次には80%で妊娠継続します。3回流産でも70%、4回流産でも60%、5回流産でも無治療でも50%が妊娠継続します。「原因不明習慣流産患者では、夫リンパ球免疫療法、アスピリン療法、アスピリン/ヘパリン療法、免疫グロブリン療法の有用性はおおむね否定的である」というのが、現時点での学会の認識です。
 したがって、原因不明の方へのアスピリンや、それ以上の治療は、「何もしない不安感を取り除く」以上のものは、あまり期待できないのかもしれません。当クリニックでも原因不明の場合には、負担の強い治療法はせずに、柴苓湯(さいれいとう)、HMG注射、アスピリン、などを使用しています。原因不明の場合にも、妊娠を急ぐのが最も良い治療法かもしれませんね。

5)習慣流産の検査には、以下の検査をおこなう。
①抗リン脂質抗体
②カップルの染色体検査
③子宮形態以上検査(経膣超音波検査、子宮卵管造影、子宮鏡など)
 習慣流産の検査は、血液の凝固能のみではなく、染色体分析と子宮の形態検査も伴って、しっかりとした検査になるのです。皆さん、抗リン脂質抗体などの検査だけが重要だと誤解していませんか。

6)抗リン脂質抗体陽性を複数回示した習慣性流産患者は抗リン脂質抗体症候群と診断する。
 抗リン脂質抗体は日々増減します。抗リン脂質抗体が1回の陽性で抗リン脂質抗体症候群と言われた方がしばしばいらっしゃいます。しかし学会では、偽陽性多いため、12週間以上持続することを基準としています。つまり、12週(3ヶ月)あけて、2回以上の検査で陽性でないと、抗リン脂質抗体症候群とは言えないのです。
 また、抗リン脂質抗体の検査はいくつもあり、検査会社によって基準値が異なります。1回の検査で確実に診断できると考えるのは誤解なのです。

習慣流産・不育症も、血液凝固異常のみでは無く、総合的な検査と妊娠を急ぐ治療を心がけることが必要だと思いますが、皆さんの参考になりましたでしょうか。
 

2014年新年のご挨拶

2014年  元日
明けましておめでとうございます。
皆さまに新年のご挨拶を申し上げます。
今年も高橋ウイメンズクリニックをよろしくお願い申し上げます。

 昨年は、開院以来10,000例の妊娠に到達し、
私自身の仕事への確認が出来る機会となった年でした。さらに次の節目に向けて、仕事を継続して行けるようにしたいと思います。
 一方、自分の決定/行動の遅さによる、仕事の停滞は甚だしく、いつも反省、後悔している状況でした。この点は特に意識して改善していきます。
 今年はアンチエイジングも、より積極的に、不妊治療に取り入れたいと考えています。

1)昨年は、私自身と細川忠宏氏(パートナーズ代表取締役)の二人で、
アシストワン(高濃度のマルチビタミン剤)を作製しました。
高濃度のビタミンC,D,E、コエンザイムQ10 、Lカルニチン、亜鉛、などが入っており、これ一つで、妊娠に必要なビタミン、標準的な抗酸化物質は、十分量とれます。私も飲んでおり、使用した方の感想も好評です。亜鉛、コエンザイムQ10 も十分含まれており男性にもお勧めです。短期的には、疲れにくくなった、むくみがとれた、肌がすべすべした、との感想も頂いております。
今年は、皆さんに、もっと知ってもらえるようご紹介していきます。


2)また、小浦ゆきえ著、高橋敬一監修の
「子宝サプリ 授かりやすいカラダになる!」
(自由国民社:1400円)を発刊しました。
是非手にとって、ご覧頂ければ幸いです。アシストワンと共によろしくお願い申し上げます。



下の写真は、当クリニックの職員のご家族がいつも作製して下さる門松です。
非常にかわいらしく、クリニックの出入り口で、皆様をお迎えしております。
小さいながらも、新年の雰囲気を醸し出す強いパワーを持っており、気持ちが引き締まるのを感じます。
今年が皆様に良いお年でありますように!
職員一同がんばってまいります!