2012年10月21日日曜日

卵子若返り治療薬ES-46???

この数日で、卵子若返り治療薬のES-46について、複数の方から質問されました。全く知らないサプリメント?薬?でしたので調べてみました。私がどうこう言うのもおかしいのですが、基本的に疑問が多いので、いくつかの疑問をあげてみました。判断は皆さんご自身でしてみて下さい。この場では判断材料の一部を提示するのみに致します。

1)これを発売している医師は、癌を扱っていた外科医のようです。HPを見る限りは、日本生殖医学会にも受精着床学会にも入会していないようです。
2)日本の医学論文の検索をしましたが、当該医師の癌についての論文はありましたが、不妊症に関しての論文、学会発表は、10月21日現在では検索にはかかりませんでした。
3)ES-46についての、日本語論文も英語論文も検索しましたが見当たりません。
4)日本不妊治療学会は、いつ設立されたかが記載されていません。理事長は当該医師ですが、それ以外の役員の医師名はなく、会員数は20名と記載されています。活動実績が全く分かりません。
5)HP上の数字ですが、体外受精より人工授精の妊娠率が高い、など通常ではない数字です。また、ES-46 を使用していない初回の人工授精が35%もあるような治療成績は見たことがありません。一般的には人工授精の妊娠率は5~10%程度です。また10回以上の体外受精の妊娠率が10%をこえる様な数字も通常ありません。全く実際とは異なる数字と考えられます。
6)当該医師は、「日本アトピー治療学会」の理事長もなさっているようです。「日本不妊治療学会」と同じ手法のようですね。当該医師の検索をグーグルやYAHOOでおこなってみると、かなりきわどい話もでてきました。興味のある方はご自身で調べてみて下さい。

以上、皆さんのご判断のご参考にしてみて下さい。

2012年10月9日火曜日

AMH<0.1で妊娠した3例

今までにも、何例かAMH<0.1で、かなり卵巣機能が低下している方での妊娠例を数例報告していきましたが、今回3例ご紹介致します。AMH<0.1の妊娠例紹介も、そろそろこれで十分かもしれません。

AMH<0.1は、確かに卵子数は少ないのですが、決して採卵数一つではなく、複数採卵出来ることもしばしばあり、自然妊娠もあり得るのです。AMH<0.1になる前に妊娠出来る方が良いのですが、0.1未満でも、諦めずに挑戦する意義はあるでしょう。
また、卵巣機能が低下していても、自然妊娠の可能性を否定しないで、少しでも可能性を広げるために、卵管造影検査などの一般不妊治療の検査や、交渉回数を日頃より多く持つことも大切だと思います。ご参考にして下さい。

1)28歳 AMH<0.1 FSH:11.72 初回の体外受精では採卵できず。2回目の体外受精は自然周期(DHEA4ヶ月内服)で1個採卵・8分割胚移植し妊娠。

2)40歳 AMH<0.1 FSH;10.92 1回目体外受精はHMG注射で排卵誘発するも1個採卵のみで、化学的妊娠。メトグルコとエパデールは1ヶ月前より内服。 2回目はクロミフェン使用しての体外受精。1個採卵し、9分割胚1個移植で1卵性双胎妊娠。メトグルコとエパデールは3ヶ月、DHEAは2ヶ月服用。

3)37歳 AMH<1pM FSH;35.54 月経不順あり。クロミフェンで1個採卵するも、採卵時に異常卵のため体外受精は中止。次の周期に自然妊娠。半年前に卵管造影検査施行で正常。

体外受精や人工授精でも、禁欲期間が長くなればなるほど妊娠率は低下する報告が最近散見します。出来るだけ禁欲期間が短い方(毎日交渉が最も妊娠率が高い)が良いでしょう。当クリニックでは最近は「禁欲は3日以内」をお願いしています。

2012年10月8日月曜日

iPS細胞から卵子を作成

マウスのiPS細胞(新型万能細胞)から卵子を作ることに、京都大が、世界で初めて成功し、この卵子を使用して健康なマウスが誕生した、との報道がありました。
まだ様々な問題があり、直ちに人に応用することはできませんが、将来的に、卵巣機能不全、早発閉経、などの不妊症に利用できる可能性がある報告です。
 これは雌のマウスの皮膚からiPS細胞を作製してから、始原生殖細胞を作り、それから卵子を作製してから受精させて、約10匹の成熟した雌の卵管に移植したところ、2匹から健康な子どものマウス3匹が誕生した。またその子どもの世代も生まれた、とのことです。
iPS 細胞からすぐに卵子が作製できるのではなく、いくつもの段階を経て、またその受精卵をいくつも移植して3匹誕生した、のですから、まだ効率を議論する段階ではありません。
しかし、iPS細胞を使用して、卵子や精子を作製することが可能であると証明された事実は、体外受精をおこなっている私から見ても、非常に衝撃的です。
本日、京都大学の山中教授が、ノーベル医学賞を受賞したとの報道がなされました。昨年は体外受精のエドワード博士がノーベル賞を受賞され、今年はiPS細胞でノーベル賞、また卵子と精子も作製されました。非常に象徴的な出来事が続いています。生殖医学はまた新たな段階に入ったのかもしれません。