2015年3月17日火曜日

子宮内膜を厚くする方法とは?

日本産婦人科医会(ざっくり言うと、開業医が主な会員の産婦人科医の団体)の会報に、山口大学の専門家の教授が、子宮内膜の発育について、教育講演をした内容の紹介がありました。
内膜が薄くなる原因に
1)クロミフェンの使用
2)子宮内容除去術後
3)子宮腺筋症
4)子宮内膜の血流不全
があると、しています。
それぞれの対処方法には、

1)子宮内膜の血流改善としては
①ビタミンE
②Lアルギニン または  バイアグラ膣錠(膣の中に1日2~3回連日挿入)  

2)子宮内膜除去術後
抗酸化剤として、
①ペントキシフィリン(輸入薬)
②ビタミンE
③ビタミンC

3) クロミフェンに対して(40%か方が、内膜が薄くなる)
①クロミフェンを半量にする
②内服を生理1日目から早めに内服開始する (当クリニックでは3日目から)

4)子宮腺筋症
有効な方法がなく、何もしない。

との事でした。

当クリニックでの導入としては、
①内膜が薄い方には、 ビタミンCとD、Eが入ったアシストワンも、積極的に使用してみます。
②バイアグラの膣錠を最近使用することが少なかったのですが、再度、積極的に使用してみます。
③ペントキシフィリンを輸入して準備します。
④Lアルギニンも検討していましょう。
これらは、どの原因の方にも試して良いかもしれませんね。



2015年3月9日月曜日

AMH<0.1での妊娠例、チョコレート嚢腫術後、骨盤腹膜炎を乗り越えて

先日、AMH<0.1の方が卒業されました。AMH<0.1の方は、様々な困難を乗り越えての方が多いですね。みなさんにもご紹介致します。
この方は37歳の方ですが、過去に2回、腹腔鏡でのチョコレート嚢腫の手術を受けていらっしゃいました。来院時はAMHは0.47でした。検査の段階で骨盤腹膜炎になり、開腹手術も必要となり、術後はAMH<0.1となってしまいました。
卵巣機能がかなり低下していたので、卵胞ができたらば体外受精に挑戦する、方針で治療を継続しました。
FSHは、25や47などに上昇し、卵胞もなかなかできなかったので、プレマリンでFSHを下げて、卵巣を休ませながら、辛抱強く、自然に卵胞ができるのを待ちました。
月経もしばしばプラノバールでおこし、リセットもしました。ある周期では、月経63日目でやっと卵胞ができたこともありました。
1回目の採卵では1個採卵(月経20日目)し胚移植できましたが妊娠せず。
2回目(月経15日目)、3回目(月経13日目)の挑戦では、穿刺するも卵子をとれませんでした。
4回目の採卵は、月経24日目の自然周期で1個採卵でき、採卵御2日目で3細胞グレード3bを胚移植して、妊娠、卒業となりました。
この間は、DHEAを補充し、プレマリンも1錠から開始して、1日2錠使用していました。

FSHが20を超えて、通常では卵胞発育がない場合には、今回のように、プレマリンを使用しつつ、辛抱強く卵胞を待つのも一つの方法です。また、卵胞ができるまで3週間かかっても、今回は2回とも採卵、胚移植できました。卵胞ができるまで多少時間がかかろうとも、それで卵子が悪いとは決めつけない方が良いでしょう。
卵胞が出たならば挑戦する意義はあるのです。当クリニックには、AMH<0.1の方もたくさん通院されています。厳しい条件下での挑戦ではありますが、今回の方のような例もあります。
AMH<0.1の場合には、なんとか残っている卵巣の機能を保護しつつ、大きくなる卵胞を見つけられるようにしていきたいと思います。

2015年3月7日土曜日

腹部からの採卵例、巨大筋腫の場合

先日、9×7cmの大きな子宮筋腫があり、経膣超音波検査では、卵胞がみえない方に対して、腹部超音波検査で採卵し、胚移植で妊娠、卒業された方がいました。
この方は40歳超の方で、6×9cmの大きな筋腫と、4cmの筋腫があり、経膣エコーでは卵巣がみえませんでした。卵巣が腹部上部に押し上げられており、腹部からのエコーで卵巣がみえました。
筋腫核出術と、体外受精の選択肢で、まずは体外受精を希望されました。
HMGアンタゴニスト法で排卵誘発し、腹壁エコーで、腹壁を穿刺し20個採卵しました。
麻酔はプロポフォール24分間  3個胚盤胞保存
その後、自然周期で凍結胚移植し、妊娠、卒業したのです。
巨大筋腫があり、今後もたくさんの壁がありますが、順調に経過することをお祈りするばかりです。

この方法は、中途半端に子宮筋腫が大きい場合にできる方法ではありません。腹部エコーでしっかりと卵巣がみえる場合に、腹壁から採卵できるのです。
子宮筋腫が小さいと、腸が卵巣との間には入り込み、穿刺しにくいのです。

筋腫を残したままでの妊娠継続が、順調にいくかの保証もなく、この方法がベストな選択とは言い切れません。しかし、年齢との関連などを考慮すると、一つの選択肢にはなり得るでしょう。
参考例にして頂ければ幸いです。



2015年3月3日火曜日

2015年2月の妊娠数

新年も2月に入りました。2015年1月の妊娠数をご報告致します。

2015年 2月の妊娠数 86例
 

ART妊娠    70例    (内訳:  IVF 24例  ICSI 9例    凍結胚移植 37例) 

 AIH妊娠    7例     

その他一般不妊治療   9例  (タイミング、クロミフェンなど) 

2月の妊娠数86例は、昨年2月の妊娠数76例を大きく上回りました。これは、開院後今までの月の妊娠数のトップ5に入る妊娠数です。前年の実績を少しずつでも上回ることができるとやはりうれしいものです。
2月は、年末年始でIVF、ICSIをおこなえなかった方々が採卵する為に、採卵数は月平均より多いため妊娠数も多くなりました。
このペースで、毎月妊娠者が出れば年間1,000例の妊娠に達するので、これが次の目標の一つなのです。早く達成できるように、今後も様々な工夫を取り入れながら、少しずつでも進んでいきたいと思います。

2015年3月1日日曜日

卵子凍結の問い合わせ

先日、43歳の方から、当クリニックで卵子凍結をおこなっているか、との問い合わせがありました。
御本人はまだ未婚で、今年中には籍を入れるとの事でした。
浦安市で「卵子凍結:千葉・浦安市が助成、決定 3年9000万円 順天堂病院に施設」
という情報に刺激されたのか、偶然なのかはわかりませんが、今後、この情報により、卵子凍結(つまり未受精卵)を希望する方が増えるかもしれません。

当クリニックの状況をお知らせする必要があると思い、今回ご説明致します。
1)卵子(未受精卵)凍結は、基本的に当クリニックでは現在おこなっておりません。
2)胚(受精分割胚)凍結は、日常的におこなっております。
3)精子凍結は、白血病、精巣腫瘍、その他の腫瘍で、手術や抗癌剤を使用する方には、精子凍結保存を承っています。

実際には「現時点では、医学的理由以外の卵子凍結は不妊治療ではない」のです。
したがって、年齢を理由とする卵子凍結は現時点では当クリニックで扱っておりません。
このような報道に戸惑っているのが実情です。

実際には、43歳は通常の体外受精でも妊娠率は15%程度で、半数は流産になってしまいます。卵子凍結の場合には、もっと可能性は低くなるのです。凍結するならば、受精卵(胚)を凍結する方が良いのです。
今回の例としては、パートナーがいらっしゃるので、籍を入れているかどうかは別にして、すぐに体外受精をおこなうことが妊娠、出産には最も良い方法でなのです。


社会的経緯)
 千葉県浦安市と順天堂大浦安病院(同市)は2月23日に、将来の妊娠と出産に備えて健康な女性の卵子を凍結保存する新年度事業を正式発表しました。現状では健康保険が適用されないため市が同病院の研究に補助金を出し、最低でも約100万円とされる市民の負担を3割にしてもらう方針とのことでした。
 同病院では、難治性不妊症に対応する高度治療施設(つまり体外受精をできる施設という意味でしょうか?)を4月に設立し、市内の20~34歳の女性を対象に、将来の体外受精に向けて卵子を採取、凍結保存する研究を進めるようです。「少子化対策の一環」として、2017年度までの3年間で計9000万円を補助する方針で、希望する女性は、出産適齢期を啓発する講演会に出席した上で、最終的には同病院の倫理委員会の審査を受けるとのことのようです。

 日本産科婦人科学会は昨年の会告(指針)で、卵子の凍結保存は、がんなどの治療で卵巣機能の低下が予想される場合、治療前に卵子を採取して将来の妊娠の可能性を残すためには、本人が希望する場合、治療の副作用対策の一環として認めてきました。
 最近では、健康な女性のために卵子を凍結保存する民間のバンクもあります。
 


産婦人科学会は、浦安市の発表に対してか、25日に以下のようなコメントをすぐに出しました。

卵子凍結「推奨せず」 健康な女性、産科学会 出産先送りに警鐘
 ( 2015年2月26日(木)配信共同通信社)  
 
 日本産科婦人科学会の専門委員会は25日までに、若い健康な女性が将来の妊娠・出産に備えた卵子の凍結保存を「推奨しない」とする見解をまとめた。女性の健康へのリスクや妊娠率が高くないことなどを問題視した。
 若い女性の卵子凍結保存を容認した日本生殖医学会や、卵子凍結を支援する費用を予算案に計上した千葉県浦安市に対立する見解となる。医学的理由によらない卵子凍結の是非があらためて問われそうだ。
 国内の多くの産婦人科医や研究者が所属する日本産科婦人科学会で卵子凍結に関する方針を決める生殖・内分泌委員会がまとめた。28日の理事会に報告、所属医師に通知される。
 見解では、凍結した未受精卵(卵子)は凍結受精卵と比べて妊娠率が低いこと、卵巣を刺激する排卵誘発剤は体に負担がかかること、解凍後に受精卵を戻す際の高齢出産に伴う合併症などを指摘。生まれる子どもの健康に与える影響も不透明だとし、年齢を問わず推奨しないとした。
 委員の一人は「出産の先送りにつながる。自治体も意をくんでほしい」と、浦安市の動きをけん制した。
 一方で見解は、卵子の凍結保存を禁じるものではなく、希望する女性と医師には自己責任で行うよう求めている。同学会は昨年4月、薬を使うがん治療や放射線療法で卵巣機能が失われて妊娠が困難になる場合に、事前に凍結保存することを認めた。