2015年4月30日木曜日

44歳の方からの、とてもうれしい出産報告

先日、体外受精で妊娠、44才で出産された方からの出産報告が届きました。
出産までに長い経過ではありましたが、御本人の努力が実ったうれしい一例をご紹介致します。

当クリニックでは39才から治療を開始しました。
AIHは3回で妊娠しなかったので、年齢も考えて体外受精も開始しました。

体外受精を中心に治療を進め、最終的に、43才時、13回目の採卵で、5個採卵、4個受精、2個が胚盤胞まで成長し、1個胚移植し、始めて妊娠し、卒業。そして、今回の出産報告が届いたのです。
12回目の採卵以降は、アシストワンと、メラトニンを開始していました。

今回は13回目の採卵という長い道のりでしたが、この間、治療を継続できたのは、胚盤胞ができていたことも望みの一つでした。胚盤胞は、実際には平均で受精卵の半数以下しかできませんし、高齢になるほど胚盤胞まで進むことは少なくなるのです。道のりは長かったのですが、最終的にお子様を得られたので非常に幸運でした。

不妊治療は、続けていればいつかはお子さんが得られる、ものではありません。すでに40才以降の方には、この方は大きな希望の一例です。
ただ、今回は非常に幸運な稀な例なのです。37歳以上の方は、40歳まで大丈夫、とは考えずにステップアップを急いで下さいね。
このような方がひとりでも増えるように、皆さんと一緒にまたがんばって行きたいと思います。

重複子宮の妊娠・卒業例

先日、重複子宮の方が妊娠されて卒業されました。
皆さんの参考までに、ご紹介致します。

30代前半の方で、前医ですでにAIHを5回受けていました。
子宮鏡では、左の子宮は正常でしたが、右の子宮には子宮内膜ポリープがありました。
卵管は正常とされていたので、御本人の希望もあり、当クリニックでも2回AIHをおこないました。

AIHでも妊娠しないので、体外受精を行うこととなりました。
クロミッドーHMG・アンタゴニスト法で7個採卵、5個受精し、1個胚移植、3個胚盤胞保存。
1回目の体外受精で妊娠、卒業されました。

・重複子宮でも子宮内膜ポリープはおこり得ます。子宮鏡検査はしっかりと受けておいた方が良いですね。今回は、左の子宮が正常でしたので、右のポリープの手術はせずに、左の子宮に胚移植しました。
・HMG注射も追加したので、複数の胚盤胞凍結も行えました。
・重複子宮、単角子宮の方でも、妊娠率は通常を同じように得られます。今回はすでにAIHを7回受けていましたので、体外受精を行いました。しかし、重複子宮であっても、必ずしも体外受精を必要とするのではなく、通常のタイミング、AIHなどもおこなって良いのです。妊娠率は通常と同じとされています。単角子宮、重複子宮であっても悲観せずに、しっかりと治療を進めていきましょう。
・ただし、重複子宮、単角子宮の流産率は、およそ50%です。今後は、良い経過であることを、天に祈っていくことになるのです。


2015年4月28日火曜日

IFFS(国際不妊学会)参加証拠写真

今回、横浜で開催されているIFFS(国際不妊学会)に参加してまいりました。


 
今回は、久々の国際学会発表です。昨年のハワイで行われた、アメリカ生殖医学会(ASRM)で、抄録を送ったものの届いてなかった、という、間の抜けた事がありましたが、今回はしっかりと届いていました。
ただ、抄録集を見ても、英語だとなかなか頭に入らないのですね。他の方の発表内容については、見通しは暗いのですが、理解できましたらば皆さんにもご紹介致します。本能的に、無意識のうちに、視覚の時点で、すでに英語にブロックがかかっているようです。
 
 
 今回の内容は、体外受精、顕微授精で、正常受精を確認する2つの前核(精子と卵子の核)が、0個、1個の場合でも、胚盤胞まで育つことがあります。
従来は、これらは異常な受精の可能性があるとされてきましたが、今回、最後に残ったこのような胚を患者さんの了解の上で移植すると、妊娠率や流産率は全く同じであり、27人の生まれた赤ちゃんでも、染色体異常の赤ちゃんが増えることもなかった、という内容です。
前核がみえないのは、単に観察した時間差の問題であり、染色体異常との関係はないと考えられます。このことは、他の施設からの報告もいくつかありました。
0前核、1前核であっても、胚盤胞まで進んだ胚は、問題なく使用できると考えられますね。

ポスターの発表では、ポスターを貼って逃げ帰ってきましたが、診療の現場では逃げずに日本語で診療しますので、皆さんご安心下さい。

 

 

2015年4月27日月曜日

着床前診断で赤ちゃんを得られる可能性は上がるのか?(生殖医学会抄録から)

現在、横浜で国際不妊症学会(IFFS)と、日本生殖医学会の学会がおこなわれています。
日本生殖医学会のシンポジウムで、名古屋市大の杉浦教授の「着床前診断は生児獲得率改善に有効か?」との題名での抄録がありました。
簡単に言えば、「着床前診断(PGD)をすれば、赤ちゃんを得られる可能性が上がるか?」という事です。

結論から言えば、「着床前診断によって出産率が上昇することは期待できない」という結論です。それどころか「高齢不妊女性に対する着床前診断の多数の論文の検討では、むしろ出産率を低下させた」のです。

これは、当クリニックでも、着床前診断の質問のある方に説明していることと全く一致しているので、今回、もう少し詳しく考え方を説明致しましょう。

まず、具体的な数字では、染色体均衡型転座による習慣流産では、PGDを行うと27~54%の出産率と報告されています。一方、均衡転座があっても、自然妊娠による出産率は37~66%(むしろこの方が高いですね)、累積出産率は68~86%であった。したがって、PGDによって出産率が上昇することは期待できない。との事でした。

習慣流産の方が、着床前診断を受けるのを希望されるのは、赤ちゃん(胚)の染色体異常による流産を防ぐ目的です。
今回の例は、両親のどちらかが染色体の一部分が入れ替わっている、均衡型転座を持っているカップルに対する着床前診断の意義について述べています。
染色体の転座があるので、通常よりも、赤ちゃん(胚)の染色体の異常は多くなります。
したがって、その染色体異常のある胚を除けば、流産率は低下します。しかし、最終的に赤ちゃんを得られる率は上昇しないのです。

これはどうしてでしょうか。

実は、着床前診断では、胚盤胞になった細胞を数個はぎ取ってきます。
従って、はぎ取られた胚は、その過程で通常よりも長く外に出されており、また細胞をはぎ取られるわけですからそれだけストレスを受けます。ストレスを受けているわけですから、染色体が正常であっても、検査を受けた胚は、何もされていない胚よりも妊娠率は低下するのです。
一方、染色体が異常な胚は移植されませんから、胚移植あたりの見た目の妊娠率の上昇は期待できるかもしれませんし、(妊娠したら)染色体異常による流産は低下します。
ただし、繰り返しますが、1個1個の正常胚の妊娠率はストレスにより低下するので、そのカップルが最終的に赤ちゃんを得られる確率はむしろ低下するのです。

これらは、染色体異常が起こりやすい均衡型転座のカップルの場合ですが、通常の方が着床前診断で得られる意義はもっと少なくなるでしょう。

着床前診断は、流産率の低下はある程度期待できますが、出産率はむしろ低下する可能性があるものなのです。

 現在の着床前診断は、やはり、致死性の疾患の遺伝があるか、両親のどちらかに染色体に問題があり流産を繰り返す、場合に受ける意義がある、と考えるのが適当でしょう。
また、着床前診断には、そのカップル毎に、日本産科婦人科学会に申請をして、承認が下りた場合にのみ受けられます。現状では、簡単に受けられる状況ではないのです。












2015年4月16日木曜日

他院で7回胚移植後、当院で初回の体外受精で妊娠した方の出産報告

他院で3回採卵し、7回胚移植したものの妊娠せず、当クリニックにいらした方が、当クリニックの初回の体外受精で妊娠、出産された方からの出産報告の葉書が届きました。
たまたま妊娠された可能性もあるのですが、やはりこの様な葉書を受け取るとうれしくなります。
改めて、何か皆さんの参考になる要素がないかを見るために、カルテを取り寄せて見直してみました。

この方は、30歳代後半の方で、AMHは1.31と、40~41才相当の卵巣年齢でした。
反復不成功の方には、当クリニックでは様々な方法を試みることにしています。
基本的なこととしては、子宮鏡とビタミンDを検査しました。
すると子宮鏡では、写真の如く、子宮内膜ポリープが見つかったのです。また、ビタミンDも19.4と、20未満の、ビタミンD欠乏状態だったのです。



また、それ以外には、DHEAsも113と低い値であり、特殊ですが8OHdGでの酸化ストレスでは強度のDNAダメージを示していました。
この対策としては、
1)子宮内膜ポリープ切除術を日帰りでおこないました。
2)DHEAと、マルチビタミン(アシストワン)を3ヶ月前から使用しました。
3)排卵誘発は、前医でも胚盤胞が十分できていたので、同様なHMG-アンタゴニスト法を採用しまし、採卵数は17個と十分な卵子を採取できました。(以前の方法をすべて否定する必要はないのです)
4)胚移植は、2段階移植を採用しました。また、余剰胚盤胞も2個保存することが可能でした。

今回の方法では、最も重要であったのは、子宮鏡検査とポリープ切除術だったと思います。
最近は、多くの方が「着床障害」について気にされていますが、
①着床(妊娠)するかどうかは、卵子の質が最も大きな問題であり、
②着床障害の最も重要な検査は子宮鏡などで、ポリープや粘膜下筋腫、子宮内腔癒着がないことを確認することなのです。
③血液凝固能や免疫の影響による着床障害は、明確な原因としては一般的には未だ認められていませんし、原因があったとしてもそれほど多くはないのです。

次に、今回採用した、子宮鏡検査以外の効果は議論があり、明確な効果を示さないものもあります。
しかし、一番大事なポリープ手術をおこなった上で、卵子の質の改善を期待するならば、サプリメントや、2段階移植も意味はあると考えています。

基本的な対策をとらずに、DHEAやサプリメントのみを使用することはあまりお勧めしません。
反復不成功の方には、しっかりと再評価をした上で、基本的(つまり大切)なことをおさえた上で、様々な方法を試してみる事が良いでしょう。








2015年4月3日金曜日

月間妊娠100例達成(2014年3月)

月間妊娠100例達成101例)!!



2015年、3月の妊娠数をご報告致します。 

2015年 3月の妊娠数 101例 

ART妊娠  73例  (内訳:  IVF 23例  ICSI 7例    凍結胚移植 43例) 

 AIH妊娠  16例     

その他一般不妊治療   12例  (タイミング、クロミフェン、TCR手術後、など) 


3週間ぶりのブログです。

皆様ご無沙汰でした。高橋は生きております。

このところ、研究会参加、他施設の見学など、むしろ活発に動いていたので、ブログを書き込むことが疎かになっておりました。報告は、また別にご紹介致しますね。

しかし、私もおこなうべき事はしっかりとおこなっておりましたよ。(本当は、高橋以外のスタッフのがんばりのおかげなのですが、、、、) スタッフの皆さん、ありがとうございます。

月間100例を超えたのは、実は2回目なのです。初回はなんと震災前の2009年にさかのぼります。その時は、一般不妊治療の方も多く受け入れておりました。したがって現在の100例とは内容が異なっており、現在の方が、より妊娠が困難な方が多くなっているので、以前よりも内容が濃い妊娠数だと思います。

さあ、今後もこの勢いを安定して持続できるように、無理をせずに診療の質も保てる体制を今年は目指していきま~す。