2016年8月5日金曜日

44歳時の凍結胚を移植して卒業した46歳例

先日、44歳で採卵・凍結保存した胚盤胞を移植して妊娠、卒業された46歳の方がいらっしゃいましたので、ご紹介致します。
やはり高齢の方はなおさら、採卵できるならばできるだけ多くとる方がよいのではないか、と感じた1例です。

当クリニックには43歳で来院、すぐに人工授精・体外受精を開始しました。AMHは2.45と良い状態でした。
3回の体外受精では妊娠せず、胚盤胞の凍結もできませんでした。
DHEA、アシストワン、メラトニンを併用しつつ、
4回目の体外受精(44歳)では、11個採卵、2個胚移植し、妊娠するも流産。
2個の胚盤胞を凍結保存していましたが、後日1個の融解胚を移植して、妊娠。45歳で出産。

今回は、46歳(出産後8ヶ月)で、残りの1個の胚盤胞を融解移植して妊娠し、卒業されました。

この方は卵巣機能もとても良く、排卵誘発剤に良く反応して、たくさんの卵子が得られました。
高齢の方は、やはり、卵子を多くとれるならばできるだけ多くとっておく方がよいということでしょう。
この方は、44歳で胚盤胞を凍結保存できていました。40歳を超えると、2年の差は非常に大きいものです。採卵数が期待できるにもかかわらず、排卵誘発剤をマイルドにして少ない採卵数の場合には、妊娠、出産して、その後に再度採卵から始めると、妊娠できるできるかどうか難しいことが予想されます。
例えば、この方の場合、46歳で採卵から始めると、当クリニックでもトップ3に入る年齢での妊娠を期待する必要があるのです。
少しでも若いうちに、胚を凍結しておけるならば、高齢でも妊娠できる可能性が、採卵時の年齢相応に期待できるのですね。



2016年8月4日木曜日

AIH6回後のHSG後の自然妊娠例

移転後1年経ち、体制も落ち着いて整ってきて、すぐの体外受精までは考えていない場合でも、妊娠を積極的に考えている方は受診を受け入れることでできるようになりました。

今回は、一般不妊治療での妊娠例で、HSGの重要性を感じた30歳前半の1例です。
体外受精もできる前施設で、AIHを6回受けて妊娠せずに当クリニックを受診されました。
そろそろ体外受精を考えていらっしゃいました。
当クリニックでもその準備として、HSGと子宮鏡検査を施行しました。子宮鏡検査では1cm程度の子宮内膜ポリープがあり手術も予定していました。
生理が来たらポリープの手術をしましょうとしていたところ、生理が来ないと言うことでした。
HSGと子宮鏡検査を施行した周期に自然妊娠されたのです。
この方は、HSG検査を受けずに、通水検査のみをうけて、AIHを6回受けていたのですね。当クリニックでは、通水検査はあまり重要視しておらず、ほとんどおこなっておりません。通水検査は、開通の有無が不明瞭であり、左右の状態の把握が不可能で、癒着も全くわからないのです。一方、HSGはその後の妊娠率は圧倒的に高いのですね。卵管の通過性を良くする治療目的で、HSGは1年ごとの検査を当クリニックではお勧めしています。
内膜ポリープがあっても、これも絶対的な不妊原因とも言えません。この方はポリープがあっても妊娠された幸運な方ですが、高額な体外受精を予定する場合には、やはりポリープの手術はしておく方がよいでしょう。一方、よりHSGの重要性を示す事にもなりました。

私は簡単におこなえて、妊娠の改善を期待できるHSGを重要視しています。
また、(子宮と卵管の境の)間質部が閉塞している場合には、全国的にも少ないと思いますが、閉塞部側のみにカテーテルを進めて圧をかける、選択的卵管造影開通術もおこなっています。これで通常のHSG閉塞している卵管の半分は開通するのです。
それでも閉塞している場合には、卵管鏡下卵管形成術(FTカテーテル)も日帰りでおこなっています。結構卵管にこだわった治療をおこなっているのですね。

前医で体外2回、顕微1回のART反復不成功後の初回AIHの妊娠例

前医で体外受精2回、顕微授精1回受けたART反復不成功であった34歳の方が、AIH 1回目で妊娠されました。
当クリニックでも体外受精に向けて準備しており、次月に体外受精をする予定でした。
準備段階では、卵管造影検査と子宮鏡検査をしており、その周期でAIHをおこなったのです。
体外受精目的での受診、検査、AIH妊娠で、2ヶ月での卒業となりました。
この方は非常に幸運であったと思います。
しかし、体外受精を目的にしていても、卵管造影検査と子宮鏡検査をおこない、AIHも決して無駄ではないことの一例でもあります。妊娠のために手段を体外受精のみに限らず、可能性を広くとらえることも重要だと当クリニックでは考えています。

乳がん手術後、40歳の卒業

先日、乳がん手術後の40歳の方が、妊娠されて卒業されました。
乳がん手術は今年に受けていらっしゃり、術後のホルモン療法を検討されていました。しかしホルモン療法を開始すると、生理が止まり、妊娠は延期されます。
今回は妊娠を優先されて、体外受精をすぐにご希望されました。
ご本人のご希望もあり、ホルモンをあげたくないとのことで、乳がん治療薬のレトロゾール(フェマーラ)のみでの排卵誘発を採用しました。
7個採卵、4個は未熟で、3個受精、1個移植して、幸運にも妊娠し、卒業となりました。また、幸いに胚盤胞も1個保存できました。
今後、良い経過である事を祈るのみです。がんばれ~。
乳がんの方の場合には、排卵誘発剤でのホルモンの上昇を抑えるために、レトロゾールがしばしば用いられます。一方、妊娠中は排卵誘発剤使用時と同等以上のホルモンの状態が10ヶ月も続くので、排卵誘発剤使用の2週間程度は、実際には無視できるものとなり、誘発剤の使用方法にはあまり心配されないでも良いでしょう。

7月の妊娠数94例 もう少しで大台だった!

2016年7月の妊娠数をご報告致します。

2016年 7月の妊娠数 94例 (今年3位タイ) 

ART妊娠    70例    (内訳:  IVF 15例  ICSI 15例    凍結胚移植 40例) 

 AIH妊娠    18例     

その他一般不妊治療   6例  (タイミング、クロミフェンなど) 

7月の妊娠数94例と100例の大台までもう少しと健闘しました。成績は今年3位タイという、微妙なところで、「平均的」とも言える成績です。特徴としては、今月はICSI妊娠が15例と今年最多と健闘した印象です。
7月までで、AIHは118例(月約20人)、ART全体408例(月約60人)、凍結胚移植269例(月約40人)の方が妊娠されているところです。
6月の巻き返しもあり、7月までで605例の妊娠と、年間1,000例妊娠のペースを何とか回復しました。
このまま、月間100例以上の妊娠を目指してがんばります。