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2015年5月17日日曜日

着床前診断のメリットと限界、流れとは?

日本遺伝カウンセリング学会誌が送られてきました。
IVFなんばクリニックの中岡義晴先生が「着床前診断の現状と今後」という題名で、シンポジウム論文を投稿されていましたが、参考になりましたので、私の視点での要約をご紹介致します。

日本の着床前診断(PGD)の適応は、
①重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある遺伝子変異ならびに染色体異常を保因する場合
②均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産
です。
つまり、

着床前診断は、

1)重症の遺伝病のある場合か、

2)お二人のどちらかに染色体異常のある習慣流産の方、

のみが対象になるのです

PGDの意義としては、

1)羊水検査での異常と診断された場合に中絶するような事態を防ぐことが可能である。

2)均衡型染色体異常では、70%が流産しますが、これを防ぐことが可能である

3)流産を避けたいカップルには有効である

などが、考えられます。

一方、

PGDでの、不都合な面は、

1)PGDにより、生児獲得率(赤ちゃんが得られる可能性)は上がらない

2)妊娠するのに体外受精を必要としないカップルにも、体外受精をすることになる

PGDで赤ちゃんが得られる可能性が高くなると勘違いされている方が、少なくありません。
PGDを行うことで、正常胚が増えるわけではないのです。
むしろ正常胚に対しても、胚の一部分をはぎ取ってくる操作が必要なわけですから、正常胚の着床率が低下する可能性もあるのです。(最近のデータでは、PGDをおこなっても着床率はほぼ同じであるとの報告もありますが、正常胚の着床率が上昇するのことはないのです)
ただし、染色体異常の胚は移植しないので、胚移植あたりの妊娠率は上昇します。(欧米から一例として、胚移植あたりの妊娠率は、46%から71%に上昇した。流産率が9%から3%に低下した、などです)また、年齢が上がっても、流産率はほぼ一定の10%だったとの報告もあるようです。(PGDでも流産を完全に防げるものではないのです)

PGD実施までの準備、期間
PGDには、日本産科婦人科学会の承認が必要です。手続きには
①自施設での遺伝カウンセリング
②第三者機関での遺伝カウンセリング
③自施設での倫理委員会の承認
④日本産科婦人科学科への申請、承認

承認まで必要な期間は、平均6ヶ月かかり、その後に体外受精をするので、妊娠までは約10ヶ月かかるとの事でした。
実際には、遺伝カウンセリングや倫理委員会をもっている施設は非常に限られます。
千葉県では、実際におこなっている施設はないでしょう。
現在、日本ではわずか300例のPGDがおこなわれているようです。
今後、簡略化されて広まる可能性はありますが、その意義と限界をしっかりと理解する必要があるでしょう。









2015年4月27日月曜日

着床前診断で赤ちゃんを得られる可能性は上がるのか?(生殖医学会抄録から)

現在、横浜で国際不妊症学会(IFFS)と、日本生殖医学会の学会がおこなわれています。
日本生殖医学会のシンポジウムで、名古屋市大の杉浦教授の「着床前診断は生児獲得率改善に有効か?」との題名での抄録がありました。
簡単に言えば、「着床前診断(PGD)をすれば、赤ちゃんを得られる可能性が上がるか?」という事です。

結論から言えば、「着床前診断によって出産率が上昇することは期待できない」という結論です。それどころか「高齢不妊女性に対する着床前診断の多数の論文の検討では、むしろ出産率を低下させた」のです。

これは、当クリニックでも、着床前診断の質問のある方に説明していることと全く一致しているので、今回、もう少し詳しく考え方を説明致しましょう。

まず、具体的な数字では、染色体均衡型転座による習慣流産では、PGDを行うと27~54%の出産率と報告されています。一方、均衡転座があっても、自然妊娠による出産率は37~66%(むしろこの方が高いですね)、累積出産率は68~86%であった。したがって、PGDによって出産率が上昇することは期待できない。との事でした。

習慣流産の方が、着床前診断を受けるのを希望されるのは、赤ちゃん(胚)の染色体異常による流産を防ぐ目的です。
今回の例は、両親のどちらかが染色体の一部分が入れ替わっている、均衡型転座を持っているカップルに対する着床前診断の意義について述べています。
染色体の転座があるので、通常よりも、赤ちゃん(胚)の染色体の異常は多くなります。
したがって、その染色体異常のある胚を除けば、流産率は低下します。しかし、最終的に赤ちゃんを得られる率は上昇しないのです。

これはどうしてでしょうか。

実は、着床前診断では、胚盤胞になった細胞を数個はぎ取ってきます。
従って、はぎ取られた胚は、その過程で通常よりも長く外に出されており、また細胞をはぎ取られるわけですからそれだけストレスを受けます。ストレスを受けているわけですから、染色体が正常であっても、検査を受けた胚は、何もされていない胚よりも妊娠率は低下するのです。
一方、染色体が異常な胚は移植されませんから、胚移植あたりの見た目の妊娠率の上昇は期待できるかもしれませんし、(妊娠したら)染色体異常による流産は低下します。
ただし、繰り返しますが、1個1個の正常胚の妊娠率はストレスにより低下するので、そのカップルが最終的に赤ちゃんを得られる確率はむしろ低下するのです。

これらは、染色体異常が起こりやすい均衡型転座のカップルの場合ですが、通常の方が着床前診断で得られる意義はもっと少なくなるでしょう。

着床前診断は、流産率の低下はある程度期待できますが、出産率はむしろ低下する可能性があるものなのです。

 現在の着床前診断は、やはり、致死性の疾患の遺伝があるか、両親のどちらかに染色体に問題があり流産を繰り返す、場合に受ける意義がある、と考えるのが適当でしょう。
また、着床前診断には、そのカップル毎に、日本産科婦人科学会に申請をして、承認が下りた場合にのみ受けられます。現状では、簡単に受けられる状況ではないのです。












2015年3月17日火曜日

子宮内膜を厚くする方法とは?

日本産婦人科医会(ざっくり言うと、開業医が主な会員の産婦人科医の団体)の会報に、山口大学の専門家の教授が、子宮内膜の発育について、教育講演をした内容の紹介がありました。
内膜が薄くなる原因に
1)クロミフェンの使用
2)子宮内容除去術後
3)子宮腺筋症
4)子宮内膜の血流不全
があると、しています。
それぞれの対処方法には、

1)子宮内膜の血流改善としては
①ビタミンE
②Lアルギニン または  バイアグラ膣錠(膣の中に1日2~3回連日挿入)  

2)子宮内膜除去術後
抗酸化剤として、
①ペントキシフィリン(輸入薬)
②ビタミンE
③ビタミンC

3) クロミフェンに対して(40%か方が、内膜が薄くなる)
①クロミフェンを半量にする
②内服を生理1日目から早めに内服開始する (当クリニックでは3日目から)

4)子宮腺筋症
有効な方法がなく、何もしない。

との事でした。

当クリニックでの導入としては、
①内膜が薄い方には、 ビタミンCとD、Eが入ったアシストワンも、積極的に使用してみます。
②バイアグラの膣錠を最近使用することが少なかったのですが、再度、積極的に使用してみます。
③ペントキシフィリンを輸入して準備します。
④Lアルギニンも検討していましょう。
これらは、どの原因の方にも試して良いかもしれませんね。



2014年12月21日日曜日

子宮鏡下手術後の初回人工授精での妊娠例(掻爬手術4回経験例)

今回、子宮鏡下手術後の初回の人工授精で妊娠された方がいらっしゃいましたので、ご紹介致します。
子宮内膜ポリープの手術後の人工授精での妊娠例は特に珍しいことではありません。
しかし、この方は特殊な経過があったのです。すでに、子宮内膜増殖症で4回掻爬手術を受けていたのですね。
今までの検査と治療で、不妊治療が可能と判断されて当クリニックにいらっしゃいましたが、当クリニックで再度子宮鏡をしてみると、写真のように子宮の全面にポリープがありました。最も大きいものは1.5cmのポリープがあったのです。

御本人は、4回掻爬手術を受けていたのに、これだけのポリープを直接見て、戸惑っていらっしゃいましたが、今回、しっかりと子宮鏡下にポリープを見ながらしっかりときれいにすることなったのです。
これだけ多くのポリープがあると、悪性細胞の存在も心配だったのですが、手術後の顕微鏡検査では幸いにも悪性細胞はありませんでした。良かった~。
そして、なんと、その後初めての人工授精で妊娠されました。
着床障害のはっきりとした原因は、このような子宮内のポリープや子宮筋腫などを明確にする事が最も大切なのです。掻爬手術は手探りの手術であり、やはり取り残しが頻回におこります。当クリニックでは取り残しを避けるために、掻爬手術よりも子宮鏡下手術を原則としておこなっています。
また、多発性の子宮内膜ポリープは、かなりの頻度で再発しますので、定期的に子宮内のチェックも大切ですね。
今回は、着床障害についての説明症例が2例続きました。
体外受精などでの反復不成功の方は、子宮鏡も、より積極的に受けてみてはいかがでしょうか。


2014年11月3日月曜日

アメリカ生殖医学会報告(その2)(ダブルトリガーと内膜刺激法)

アメリカ生殖医学会報告です。
これらは学会報告ですので、まだ評価が明確ではないものもあります。
あくまで、参考情報の一つとしてお考え下さい。

1)未熟卵の多い方には
O64 成熟卵が66%未満(2/3未満)の患者に、ダブルトリガー法をおこなった。
 採卵40時間と34時間前(当クリニックでは17時と23時ぐらい)にHCGを注射する。
 ダブルトリガー法と、HCG単独法での成熟卵子は、平均7個と3.6個と、成熟卵が約2倍に増えた。
 MⅡ期胚の率は、78.4%と52.4% 最良好胚は3.1個と0.8個だった。

 ダブルトリガーの方が、単に成熟卵子が増えるだけではなく、良好胚も増える可能性があると思います。未熟卵が多く、卵子の質が良くない方には、ダブルトリガー法も試しても良い方法かも。
 早速、当クリニックでおこなってみましょう。


2)子宮内膜刺激法(さっか法)
O87 IVF失敗対象者に、子宮内膜バイオプシーをおこなった場合、胚移植の11~15日以内に、つまり同一周期におこなった場合に、最も妊娠率が高くなるとの結果を得た。
 当クリニックでも、すでに行っていたのですが、オリジナルの方法は、胚移植周期の高温期に行っています。今までは、主に前周期に行っていたのですが、今後は、前周期高温期と、月経時期と
当クリニックでも比較してみる必要がありますね。まだどの時期が最も良いか、また、刺激法自体が有効なのかも、まだ明確ではないと思いますが、皆さんのご協力もお願い致します。