2014年5月31日土曜日

43歳、採卵9回・胚移植11回経験後の、AIH妊娠例

先日、43歳で、9回採卵8回胚移植の方が、体外受精の合間の人工授精で妊娠され、卒業しました。40歳から不妊治療を開始し、人工授精は11回目での快挙でした。
この方は、過去に、新鮮胚移植、凍結胚盤胞移植で2回の妊娠・流産を経験し、部分胞状奇胎も乗り越えての妊娠でした。
自然妊娠の可能性も考えて、昨年には卵管造影検査もおこない、可能性を信じて体外受精の合間には、粘り強く、タイミングや人工授精もおこなっていたのです。
決してたくさんある例ではありませんが、このような例は珍しくはありません。
皆さん。体外受精を始めると、それ以外では妊娠できないと、体外受精以外の可能性を捨てていませんか。卵管が通っており、精子がある程度あるならば、自然妊娠や人工授精の可能性も併せて考えてみては如何でしょうか。
体外受精か、それ以外かの「二者択一」ではなく、「体外受精も人工授精も、タイミングも」の、可能性を少しでも上げるために、すべてをおこなう考えもあり、当クリニックではこのような治療方針を皆さんにお勧めしています。

2014年5月30日金曜日

産婦人科内視鏡学会 技術認定医リスト

本日、産科婦人科内視鏡学会から、学会雑誌が届きました。
私も学会の技術認定医(子宮鏡)ですので、しっかり?と学会誌の内容を確認しました。こんな事を書くと少し後ろめたい気持ちになるのはなぜかしら???ごめんなさい。

さて、今回は4月12日現在での、技術認定医の最新リストが載っていました。学会のホームページは本日付ではまだ更新されていないようですが、公表されていますので皆さんも技術認定医のリストを確認可能です。日本産科婦人科内視鏡学会のホームページで是非確認してみて下さい。
内視鏡学会の技術認定医のハードルは結構厳しいのです。もちろん、このリスト以外の先生で技術経験共にすばらしい方もたくさんいらっしゃいますが、このリストは、平均以上の技術のある先生方の目安になります。参考にしてみて下さい。
少し説明しますと、技術認定医にも2種類あります。腹腔鏡の技術認定医と、子宮鏡の技術認定医です。腹腔鏡の技術認定医はちょうど400名いました。子宮鏡の技術認定医は40名でした。両方持っている医師もいます。ほとんどが腹腔鏡であり、子宮鏡技術認定医は少ないですね。
私のクリニックで説明しますと、高橋ウイメンズクリニックでは現在腹腔鏡手術をおこなっていませんので、腹腔鏡の医術認定医はとれないのです。過去にたくさん腹腔鏡手術をしていても、現在、十分な手術数を実際におこなっていないと、認定医の更新は出来ないのです。したがって、内視鏡学会の技術認定医は、実際に現在手術を日常的におこなっていることを証明しているのです。
私のクリニックでも、子宮鏡の手術を年間100例以上おこなっていますが、子宮内膜ポリープの手術では技術認定されません。粘膜下筋腫、子宮中隔切除術、子宮内腔癒着剥離術、などの難しい手術が50例以上ないと更新できません。これは結構大変なのですよ。
千葉県では、子宮鏡の技術認定医は、私を含めて2名しかいません(もう一人は佐倉市の病院の先生)が、全校的に言えば、2名の子宮鏡技術認定医のいる県は、東京、大阪、神奈川についで、4位タイの県です。(絶滅危惧種ではありませんよ~)
また、千葉県の腹腔鏡の技術認定医は10名います。全国的には、9位タイの人数です。トップ3はやはり、東京、大阪、神奈川でした。
このような面からも、千葉県の産婦人科のレベルは、全校的にも上位にあるのかな~と思っています。維持することが目的ではありませんが、今後も技術認定を更新していけるように、健康に注意してがんばります!



2014年5月21日水曜日

開院15周年のご挨拶と御礼

高橋ウイメンズクリニックは、この4月で開院15周年を迎えました。
また、昨年には妊娠10,000例を達成しましたが、これだけ多くの方が妊娠され、私もそれだけ多くの方に喜びを共有させて頂き、むしろ私から皆様に心より御礼申し上げます。

日々の診療に明け暮れていると、15年の月日はあっという間でした。私の幸せなことは、日々同じようなことをやっているようで、患者さんはひとりひとり異なるので、全く同じ事をしているわけではないのですね。日々は常に変化してきた職場でした。

1999年に開院したときには、まだ不妊治療、体外受精のことをみなさんに伝える手段が少なく、開院1週間では、外来患者がたった2名でした。今では、このようにインターネット、SNSで、様々な情報を発信できることを考えると、隔世の感があります。
また、体外受精をお勧めしても、まだ皆さんの中には抵抗感が強いようでなかなか体外受精へのステップアップをためらうことが多い状況でした。今では、むしろ体外受精をご希望なさる方が多くなっています。
したがって、診療の力を集中するのは、開院当時は一般不妊治療であったのですが、今では体外受精へ力を集中する必要性が高まってきました。
現在、体外受精を希望される方を受け入れるだけで、クリニックの治療能力いっぱいであり、皆様にもご不便をおかけしています。
しかし、最近では新しいスタッフも増員、スピードアップもされつつあり、徐々に受け入れ数も拡大しつつある状況です。
ホームページのトップページも更新しましたので、是非ご覧下さい。

5月に入り開院16年目がスタートしました。昨年中には、JISARTの審査、ISOの更新審査も無事すみ、今年には外部からも新しいコンサルタントも迎え、今までとは異なる次元へのステップアップを目指していきたいと考えています。
皆さんとの喜びをこれからも共有できることを望んでいます。あらためて、皆さんと一緒に目標に向かってがんばっていきましょう。

2014年5月18日日曜日

メラトニンについて(2014年5月)

今回、メラトニンのパンフレットの改訂をおこなうことになりました。
当クリニックでは、メラトニンも積極的に不妊治療に使用しているのですが、この機会に、メラトニンについて再度整理をしてみました。
改めて調査、勉強してみますと、非常におもしろいホルモンですね。すでに私も飲んでいるのですが、不妊症にとどまらず、アンチエイジングにも積極的に使用する価値はありそうです。

メラトニンとは?
脳の松果体から分泌されるホルモンで、夜に高くなり、日内リズムや睡眠と関連し、リラックスさせる作用があります。アンチエイジングや不眠症、時差ぼけの解消にも利用されます。
アメリカでは、メラトニンはサプリメントとして市販されていますが、ホルモン剤なので日本では市販されていません。当クリニックでも、信頼できるところを通じて輸入して使用しています。

用法用量
日本人には1日1~3mgが適当なようです。翌日にふらつきや頭痛がある場合には減量する方が良いでしょう。
就寝30分~1時間前(または午後10時頃)の服用です。

注意事項
①妊娠中または授乳中、14歳未満の方は服用しない。
これは「危険」と言うよりも、「はっきりしていない」という理由のようです。また、若年者は十分メラトニンが分泌されているから必要ないということでしょう。
②夜以外には使用しない。
昼に使用すると、日内リズムがむしろ崩れてしまうからです。
③服用後に車の運転や機械の操作などをしない。
服用すると眠くなりますから、車の運転や機械の操縦は危険です。

副作用
副作用が皆さん気になるところでしょう。
しかし、調べた限りにおいては、特に問題になる副作用は無いようです。また、一部の睡眠薬のような、依存性も無いようですね。
ただし、翌朝にふらつきや頭痛が残る場合には減量した方が良いでしょう。効果は個々人で異なります。
一方、ひどいアレルギー症状,自己免疫疾患の方 、リンパ腫,白血病等免疫系にガン症状のある方は、使用を避けるようにと記載されていることもあります。免疫機構を刺激し症状を悪化させる恐れがあるからだとの理由です。ただし、その報告は調べた限りでは見当たりませんでした。これは、メラトニンが免疫系をアップさせるから、自己免疫疾患を悪化させる可能性があるとの「推測」によるものかもしれません。
確認はしていませんが、「オランダで、1日75mgのメラトニンを1400人の女性に最高で4年間投与したところ、健康を害するような結果はみられませんでした。FDA(日本の厚労省のような薬品管理局)は、メラトニンが米国内で一般に発売されて2年以上経った段階で、懸念すべき副作用は1件も報告されていないと発表」という情報もありました。 

メラトニンと不妊治療
不妊治療では、抗酸化作用やミトコンドリアの影響が期待され、卵胞内で卵子を保護し、卵子の質の改善(変性卵の減少)や、受精率・妊娠率の上昇が報告されています。
メラトニンは、卵胞液内にも認められて、卵子を保護していると考えられています。2013年の生殖医学会でも、メラトニンの投与で、採卵率、成熟卵、受精率の上昇を認めて、妊娠率は2倍になったとの報告がされました。(採卵率40%未満、体外受精での受精率35%未満、ICSIでの受精率40%未満の方が主な対象でした)
今後も、卵子の質が不良の方、未熟卵が多い方、受精率が低い方には、積極的に使用していきたいと思います。
体外受精の場合には、1~3ヶ月前から、採卵までの服用です。

アンチエイジングとメラトニン
今回は、アンチエイジング、認知症の予防、発がん抑制などの不妊治療以外の事も多く学びました。
メラトニンは、核やミトコンドリアのDNA保護作用も持ち、免疫系の活性化、発がん抑制作用、抗老化作用、血中脂質改善作用、うつ症状の改善、肌を若く保つ、などが報告されています。
美肌にも良いそうですよ!!
メラトニンと寿命の関連を示す臨床研究はありませんが、マウスの実験では最長20%も寿命が長くなった報告もあるようです。 男性の年齢による性欲減退にも効果があるようです。

睡眠障害とメラトニン
年齢を重ねるごとにメラトニンの分泌は減り、70歳を超えると、夜間のメラトニンの量は昼間と同じくらい少なくなるそうです。このため、老人は朝が早く、夜中に何度も目が覚めてしまうので、皆さんのご両親が眠りが浅いようならば、メラトニンをお勧めしても良いかもしれませんね。 
中年以降の睡眠障害には非常に効果的と考えられています。まさに私にぴったりのサプリメントですね。
メラトニンはアルコールに溶けやすく、併用すると体内吸収性が良くなり効果が強力になるので、アルコールとの併用は避けた方がよいですね。
 少量のメラトニンは睡眠を促進し,時差ぼけを和らげるので、時差ぼけ予防の薬としても試用されているようです。時差ぼけが発生する海外旅行にも積極的に利用しても良いでしょう。
メラトニンを使用し十分に睡眠をとれたなら,起床時は爽やかで活力に溢れて、気分も良くなると思います。

抗がん作用とメラトニン
最近では、メラトニンがNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性化などの免疫系を活性化し、発ガンを抑える作用などの腫瘍増殖抑制作用、血管新生抑制作用、DNA修復作用もあり、抗腫瘍効果や抗癌剤の毒性を減少させる効果もあることから、抗癌剤治療との併用で、治療成績の向上、生存率の改善、副作用の軽減の報告も数多くあるようです。抗腫瘍効果を目的とした場合の投与量はに20mg/日としている文献が多いとのことです。

神経系疾患とメラトニン
認知症、アルツハイマー、パーキンソン病の予防、症状軽減への効果も報告されています。 まさに私にぴったりかも?
2003年の日本医科大学の試験ではアルツハイマー病患者 にメラトニン3mgの投与で睡眠から覚醒リズムの改善が見られたそうです。また、アルツハイマー病やパーキンソン病は動脈硬化とも関連しているようですが、メラトニンは動脈硬化、生活習慣病などの予防に役立つと考えられています。

ここまで見てきましたら、メラトニンは万能薬のように感じると思います。しかし不妊治療もアンチエイジングも、メラトニンのみで十分な効果が得られるものではありません。一つの手段ではなく、様々な手段を組み合わせて、総合的に対応していくものであることをご理解下さい。
以下の点にはご注意とご理解を頂きたいとお思います。

サプリメントの限界と使用の責任
サプリメントは薬品ではありません。時に、医師の処方した治療薬を服用せずに、ご自身の判断でサプリメントを薬品代わりに摂る方がいらっしゃいますが、これは間違った考えです。サプリメントは「栄養補助食品」であり、治療薬の代わりにはなりません。サプリメントに過剰な期待はしないほうがよいでしょう。
また、しばしば、ご自身で購入されたサプリメントについて、大丈夫かどうかコメントを求められますが、残念ながら医師はコメントは出来ないのです。サプリメントは薬品ではありません。したがって様々な企業が様々なサプリメントを作っているのですが、その品質は保証されているものではありませんし、試験や調査もほとんどされていないのです。薬ではないサプリメントに対しての信頼おけるデータがそもそも無いので、医師も一つ一つの商品に対してコメント出来ないのです。自己購入のサプリメントについては、自己責任での使用になることをご理解下さい。



2014年5月12日月曜日

148回 関東生殖医学会 報告(0PN,1PNの胚盤胞の検討)

一昨日の、5月10日(土)に、関東生殖医学会が東京、四谷でおこなわれました。これは毎年1回、関東地区の各大学が持ち回りで主催している地方部会です。
今回は、千葉大学が主催であり、、私も久しぶりの演題発表をしてきました。
今回は、普段よりもたくさんの30題の演題発表があり、とても盛り上がった学術講演会だったと思います。地方部会ですので、若手の発表が多く、非常に勢いのある発表を感じてきました。一方、私もいつの間にか、ベテランの域になっていることを実感しましたが、がんばっている人を見ると、やはり刺激を受けますね。
さて、私の発表ですが、0PN、1PNという、受精がはっきりしなかった胚で、胚盤胞まで成長した場合には、どうするかは今まで明確ではなかったのですが、他に胚盤胞がない場合に使用することがあります。これらの胚を移植して、妊娠成績は、2PN胚と同じような妊娠率、流産率でした。8年間で21人のお子さんが生まれましたが、染色体異常と考えられるような問題はおこりませんでした。やはり胚盤胞まで成長した胚は選ばれている胚と考えられます。受精が明確に確認できなかったのは、単に、受精した前核が見える時間が観察した時間とずれていたことによると考えられました。今後は、このようなズレは、タイムラプスなどで連続して観察できれば、ある時点で認めると思いますので、安心して移植できる証拠が得られてくるでしょう。ただ、すべての施設でタイムラプスが導入される事は難しいと思いますから、胚盤胞まで成長した場合には、胚移植可能であることの証明としては、大切なデータであると思っています。


 
関東生殖医学会後の運営スタッフの集合写真です。
パワーを感じて頂けますでしょうか。
私も顔の大きさ(顔が広い、訳ではない)では、トップスリーぐらいにはパワーを出しているようですね。(残念~~!)

2014年4月の妊娠実績

一昨日の、関東生殖医学会の準備などがあり、ブログの更新が出来ませんでしたが、4月の妊娠数をご報告致します。

2014年4月の妊娠数の報告をいたします。

1)4月の妊娠数 81例       今年の累積妊娠数 291例   全累積妊娠数 10,611例

 ART妊娠    56例    (内訳:  IVF 19例  ICSI 8例     凍結胚移植 29例) 

 AIH妊娠    11例     

その他一般不妊治療      12例  (タイミング、クロミフェンなど) 


 2月76例、3月81例、4月79例と妊娠数は安定しています。   
 
 
 

 今後は、また新しいことを、徐々に導入していく予定です。
 5月からは、エンブリオスコープという新型培養器も積極的に活用していきます。
 また、皆さんにもご紹介していきます。
 


2014年5月2日金曜日

ネット情報:角化症治療薬のエトレチナート(チガソン)の服用による先天異常症例

インターネットで、目にとまりましたので、注意が必要と思いご紹介します。

 皮膚科領域の、角化症治療薬のエトレチナート(商品名チガソン)の服用で先天異常症例が国内2例目におこったとの報告がありました。
 1985年に販売開始され、当初より催奇形性への注意を喚起されていたようです。
 今回の報告は、先天性魚鱗癬を患っていた20歳代女性。胎児機能不全の診断で緊急帝王切開にて出産。出生児には、耳介変形、両肩関節や肘伸展拘縮、両母指や第1趾の低形成などの先天異常が見られたようです。
 
 中外製薬は、チガソンには重大な催奇形性があり、副作用の発現頻度が高いため、他の治療が無効な重症例にのみ使用するよう呼び掛けており、特に妊娠する可能性がある女性には原則投与しないよう求め、処方ごとに催奇形性について説明し、書面で同意を得ることを勧めている。
 本剤の服用時だけでなく、服用後も男性は6カ月、女性は2年間にわたり避妊を徹底するよう求めているとのことです。

 一般的に、今販売されている薬は、抗癌剤などの特殊な薬剤以外は、ほとんど奇形をおこすようなものはありません。しかし、この薬は、女性では使用終了後も2年間、男性でも6ヶ月の避妊期間を求められております。
 妊娠の可能性があるときには、絶対に使用してはいけないほどの薬ですね。
 



 

凍結胚移植、2月の妊娠率57%のうれしさ(ラボスタッフのがんばりを褒めてあげて下さい)

先日、2月の凍結胚盤胞移植の成績の概略報告を受けました。
54周期の凍結融解胚盤胞移植をおこない、すべて1個胚移植です。
平均年齢(凍結時)は36.5歳で、妊娠率は31妊娠、妊娠率(着床率)は57.4%と堂々たる成績です。流産率はわずか3.2%でした。6周期連続の妊娠など、非常に良い成績でした。
短期間の成績に一喜一憂してはいけないのですが、実際にはそんな私なのです。
凍結胚盤胞移植の妊娠率は50%以上を目指しているのですが、全年齢層においては、それほど簡単な数字ではありません。ラボのスタッフのがんばりを褒めてあげて下さい。
1ヶ月の成績ですが、うれしかったので、小さく報告させて頂きました。
このような月が少しでも増えるように、1人1人への工夫や、日常的な積み重ねをまた続けていこうと思います。最後まで読んで下さりありがとうございました。