2013年2月28日木曜日

AMHが0.1未満での双胎妊娠例

AMH<0.1で双胎妊娠の例。
先日、AMH<0.1で、体外受精をすでに5回受けた39歳の方が、自然妊娠されたことを紹介致しました。その後の検査で、この方は双胎妊娠であることが判明しました。
この周期は、左右の卵巣から1個ずつ卵胞発育がありましたうえ、超音波検査上も、2卵性の双胎であると考えられます。
現在は2児とも心拍を認めていますが、当クリニックでも、AMH<0.1での双胎妊娠は初めてのことです。このようなこともあるのですねえ。私も驚きました。
卵胞が出来るうちは、がんばることも大切なのだと思います。
ただ一方で、このような方は本当に稀であり、治療の継続と終了の判断は非常に難しいと感じるのが毎日の診療でのことなのです。

2013年2月27日水曜日

大腸全摘出術後の体外受精での出産報告

大腸全摘出術後の体外受精・胚移植で出産された方が、出産報告に来院されましたので、皆さんにもご紹介致します。
当クリニックには、大腸全摘出術後の方が数人通院中ですが、この方も、潰瘍性大腸炎で大腸全摘出術を受けていらっしゃいました。
体外受精(顕微授精)での化学的流産1回、臨床的流産が1回ののち、5回目の採卵周期で妊娠、帝王切開で出産されたのです。頻回の体外/顕微授精、妊娠初期の切迫流産も乗り越えての出産であり、今後は健やかに成長されることをお祈り致します。
一般的には、大腸全摘術を受けると、卵管水腫などがおこりやすいのですが、この方は卵管水腫がなく、体外受精でも、複数回妊娠されて、無事出産されました。妊娠前には、イレウス(腸閉塞)で入院もされましたが、腹腔内手術の方が妊娠されるのは、やはり体外受精の治療的パワーを感す。
今後も、合併症のある方の妊娠・出産例をご紹介してまいります。

2013年2月22日金曜日

風疹対策、抗体16倍はワクチンが必要です。

2013年、2月1日付けで、日本産科婦人科学会から風疹対策の告知がありました。

厚労省からの風疹感染に関する通知の要旨は以下からみれます。
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20130201.html


不妊症治療の方には、要約すると以下のごとく、抗体検査とワクチン接種を考えてください。

今年の風疹は、昨年の9倍であり、8割が男性である。

夫からの風疹の感染が多く、夫への風疹ワクチンは有効である。

風疹抗体が16倍以下では、再感染の可能性があり、ワクチンの接種が必要である。

妊娠を考える方は、風疹抗体検査を夫婦で受けておくことが必要でしょう。


33歳で、AMHが約0.3(47歳相当)の2名

最近、33歳の方で、AMHが0.3ぐらい(47歳相当)の方が、2名いらっしゃいました。
FSHも12~13程度に上昇しています。卵巣機能の低下は間違いないようですが、特に卵巣の手術歴はありませんでした。
このように、若くても、卵巣年齢が高い方は、しばしばいらっしゃいます。
今後は、不妊症治療には、全員にAMHを検査すべきであると考えさせられる例でした。
ブライダルチェックにも入れた方が良いとも考えましたが、もしそれで悪かったらば、むしろ結婚の妨げになる可能性もありますから、やはり結婚後にはかるべきでしょうか。

単角子宮、抗精子抗体陽性の方の出産報告

最近、単角子宮、卵管閉塞、抗精子抗体陽性の方が、出産されたことの報告と、お二人目を希望されて凍結胚移植にいらっしゃいました。

この方は、抗精子抗体や卵管造影検査も受けずにクロミフェン、クロミフェン-AIH6回、を2年間受けていましたし、その後体外受精での採卵を2回、胚移植を4回受けていらっしゃいました。(妊娠歴なし)

当クリニックでは、状態を再評価するために一通りの検査をおこなったところ、
1)単角子宮
2)卵管閉塞
3)抗精子抗体陽性
が新たに判明しました。

以上を踏まえて、
方針は
1)治療は体外受精
2)単角子宮であるので、胚移植は1個ずつ(前医では2個移植の時もありました)
としました。

治療と結果は
1)ロング法で排卵誘発し、8個の採卵、1個胚移植、3個胚盤胞凍結。妊娠するも8週で流産。
2)凍結胚盤胞移植し、帝王切開で出産。

単角子宮の流産率は、およそ50%程度と高くなります。これは手術で治療は出来ません。したがって、妊娠を繰り返すのみとなります。
ただ、流産率は高いのですが、単角子宮を知らないままに、妊娠出産されている方もかなり多いのです。単角子宮でも、諦めずにがんばっていきましょう。
一方、単角子宮で多胎になると、早産の可能性が高くなると考えられますので、体外受精では胚移植数は、1個にすべきでしょう。

やはり、不妊治療、体外受精前には、しっかりとした検査を受ける必要があると考えさせられた例です。

2013年2月21日木曜日

AMHが0.1未満で、5回の体外受精後の39歳の自然妊娠例

 AMH<0.1で、5回の体外受精後の39歳の自然妊娠例。

AMH<0.1で、前医(2カ所)で4回の体外受精を受けていた39歳の方が、今回当クリニックで自然妊娠さAMHれました。私にとっても様々な教訓がありましたので、ご紹介致します。
前医で受けた直近2回の体外受精では、HMG注射による排卵誘発でも、1個と2個の採卵数で、2回とも受精卵が得られずに中止となっていました。

当クリニックでの検査と治療
1)AMH<0.1、FSH:20.01と、卵巣の機能はかなり低下。・・・DHEAも低下気味なので、DHEAを補充。
2)卵管造影検査・・・当クリニックでは、体外受精をされる方でも子宮卵管造影検査をお勧めしています。卵管水腫の有無の確認と、自然妊娠の可能性を少しでも上げることが目的です。
この方は、3年前に受けていました。今回の検査では左卵管に抵抗がありましたが、卵管の開通を確認しました。
3)活性酸素・酸化ストレスは強度であり、ビタミンDも低下していたので、マルチビタミン2倍量と、高濃度ビタミンDを投与。
4)血管年齢は56歳相当と動脈硬化があり、EPAも低下していたので、動脈硬化予防と血液の流動性改善のために、EPA投与と遠赤外線サンビーマー施行。

上記治療を並行しておこなった上で、
1)2012.9月 当クリニックでの初回の体外受精施行。
 誘発方法は、マイルド法 クロミフェン+HMG4日間
    採卵数4個。胚盤胞が1個得られ、胚移植するも妊娠せず。
2)2013.1月 自然周期で、左右に15mm前後の卵胞を認め、この周期に自然妊娠。
 まだ胎嚢を認めたまでですが、今後の良好な経過を祈っているところです。

医学的には、このような自然妊娠は偶然でもおこりうると考えられます。
しかし、
1)体外受精が主な治療でも、卵管造影検査をおこなっていたことが、今回の自然妊娠に繋がったと考えています。実際に、当クリニックでは、他院で体外受精で妊娠されない方が、卵管造影検査後に妊娠することは珍しくはないのです。
皆さんは、体外受精を始めたらば、体外受精以外の治療法では全く妊娠しないと考えてはいませんか。体外受精が最終手段と決めつけていませんか。少しでも妊娠の可能性が上がるように、広く可能性を求めてみては如何でしょうか。
2)以前の体外受精で、HMG注射でも1個と2個の採卵数が、今回マイルド法で4個採卵でき、(妊娠は出来ませんでしたが)胚盤胞移植も出来たことは、偶然でしょうか。それとも、様々な補充療法やご本人のサンビーマーなどの地道な努力によると考えますか?
実際には、卵子の増加は不可能ですが、利用できる卵子の底上げの試みは様々あります。本来は、卵巣機能が低下する前に治療を急ぐことが良いのですが、AMH<0.1でもこのように自然妊娠もあり得るのです。
皆さんのご参考になりましたでしょうか。



 
 

2013年2月11日月曜日

流産後の妊娠時期はいつが適当?

少し古いデータですが、流産後の次回の妊娠まで、何ヶ月待てば良いかのデータがありましたので、皆さんにご紹介致します。論文は2010年英国医師会誌(BMJ)という権威のある雑誌で、スコットランドの調査です。
初回の流産後、6ヶ月以内の妊娠は、6~12ヶ月の妊娠に比較して、流産、子宮外妊娠、帝王切開、早産、低出生体重児、などの比率が低かったとの結果です。
結論として、流産後にはすぐに妊娠しても問題ないとの結論でした。

今までのWHOの推奨では、流産後は6ヶ月以上の間隔を置くようにされていますが、これらの基準は開発途上国の女性を対象に考えられます。日本のように妊娠年齢が高い場合には、6ヶ月以上待つのは、デメリットの方が大きいと考えるべきでしょう。

流産後2~3ヶ月待てば妊娠を試みて良いという明確な証拠は今までなかったのですが、今回の結果はすぐに妊娠して良いとの証拠になります。
ただし、「流産後すぐでも良いのか、1ヶ月待てば良いのか」は明確にはなっていません。
当クリニックでは、1回生理が来ればすぐに妊娠することをお勧めしています。

2013年2月2日土曜日

2013年1月の妊娠数

2013年の1月の妊娠数は60名でした。昨年1月を上回る妊娠数であり、今年の滑り出しの成績は良好だと考えています。これもスタッフの協力、新規に導入した最新式(と考えている)超音波装置、設備を増強した胚培養室などの賜だと(都合良く)考えているのです。
現在の妊娠の内訳は、体外受精・凍結胚移植による妊娠が2/3以上であり、高度の不妊治療を必要とする方が年々増加している状況です。
昨年は1年間で785例の方が妊娠されましたので、今年は何とか年間妊娠数800例を目指したいと考えております。
先日も、減量をしっかりされて妊娠し、出産された方がお子さん共にクリニックに報告にいらっしゃいました。診療している我々もその姿を見ると、とてもうれしいですし本当に元気が出ます。今年も一人でも多くの方が妊娠されるよう、共にがんばっていきましょう。