2014年8月26日火曜日

5回目の採卵周期で妊娠した44歳の方。大切なのはやはり良い胚を得ることです。

8月は妊娠が好調であることはすでにご紹介致しましたが、44歳の方が、5回目の採卵周期で妊娠されて胎児心拍が確認できました。少しカルテを見て振り返ってみました。

最初の2回の体外受精では、クロミフェンーHMGで排卵誘発し、3個と2個の採卵数でしたが、卵子の状態は必ずしも良くない状況でした。
AMHは0.26と低く、最終的には、アシストワン、メラトニン、DHEAを半年以上使用しました。
さらに今回は、HMGアンタゴニスト法で5個採卵し、エンブリオスコープも使用。
結果的に、2個初期胚移植して妊娠。2個の胚盤胞も凍結保存できました。
胎児心拍も確認され、今後の経過が順調であることを祈るばかりです。

今回、表面上はエンブリオスコープが有効であったように映ります。
現在、当クリニックでは、エンブリオスコープは2台あり、同時に12人の方への対応が可能です。通常5~6日培養するので、平均すると1日2~3人が受け入れ可能人数となります。現在は、主に反復不成功の方で、5個以上の採卵数の方への使用を提案しております。
しかし、空いていれば、反復不成功出ない方でも、年齢の高い方にも、早期に使用をしても良いかもしれません。空いていれば対応致しますので、ご希望の方はお尋ね下さい。

ただし、エンブリオスコープですべて解決できるものではありません。「培養液や培養器が良くなることで、胚の状態が良くなる」訳ではないのです。「培養状況が良くなると、胚の状態が悪化しにくくなる」のです。
基本は、良い胚をどれだけ採れるかによります。したがってこの方も、基本は良い胚を得るために、どのような対策をとったかによると考えています。
大切なのは、体調を整えて、アシストワンやメラトニンなどを少なくとも2~3ヶ月とり、運動などで血液循環をよくする事などを心がけることをお勧め致します。禁煙や肥満解消もとても重要なのです。
この方も、採卵時の血圧の上昇は、徐々に低下もしていました。
単に妊娠が目標なのではなく、出産まで考えるならば、全身の状態まで考える事が良いのでは無いでしょうか。むしろそれが妊娠への最も有効な対策だと思います。

2014年8月25日月曜日

南房総不妊研究会第1回の講演を何とか務めてきました!

先日の8月19日に、亀田総合病院で第1回南房総不妊研究会が開催され、 私と大阪の松林秀彦先生が講師として招かれ、講演を行ってきました。
亀田病院のリプロダクションセンターの高木清考先生が今年赴任されて来て、初めての研究会であり、恥ずかしながら、初演を務めさせて頂いた次第です。
私の講演内容は、不妊治療の一般的なお話を、高橋ウイメンズクリニックでの経験や治療成績をまじえて行いました。 若い産婦人科医や、小児科、新生児科の先生方、近隣の産婦人科の開業医の先生方がたくさん集まって下さいました。皆さんありがとうございます。
日本人の性交渉が、他の国を引き離しダントツに少ないことは、すでに生活習慣病であることや、AMHの値が残っている卵子数を示しており、卵巣年齢の指標として使用されていることに、皆さん大変興味を持って頂いたようです。
千葉県でも、生殖医療をしっかりとおこなって下さる若い医師がどんどん出てきているのですね。みんなパワーがありましたよ~。
(翻って、すでに私は老兵かな?毎日まだまだもがいているんだけどな~)
今でも毎日勉強することもあり、まだまだやらなくてはならない事があるので、まだ前進、進歩している途中だと考えています。これは苦しくもあるのですが、幸せなことだと思っているのです。
 
 
 


今年3回目の1日10例の妊娠(2014年8月)

今年3回目の、10例の方が1日に妊娠が判明致しました。41歳と42歳の方が6名いらっしゃいました。このような日は、とても心も体も好調に感じるのです。疲れをあまり感じません。

ベースとしては、今のクリニックの各部門がしっかりと仕事を遂行していることが挙げられるのですが、8月に入ってからのエンブリオスコープの積極的な運用の成果か、今月は、46歳の方の妊娠、44歳の方の妊娠が4人、43歳が4人、42歳が4人と、41歳が5人と、40歳を超える方の妊娠の成績が目立っているように感じます。まだエンブリオスコープや、ワンステップ培養液の成果は明確には判っていませんが、できるだけ早く集計して、皆さんにもご報告致します。
こんな日が、またすぐに来てくれるように、またがんばっていくぞ~!!

2014年8月24日日曜日

境界型糖尿病がわかり治療後に妊娠/卒業したART反復不成功だった例

40歳直前、前医で、AIH10回、採卵4回、中止2回、胚移植5回の方が、1回の完全周期で妊娠/卒業されました。

「完全周期」とは最近使われ始めている言葉です(今後変わるかもしれません)が、1回の採卵で得られた胚のすべての成績を議論する考え方です。

BMI(体重÷身長(m)の2乗が約28(25未満が標準体重)だったので、75GTTという血糖の精密検査を行いました。その結果、境界型糖尿病(糖尿病の一歩手前:糖尿病予備軍)である事が判りました。糖代謝改善薬であるメトグルコを使用して、HMG注射での排卵誘発を行い、10個採卵(過去最多数)の採卵でき、1個新鮮胚移植。1個の凍結胚盤胞を得られて、その移植で妊娠され、卒業されました。前医では、誘発方法は、飲み薬+HMG注射での排卵誘発でしたので、今回は異なるHMG-アンタゴニストを採用しました。

1)BMIが25以上の方には、血糖の精密検査をお勧め致します。
2)不妊治療での糖代謝の管理は、糖尿病の管理とは異なります。不妊治療では、糖尿病の悪化をさせないことが目標ではなく、妊娠率を上げて、流産率を下げて、元気なお子さんを得られることが目的になります。したがって、糖尿病管理よりも、より積極的に介入する必要があるのです。この方のように、減量と、メトグルコを積極的に使用することで、良好な卵子を得られて、妊娠率が上昇することを期待するのですね。
3)反復不成功の場合には、再評価をして、今までとは異なることも取り入れては如何でしょうか。



AMH<0.1、8回の採卵、9回目の胚移植で妊娠された例

「AMH<0.1は、卵子が0だといってるのではない。」 先日の臨床懇話会での名古屋の浅田先生のAMHの講演にもありました。このブログでも多くのAMH<0.1での妊娠例をご紹介してきましたが、様々な参考になる事が多いので、今後も引き続きご紹介していきます。

今回の方も、AMH<0.1であったものの、5個採卵でき、3個顕微授精し、2個胚移植して妊娠、卒業されました。
この方は、来院時40歳以上であり、来院時のAMHは1.76でした。すでに前医2施設で、5回の採卵、顕微授精と6回の胚移植を受けていました。確か精子の状態は良くないものの、過去にAIHでの妊娠、流産の経験がありました。
当クリニックのHSGで左卵管閉塞の診断。当クリニックでのAIH1回目で化学的流産。3回目で妊娠、8週で流産。
 AMH<0.1になり、体外(顕微)受精を再開。3回目の採卵、胚移植で、妊娠卒業。

この方の経過には、いくつかの考えさせられる点がありました。
①男性因子があるものの、過去にAIHでの妊娠歴があり、すでに顕微授精を6回受けていましたが、当クリニックの人工授精で2回妊娠反応が出ました。
 体外受精、顕微授精は必ずしも最終手段ではなく、今回のように顕微授精を受けていた状態でも、人工授精での妊娠の可能性があるのですね。体外受精の合間には、タイミングや人工授精も無駄ではないのですよ。少しでも妊娠する可能性を高めるために、幅広く治療法を考えては如何でしょうか。
②当クリニックでの採卵数は、4個(HMG誘発)、1個(自然周期)、5個(HMG誘発:この方の最も多い採卵数)でした。
 AMH<0.1でも卵子が複数とれることは良くあるのです。排卵誘発方法も、決めつけるのではなく、超音波検査による初期の卵胞数もみて、判断しては如何でしょうか。
③効果があったかどうかは明確には判りませんが、ビタミンC、D、DHEHsが低かったので、アシストワンと、DHEAを3ヶ月以上使用していました。
 やはり同じことを繰り返すのではなく、少しずつ変更して様々なことを試してみることも大切でしょう。

2014年8月17日日曜日

全期間のページビュー履歴50万件突破の御礼

本日気がついたのですが、ブログを開始した2011年12月から、全期間のページビューの履歴が506,418件と、50万件を超えていました。最近は、1日500~1,000件、月に2万件のページビューがあります。
これがどれほどのものかはよく分からないのですが、知り合いに聞くと、そこそこの数なのだそうです。「継続こそ力なり」ですと、元気づけられました。

いつも掲示板やブログを観て頂きありがとうございます。ここに御礼申し上げます。

皆さんが、私のクリニックのホームページやブログを観て下さっていることが判ると、とても励みになりますね。掲示板は週2回、ブログは不定期ですが少なくとも週1回は皆さんに情報を提供する事を心がけています。
ブログを開始してもうすぐ3年になります。
特に皆さんにご紹介するような趣味もない私なので、ほとんどが不妊治療の事ばかりの堅い話ばかりですが、それも一つの特徴と考えて、今のスタイルを続けていきたいと思います。時に感覚のずれたジョークには、ご辛抱頂ければ幸いです。
これも私の悲しい性なのですが、すぐに目標を勝手に立ててしますのですね。次は100万件だ~。って、いつも自分で自分の首を締め付けてしまい、後で、「しまった~。やるんじゃなかった~」と、あまり意味の無いことにまで、目標を考えてしまう自分が残念~。
まあ、こうゆうものは、ある程度の勢いも必要でしょうか。「継続の力なし」(最初はこう打ち間違ってしまいました)では困ったものですから。(最近は打ち間違いが多くなっているような気がして、自分でも不安だな~)
お後がよろしいようで。(意味不明!!)最後はいつもぐだぐだだ~。
「臨床懇話会セミナーの帰りの列車の中で」2014年8月17日

不妊治療2014臨床懇話会セミナー(その3)AMHアップデート

AMHについては、名古屋の浅田先生がやはり第一人者ですね。

今回の講演で印象的な項目を列挙します。

・AMHは妊娠率とは関連しない。妊娠率と関連するのは年齢である。
・AMHがほとんど0でも、卵子は残っています。今の検査では感度の問題があり、最低値は0ではなく、0.1未満なのです。

・肥満女性は、AMHは低下する。
・チョコレート嚢腫のある女性は、AMHは低い傾向にある。

・AMHは個人差が大きく、きれいに年齢と関連はしない。AMHは、その変動も少なくないので、わずかな変動に臨床的な意義を見つけようとするのはあまり意味が無い。
・AMHの変動は、誤差は±15%程度あるのです。

・AMHが低い場合には、平均的な方と比較すると早期に閉経するが、その差はおよそ3歳程度であると推測される。
・AMHが、5を超える場合には、PCOSと考えても良さそうだ。

不妊治療2014臨床懇話会セミナー(その2)根拠に基づいたART最適医療

国際医療技術研究所の荒木重雄先生の、データに基づいた講義はいつも感動なのです。

印象に残る項目を、ご紹介します。

・1日1単位(12g)を超えるアルコール、男女の喫煙、カフェインの摂取は、ART(IVF・ETなど)の成績を低下させる。(やはり生活習慣は、妊娠に影響するのですね)
(・カフェインの摂取は、妊娠率には影響を与えない、とする報告と、悪影響を与えるとする報告が混在しています。当クリニックでは1日2杯程度のコーヒーは問題ないと考えています)
・体重(BMI)は19~30の範囲が望ましい。痩せすぎも太りすぎも妊娠率は低下するのですね。
・43歳以上の女性には、ARTは勧められない。(医学的には、43歳以上の方は明らかに成績が低下するので、体外受精ももうお勧めする状況ではない、と考えられています。日本での補助金もこの考えに沿っているのでしょう。やはり年齢が最も重要であり、比較的高齢の方は、治療を急ぐ必要があるのですね)
・子宮内膜が5mm未満で胚移植をしても妊娠は望めない。(一般的には7~8mm以上が理想的とされます。6mmでも妊娠例もあります。5mm未満の場合には、またの機会にするべきでしょう)
・凍結融解胚移植では、自然周期とホルモン補充周期では、同等の成績が得られる。
・2個を超える胚移植をすべきではない。
・2個の胚を移植する場合には、2個の最良胚盤胞を移植してはならない。(日本では原則1個の胚移植ですが、35さい以上や反復不成功例には2個の胚移植も許容されます。しかし、良好の胚盤胞は2個移植するべきではないとの意見が一般的です。当クリニックでは、胚盤胞移植はほぼ100%1個移植にしています)
・37歳未満の女性では、初回の完全ART周期(初回の採卵でとれた胚すべて)では1個移植にするべきである。
・40~42歳の女性では、初回の体外受精から2個移植を考慮しても良い。
・不妊女性には風疹ワクチンの検査をしておくべきである。ワクチン接種後は少なくとも1ヶ月は避妊すべきである。(日本では接種後2ヶ月ですが、海外では1ヶ月で良いとされることも多いのです)
・IVF患者には、HIV、B型肝炎、C型肝炎の検査をおこなう必要がある。
・不妊期間が長いほど、ARTでも妊娠率は低下する。
・採卵数が多いほど妊娠率は上昇し、生児出産率も上昇する。(やはり採卵数は多いほど、妊娠出産率は上昇するとの考えが一般的なのです)
・ARTの回数と共に、成績は低下し、4回目には0.55倍(つまり半分程度に)に低下する。
・BMI(体重÷身長(m)の二乗)が25以上(肥満)の場合、体外受精での、妊娠率は低下し、流産率は上昇する。
・大部分の女性で、ARTが不成功に終わっても、自然妊娠の可能性をのこしており、自然妊娠する例もある。(当クリニックでも以前から皆さんに説明しているように、体外受精をしていても、併せて、自然妊娠も含めて一般不妊治療もおこなってきましょう)
・ロングプロトコールとアンタゴニスト群では、出産率に差は無い。
・ロングプロトコールは、アンタゴニスト群より妊娠率は高い。しかし、低反応のグループでは、差は無かった。一方、OHSSはロングプロトコール群で多かった。したがって、ロングプロトコールは、OHSSのリスクが低い女性に用いるべきである。
・ロングプロトコールは、ショートプロトコールよりも妊娠率は高かった。低反応の女性には、ショートプロトコールが勧められる。
・クロミフェン周期と自然周期では、クロミフェン周期の方が妊娠率が高かった。
・低反応に対する成長ホルモンは、有意な妊娠率の向上は得られていない。
・自然周期では、刺激周期よりも妊娠率は低いことをカップルに十分説明する必要がある。
・初期分割胚移植では、1個胚移植よりも、2個移植した方が妊娠率は上昇した。一方、胚盤胞移植では、2個移植と1個移植では妊娠率に有意なはなかった。(したがって胚盤胞移植では、1個ずつの移植が適当であると思います)
・2個胚移植をした場合には、多胎妊娠が上昇し、障害児や周産期死亡率のリスクは上昇する。(したがって、「原則1個の胚移植」は正しいと考えられます)


さまざまな論文に、様々な結論があり、正反対の結果の論文もたくさんあります。また常識と考えられたことが徐々に、否定されることも良くあることです。
1個の論文で、それに振り回されることなく、しっかりと診療の方針を担当医と相談して「選んでゆく」ことが大切だと思います。
荒木先生は、いつも膨大なデータを出してくるので、ついて行くのも大変なのです。夏ばてがもっと進んでしまいそ~。




不妊治療 2014(産婦人科臨床懇話会セミナー)参加報告(その1) 男性不妊の治療

今年の夏は、学会、セミー、講演会が立て込んでおり、夏ばて気味なのに、勉強をする機会が多く、アップアップの状態です。
8月16日(土)、お盆ですが、今年はクリニックを休まずに診療しました。お盆にもかかわらず、いつもと同じように皆さんが通院されていました。
10月のアメリカ生殖医学会(ASRM)に参加する予定なので、それが今年の私の夏休みのつもりです。やっぱり、学会参加を絡めないと休めない自分の性格が情けないですね。

さて、20年ほど前から続いている臨床懇話会の、2年ごとの不妊治療の1泊2日の勉強会です。
これは毎回、その道のエキスパートが講演して下さる、とても密度の濃い物なのですね。

私は、今回は男性不妊の講演の司会を任されました。
順天堂大学、泌尿器科専任准教授の辻村 晃先生の非常に興味のおもしろい講演でした。

男性不妊に対する治療では、当クリニックでも、マルチビタミンのアシストワンを採用しているので、その関連で興味を特に持てました。アシストワンは、女性だけではなく、男性不妊にも十分使用できる内容だと感じました。

当クリニックでは、男性に対する治療法として、
①補中益気湯+ビタミンB12
②アシストワン    を主に使用しています。
今までは、それぞれ別に使用していましたが、それぞれ機序が違うので、今後は、この2種類を同時に使用しても良いですね。

アシストワンの作用としては、
①ビタミンC
通常精液内に高濃度に存在し、精子運動率の改善に関与。1日 2,000mg(アシストワンでも1日2,000mgが標準量です)
精子濃度は1430万が3280万に増加、運動率は31%が60%に上昇、正常形態率は43%が67%に改善しました。精子の正常形態率を良くする治療薬はなかったので、その目的にビタミンC は一つの対策として重要な意味があるかもしれません。
②ビタミンE
 精子の酸化的障害を防御し、精子の運動性の維持に関与する。
 1日150~300mgで、25~45%の有効率。 アシストワンは標準量で1日300mgのビタミンEが摂取可能です。
③コエンザイムQ10
 CoQ10を単剤で1日200mgの6ヶ月投与で、運動率が33%が39%、直進性が10%が15%に改善したとされます。
アシストワンではCoQ10は1日100mgですが、一般的には体格を考えると日本人には海外の薬剤量は多いので、100mgが適切であると考えています。CoQ10の上限は、厚労省も決めていませんが、業界内では300mgを上限の目安としているようです。
④Lカルニチン
 
Lカルニチン1日2gで総運動精子数が、560万が900万に増加したとの報告があります。アシストワンでは、1日1gですが、CoQ10 と同様に日本人にはこれで十分と考えています。厚労省の摂取目安量の上限も1,000mgとされています。
⑤その他
亜鉛の単独使用は、その効果は不明とのことでした。亜鉛を66mg葉酸を5,000㎍6ヶ月使用すると、精子濃度が増加した報告がありますが、亜鉛(厚労省の目安は30mg)も葉酸(厚労省の上限目安は1,200μg)もすごい量ですね。海外の量をそのまま当てはめることは避けた方が良いようです。
私は、微量元素を多くとりすぎることには慎重に考えています。
⑥補中益気湯
 精子濃度は32~70%、運動率は22~63%の治療効果でした。


2014年8月10日日曜日

8月からの体外受精、その他の変更点のご案内(エンブリオスコープの運用開始)

暑中お見舞い申し上げます。
暑い日が続きますが、皆さんお変わりありませんでしょうか。

さて、夏ばて気味の私ですが、先日、思いがけず、ベストドクターズの認定を頂き、いつまでもバテてはいられないので、気を引き締めて、8月からいくつかの変更、新規のプロジェクトを進めたいと考えています。

1)まずは、新型培養器(インキュベーター)、エンブリオスコープの運用を本格稼働致しました。これは、受精卵を一つ一つカメラで観察しているので、今まで観察の度にインキュベーターの外に出していたのですが、インキュベーター内に入れたままですむので、胚にそのストレスがかからなくてすむのです。インキュベーターの外に出すと、酸素濃度(空気中の20%酸素濃度は胚には害になるので、5%になっています)、温度、などが急速に変化するので、胚には良くないのですね。
今回、エンブリオスコープが2台、準備も整いましたので、運用を始めました。1台で6人分まで培養が可能ですので、当クリニックのエンブリオスコープの容量は、同時に12人分までとなります。
主に、反復不成功の方や、胚の状態が良くない方で、原則として胚が5個以上の方が、対象になります。
1個の専用の培養プレートが必要なのですが、1個のプレートで12個まで培養可能です。使用料金は3万円です。原則として5~6日間培養を継続できますが、必要に応じて、2~3日目で培養中の1~2個の胚移植をする事も可能です。

 
 
2)次に、体外受精の料金や注射薬の料金を改訂致しました。
エンブリオスコープの導入に伴い、新規に3万円の使用量を新設しました。
一方、注射薬の料金も変更し、一部は料金が安くなっています。
 
3)高濃度のマルチビタミン、「アシストワン」が、ネットでも購入できるようになりました。入手がしやすくなりましたので、是非ご利用下さい。また、すでに使用されている方には、使用感の感想のアンケート集約にご協力をお願い致します。ご協力頂いた方には、御礼の品をご用意しております。アシストワンは、男性不妊にも適応があります。是非お試ししてみて下さい。
 
4)ビタミンDをより積極的に測定をおこない、ビタミンDの補充も積極的におこないます。
 
5)アシストワンや、その他の抗酸化物質の医学的な検討をおこないます。女性だけではなく、男性の方にも対象を広げております。採血や体調の変化などに、ご協力をお願い申し上げます。
 
 
 


排卵誘発剤とがんリスクに関係なし(欧州ヒト生殖医学会報告より)

今年は欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)には行けなかったのですが、本日、メディカルトリビューンでその報告がありました。
1)「排卵誘発剤とがんは増加しない」アメリカで1万人を30年間の追跡した報告です。クロミフェンと、子宮内膜がん、卵巣がんの関連は無いとの結論でした。また、hMG、FSHはクロミフェンに比較して新しい薬なので、その数は少なかったが同様に、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、との関連はなかった。
一方で、不妊治療をしても妊娠しなかった女性のがんのリスクは1.98倍と約2倍のリスクであったそうです。がんリスクと不妊症が関係している可能性があるとの見方でした。

2)また、卵子提供でのIVFでは、妊娠高血圧がのリスクが3倍になるとの報告もありました。卵子提供を受ける方は年齢が高いのですが、年齢を修正しても、自己卵子での妊娠のかたと比較して、リスクが3倍であるとの結論でした。
この報告では、高血圧危険因子(肥満や糖尿病)のスクリーニングや、早期治療の介入が必要との見解だとのことです。
当クリニックでも、体外受精の反復不成功の方には、糖尿病検査や、血圧が高めの方には血管年齢も調べています。やはり「不妊症と高血圧になりやすい体質には関連がある」と推測しています。今後も今まで以上に、糖尿病と血管年齢を調べていきたいと考えました。
アンチエイジングの考え方をより積極的に取り入れていくことが、徐々に明らかになっているように感じています。

ビタミンDの重要性と正常値とは?(受精着床学会参加報告)

先日、新宿で受精着床学会報告がおこなわれました。
その中のシンポジウムで、習慣流産の方に対して、ビタミンDがどのように関係しているかの講演がありました。
ビタミンDが不足すると、免疫の拒絶が高くなり、自己抗体(抗リン脂質抗体、抗核抗体、抗PE抗体など)の陽性率も、高かったと報告されました。したがって、原因不明の習慣流産の方には、ビタミンDが新しい治療薬になる可能性が指摘されました。
また、ビタミンDが不足すると、妊娠糖尿病の発生も上昇する、胎児発育が遅れる、出産後の成長も悪化する、との報告もあります。
ビタミンDが低いと、体外受精の妊娠率が低い報告も数多くあります。
結論から言うと、ビタミンDは妊娠前から出産まで、生殖のすべての過程において重要な働きをしていると考えて良いでしょう。
当クリニックでも、体外受精の反復不成功の方には、ビタミンDを測定して、低い方にはビタミンDをお勧めしていました。しかし、今回のシンポジウムの講演を聴きますと、それでは不十分であると感じました。
今後は、当クリニックでは、ビタミンDは、不妊治療の最初の検査時に測定し、不足している方には積極的にビタミンDをお勧してまいります。

実際にビタミンDを測定してみますと、8割以上方が30ng/mL 未満です。これは最近、日光を避ける方が増えていることが大きな原因と考えています。実際には15分ほど日光に当たれば、十分なビタミンDが産生されるそうですが、実際にはそれで日光にあたる方はほとんどいないようです。そうすると、サプリメントを積極的に妊娠中でもとっていくことをお勧めすることになるのです。
実際には、日本人のビタミンDの正常値は明確にはなっておらず、30ng/mL以上が理想値、20~30は低下(不足)状態、20未満はビタミンD欠乏症、とされる事が多かったのですが、この値は欧米での値をそのまま当てはめていたのですね。
しかし、本日、メディカルトリビューンの記事にあったのですが、骨代謝学会、内分泌学会、厚労省研究班での「ビタミンD不足、欠乏症ガイドライン」策定でも、この基準を軸に検討されているようです。やはり、日本でも、この値を基準に考えても良いと考えられます。
日本でのビタミンDの検討はまだ多くはないのですが、当クリニックでも今後は、より積極的にビタミンDも測定していきますので、皆さんのご理解とご協力もお願い致します。


表情のない自分取り写真は、全くおもしろくないですね。
反省して、次からは何とか致します。

2014年8月7日木曜日

アンチエイジングと生殖医療ページの更新

先日、高橋ウイメンズクリニックのホームページの「アンチエイジングと生殖医療」を更改しました。
皆さんも、是非、観てみて下さい。

アンチエイジングで大切なのは、生活習慣・食生活・運動です。
生殖医学にもこれらは重要なのですが、ご自身のアンチエイジングにも大切なのです。
生殖医療に特化した方法があるのではありません。
全身のアンチエイジングへの取り組みが、生殖能力も上昇させることになるのですね。

私も気をつけているのが、
1)体重管理・・・以前は体重が100kgに到達したときには、高血糖、高コレステロール血症、高血圧であり、立派なメタボ体質でした。おしりを拭くことがだんだん困難になり、指がつったことがショックで減量を開始しました(って、作っとるやろ~?)
2)睡眠・・・以前は眠りが浅く、いつも悪夢に悩まされていましたが、今はメラトニンを利用しています。
3)運動・・・ジョギングなど、走るだけに時間を割くことができない正確なので、今はクリニック内を走っています。採卵や胚移植で、階段を駆け上がるダッシュを1日10本やると結構しんどいのです。駆け上がった直後は、患者さんへの説明が息絶え絶え!しばしば説明が判らないとのクレームが出ます(単に呂律が回っていないだけだろ、との意見もあり)
4)サプリメントの摂取。ただし、これが最重要ではなく、補助的な考え方です。以前は様々なサプリメントを多種類使用していましたが、多種類過ぎて面倒になり、今は、マルチビタミンのアシストワン、エパデール(EPA製剤)、乳酸菌製剤を使用しています。

皆さんも、生殖医学のみならず、今後の人生のために、アンチエイジングをご利用下さい。

7月の妊娠数、暑中お見舞い申し上げます!

暑中お見舞い申し上げます!
皆さん、お変わりありませんでしょうか。
私は、この2週間の酷暑でバテバテです。
どうも今年は疲れがとれないなと思っていたら、やはり酷暑であったようで、周囲の方も疲れ気味のようです。
さて、ブログも途切れがちなことの言い訳をしても始まりません。

今年の夏は、うれしい?ことに、講演依頼が3件も入っています。
私に振ってくるとは、先方もかなり困っているのかもしれません。これを断っては男が廃る?(単に、二度と話が来なくなるだけか、、、、)
がんばってネタを探さねば!
いつも、笑いを追求してしまい、医学的なことは少ない自分の講演内容に、そんな医者がいても存在意義はあるかな?と考えて、半分諦めています。今更自分のスタイルは変えられませんよね~。

さて、7月の妊娠数が出ました。
2014年7月の妊娠数

7月の妊娠数 81例       今年の累積妊娠数 527例   全累積妊娠数 10,850例

                  今年ART妊娠 380例(72%)   一般不妊治療 147例(28%) 

ART妊娠    64例    (内訳:  IVF 23例  ICSI 10例     凍結胚移植 31例) 

 AIH妊娠    12例     

その他一般不妊治療   5例  (タイミング、クロミフェンなど) 

妊娠数は、今年2番目に多い月でした。AIHも、IVFも、ICSIも、凍結胚移植も、偶然にもすべて2番目タイに多い月です。特徴は無いのですが、すべて平均以上に妊娠したことが特徴でしょうか。
夏ばてに負けずに、この勢いを持続するぞ~。(実際は夏ばてで、アヘアヘですが、、、)

2014年8月6日水曜日

高用量マルチビタミン「アシストワン」のネット販売が開始されました!

皆さん、8月1日より、当クリニックで採用している、高用量のマルチビタミン「アシストワン」がネットでも入手可能となりました。

今までは、当クリニックに通院中の方のみに販売していたのですが、評判が良く、様々な方からお問い合わせがありました。
今回、やっと準備が整いましたので、皆様にご報告申し上げます。
(有)千葉アンチエイジング研究所からの販売になります。

ホームページはhttp://www.chiba-aa.com/です。

この中で、アシストワンの開発ストーリー、苦労、特徴などを載せていますので、是非ホームページを訪れてみて下さい。
現在、中国での食品の安全性に関しての信頼が崩壊しています。
アシストワンの原材料の選択には、コストよりも安全性を最優先しており、今回の事件を見ると、やはり不妊治療に使用するサプリメントであり、最優先で安全性にこだわったことが、正解であったことを実感しているところです。
また、高橋ウイメンズクリニックのホームページでも、アンチエイジングのページを更新しましたので、そちらも見て頂ければ幸いです。