2012年3月12日月曜日

卵子が少ないときの顕微授精は有効なのでしょうか?

先週、受精着床学会主催の勉強会がありました。
卵子が1~2個などと少ない場合には、顕微授精(ICSI)を選択している施設は少なくありません。
以前より、私は精子が正常ならば、卵子が少ないとの理由で顕微授精をすることに疑問を持っていました。
しかし今回の講習会で、精子が正常である場合に、卵子が少ない場合の通常の体外受精と顕微授精の受精率に関しての調査結果の報告がありました。その中では、顕微授精と通常の体外受精の受精率は同等で、決して顕微授精の受精率が高くなる様ではないようでした。
また、顕微授精は通常の体外受精より2~5%程度は妊娠率が低下する結果も認めます。したがって、精子が正常の場合、卵子が少ないことで顕微授精をおこなう理由はほとんどないと考えられます。
この調査結果には非常に感動しました。さすがは、Hウイメンズクリニック(関西)のST先生です。
当クリニックの顕微授精の比率は、およそ50~60%です。H]ウイメンズクリニックも、現在、顕微授精の基準を明確に定めたことで、顕微授精の比率はおよそ50%程度に低下したとのことです。
皆さん、顕微授精は受精しにくい状況で受精させる手段であり、妊娠率を上げる手段ではありません。すべて顕微授精にすることが妊娠率を上げる方法、ではないのです。最近は安易に顕微授精を勧める傾向がある様ですが、考え直すべき時の始まりの時期かもしれません。

2012年3月1日木曜日

クルーガーテストの信頼性?

精子の精密な形態検査をクルーガーテストと言います。通常は、クルーガーテストでの精子正常形態率は15%以上だとされることが多いようです。3%未満だと、受精率が低くなるので、顕微授精を考慮する必要があるとされます。
しかし、これは絶対的なもではありません。ある方には、採卵日のクルーガーテストで1.1%でしたので、顕微授精をお勧めしました。しかし、最初なので、ご夫妻は通常の体外受精をご希望し、実際に6個中5個が受精分割し、妊娠に至りました。
精子はかなりばらつくものであり、ましてや採卵日でない時の精子のクルーガーテストを参考に顕微授精をするかどうかを決めることは出来ません。
またクルーガーテストが悪くても、卵子や精子数に余裕があれば、スプリット(体外受精と顕微授精を半々ずつおこなう)などを試しても良いと思います。
精子も卵子も、人間の体もいつも一定ではないのです。検査で決めつけずに可能性をよく考えて対策を進めてみては如何でしょうか。