2016年5月31日火曜日

不育症Up to Dateシリーズ(4)

不育症シリーズ(4)です。
「産科と婦人科」2016年5月号を参考にしてますが、このブログでは、私なりの勝手な解釈で説明していますことをご了解下さい。このシリーズは今回で最終です。なんとか読み切りました。ありがとうございました。

プロテインS欠乏症 (日本人は1~2%)
先天性の血栓性素因(つまり血栓ができやすい)方
プロテインSは、血栓を防止する作用があるので、これが少ないと血栓ができやすく、血管が詰まりやすくなるのです。したがって胎盤の血管が詰まり、流産もおきやすくなるのです。

Ⅻ因子欠乏症
不育症外来では、Ⅻ因子活性60%未満の方は約18%と、多いようです。初期流産の原因として考えられています。
抗PE抗体陽性で、Ⅻ因子欠乏不育症患者さんには、アスピリン単独での妊娠成功率は65%、アスピリン+ヘパリン注射では成功率93%と、併用療法が良い結果でした。
抗PE抗体単独陽性では、必ずしも流産の原因とは言えないようで、流産を繰り返す場合にのみ治療の適応であろうとしています。念のための治療としては、アスピリン程度でよいかもしれませんね。

その他、黄体機能不全、高プロラクチン血症、甲状腺機能異常についても記載がありましたが、それぞれ通常の対応をすれば十分であると思います。

血液凝固異常の場合には、基本的には、低用量アスピリン(バイアスピリン)とヘパリン注射が使用されます。しかし、その開始時期は必ずしも明確ではありません。今回の特集でも、この件に関しての記載はありませんでした。
当クリニックでは、妊娠してからアスピリンを開始しています。ただし、ARTで妊娠する可能性が十分期待できそうな場合には、(不妊治療の一環として使用することもあるのですが)妊娠前からアスピリンを投与することもあります。使用終了時期は、妊娠28週までとされていますが、以前は34~36週ぐらいまで使用されていましたし、本当はその方がよいと思っています。「28週までで十分だから」という理由ではなく、製薬会社が責任を逃れるために、根拠も無く妊娠28週以降は禁忌という 添付文書が付きました。妊娠28週でアスピリンを終了する産科医が多いのは、この添付文書に沿って使用するしかないからなのです。
ヘパリン注射は、当クリニックではおこなっていませんが、心拍が確認されてからの使用を目安としています。しかし、これも各施設により異なります。妊娠したらすぐに開始する施設もあります。当クリニックでは心拍を確認してから紹介するので、必然的にヘパリン開始は、心拍確認して転院してからの使用開始になります。








2016年5月29日日曜日

不育症Up to Dateシリーズ(3)

不育症シリーズ(3)です。
「産科と婦人科」2016年5月号を参考にしてますが、このブログでは、私なりの勝手な解釈で説明していますことをご了解下さい。

染色体異常

 均衡型染色体異常(染色体の一部が入れ替わる)のカップルが、お子さんを得られる確率は63%、染色体正常カップルは72%であった。
均衡型染色体異常があっても、約2/3はお子さんを得られるようです。


着床前診断(PGD)

セントマザー産婦人科医院からの貴重なデータです。反復流産のある均衡型転座の染色体異常のあるカップル126組で、PGD74組、52組は自然妊娠  を希望しました。

             PGD群      自然妊娠群
初回生産率    38%(14/37)    54%(28/52)  むしろ自然妊娠の方が赤ちゃんを
                                     得られる率が高め  
累積生児獲得率  68%(25/37)        65%(34/52)         最終的に赤ちゃんを得られる率は同じ

生児を得るまでの  0.24回      0.58回      PGDでは、流産の可能性が半分になる印象
流産回数                            ただし、流産がなくなるのではない

妊娠までの期間    12.4ヶ月    11.4ヶ月     PGDで妊娠しやすくなるわけではない

妊娠しない割合   19%(7/37)   4%(2/52)    不育症カップルに、PGD(つまり体外受精を                                                      
                                おこなう)ことで妊娠しやすくなるわけではない

PGDの費用      平均約96万円

 結論として、PGDでは、その後の流産を半分程度に減少させたが、赤ちゃんを得られる確率を上げない、との報告でした。
また、PGDでは、胚から一部の割球をはぎ取ってくるので、体外受精の妊娠率をむしろ低下させる可能があることも記載されていました。これは、以前に私のブログでも大阪のIVFのクリニックからの報告でも紹介致しました。

流産の最も多いのは、偶然おきた胎児の染色体異常です。流産回数が多くなるにつれて胎児の染色体異常の率は低下する(つまり不育症の原因による流産の割合が増える)のですが、2~4回流産したカップルでも、胎児の染色体異常は50%以上でした。
流産胎児の絨毛検査をして、その流産が胎児の染色体異常であった場合には、その次の妊娠では、62%で妊娠は継続するようです。(胎児染色体異常があれば、何もしなくても2/3はうまくいくと言うことでしょう) 一方、産胎児に染色体異常がなかった場合の、次の妊娠の継続率は38%だった。次回のり流産の可能性を推測するための、絨毛染色体検査の意義もありそうですね。
 
不育症に対する着床前スクリーニング(PGS)
胚の染色体をすべて調べて、正常な胚を移植するのですが、2015年4月に日本産婦人科学会が臨床研究を開始することを決定しましたが、まだ実際にはほとんど進んでいないようです。
 学界で認められるのは、まだまだ先の話になりそうです。








2016年5月28日土曜日

不育症Up to Dateシリーズ(2)

不育症シリーズ その2 です。

リスク別の治療法(総論:概略)
<おことわり>
「産科と婦人科」2016年5月号を参考にしてますが、この雑誌も産婦人科学界全体の意見ではなく、また、このブログでは、私なりの勝手な解釈で説明していますことをご了解下さい。

1.子宮形態異常
中隔子宮や双角子宮・単角子宮は、流産率が高くなる。
双角子宮・単角子宮の流産率はおよそ50%ですが、一般的には手術の対象ではありません。半数は出産までいくので、そのままで妊娠に突き進むことになります。
中隔子宮も流産率が上がりますが、中隔の程度にもよるでしょう。子宮中隔は流産防止目的に手術することはありますが、一般的に不妊症の原因ではないので、不妊症の治療目的に中隔の手術をするものではありません。したがってまた、流産を一度も経験していないのに、中隔の手術をおこなうのは、習慣流産予防なのか(不妊症治療目的なのか)を混同せずに、明確に分ける必要があります。
中隔手術は、現在は子宮鏡下手術が主流でしょう。高橋ウイメンズクリニックでも、日帰りで子宮中隔手術をおこなっています。今でも年間数例ずつおこなっており、その後の出産も通常とかわらずにおこなわれることが多いです。

2.甲状腺機能異常
明らかな甲状腺機能異常は、内科を紹介し治療。
潜在性甲状腺機能低下では、チラジンSを処方しますが、このでの著者は、うつ症状が改善したとの印象もあるようです。

3.染色体機能異常
染色体異常は治療できから、との理由で、染色体検査を受けない方も少なくありませんが、不育症の検査では、染色体検査は基本液な検査にあげられます。
常染色体(性染色体以外)は1対(2本)ありますが、染色体異常があっても、2本両方の染色体が異常ではなく、一般的には片方の染色体異常で、もう一方は正常な染色体なのです。
染色体の構造異常をもつカップルの80%が最終的にお子さんを得られているとの報告もあります。
一方、ほとんど流産となるロバートソン転座もあるので、染色体分析も重要な検査の一つです。

4.抗リン脂質抗体陽性
抗リン脂質抗体症候群と判断するためには、12週間あけて、2回以上、陽性である必要があります。偶然の陽性も良くあります。1回で判断をするのは早計です。
2回とも抗リン脂質抗体が陽性の不育症患者さんには、低用量アスピリンやヘパリン注射を妊娠初期からおこなうと、流産率がおよそ1/4に低下する可能性があります。(胎盤の血管の詰まりを予防する目的)
一方、抗リン脂質抗体が陽性でも、必ずしも流産するものではありませんので、治療対象者は、不育症患者さんです。1回も流産していない方に、アスピリン(副作用はほとんどないのでアスピリン程度はしばしば用いられます)やヘパリン注射はやり過ぎかもしれませんね。

5.プロテインS欠乏症
プロテインS欠乏症の治療法は、実際には確立されていません。
まずは検査のばらつきもあり、正常値も検査会社により異なり、再検査すると正常値と異常値が変化することは良くあります。
これも2回以上の検査が必要と私は考えていますが、確認検査をすべきかどうかの基準もありません。
無治療では、生児獲得率が11%、治療群では71%であったとの報告があり、やはり治療をおこなった方がよいとの判断です。
治療法としては、低用量アスピリンと、低用量アスピリン+ヘパリン注射とで効果は、同じであったとの報告があり、著者は、低用量アスピリンで十分であろう、としています。

6.原因不明例
不安の強い方は流産率が高くなります。
したがって、原因が明確でないかたには、不安や焦り、お話をよく聞いてあげて、不安を少なくするよことで、流産率が下がると報告されています。テンダーラビングケア(tender loving care)
流産の不安が強い方は、不育症の検査を受けた方が不安が少なくなる方も多いようです。悩んでいるよりも検査を受けることも、ふあんを下げる方法かもしれませんね。
また、 当クリニックでは、臨床心理士の小倉さんがいますので、カウンセリングを利用しては如何でしょうか。

7.治療をおこなっても流産となった場合
保険外ですが、絨毛染色体分析(赤ちゃんの染色体)をおこなって、胎児の染色体異常があったかどうかで、治療の変更も考慮するとのことです。(ただし、費用は約3~5万円ぐらいです)

今後は、各論で一つずつもう少し詳しく読んで皆さんにお伝えしていきたいと思います。(続けられるかな~ がんばります!)




2016年5月26日木曜日

不育症Up to Dateシリーズ(1)雑誌「産科と婦人科」より

「産科と婦人科」の雑誌で、「不育症Up to Date」の特集をしていました。今回、一通りの勉強をして、私なりの解釈で皆さんにお伝えしたいと思います。
さて、どこまで続けられるでしょうか?私の覚え書き程度とお考え下さい。

不育症総論

1.不育症の定義  厚労省でも、アメリカ生殖医学会でも、現在では、「一般的には2回連続した流産・死産があれば不育症と診断し、原因を探索する。」となっています。
ただし、「連続していること」「子宮内に胎嚢が認められた臨床的妊娠」である必要があります。

一方、習慣流産は3回以上の連続した流産を認める場合に使用されます。

今では、2回流産が連続すれば、不育症の検査をしても良いのです。


2.一般的な流産率:
30~34歳;15%    35~39歳;25%    40~44歳;51%    45歳以上;93%

40歳以上ですと、流産率は50%を超えるのですね。この主原因は、女性の年齢です。


3.不育症のリスク因子

子宮形態異常;7.8%      甲状腺機能異常;6.8%    染色体構造異常;4.6%
抗リン脂質抗体陽性;10.2%    第12因子欠乏;7.2%   プロテインS欠乏症;7.4%
プロテインC欠乏症;0.2%   リスク因子不明:65.3%(つまり、偶然おきた胎児の染色体異常が流産の原因として多い、ともいえる)

不育症の検査をして、異常が見つかるのは35%程度。
ただし、この検査で異常が見つかっても、今までの流産がすべてその異常を示した原因によるとは限りません。「流産で最も多いのは、偶然おきた胎児の染色体異常」なのです。

始まりは本日ここまで。
今後は少しずつ整理していきましょう。

2016年5月15日日曜日

ビタミンDの基準は、やはり30ng/mLで良さそうですね。

本日、メディカルトリビューンという医学系の新聞が届きました。
日本内分泌学会での報告で、ビタミンDの基準値案が提案されたようです。
その基準は、ビタミンD濃度が、30ng/mL以上が十分量
                 20以上 30ng/mL未満が ビタミンD不足
                  20ng/mL 未満は ビタミンD欠乏 とのことでした。

これは、すでに当クリニックでも取り入れている値なのですが、今までは海外の報告を参照して検査をおこない、ビタミンD不足・欠乏状態の方には、ビタミンDをお勧めしていたのです。
実は、まだ日本人の正常値が明確ではなかったのです。今回、やっと日本内分泌学会からも、日本のビタミンDの基準値が示されたのですね。

生殖医学とビタミンDの関係を再度ご紹介します。
1)ビタミンD濃度が低いほど、卵子の減少が早い
2)卵胞液中のビタミンD濃度が高いほど、体外受精の妊娠率が上昇する
3)PCOでは、ビタミンD不足が多く、補充すると排卵しやすくなる
4)ビタミンDが高い女性は、子宮筋腫のリスクが低い
5)妊娠中にビタミンDが不足すると、妊娠/出産でのリスクが上昇する
などです。

ビタミンDは、食事で補充することは難しいようで、1日15分ほど日光にあたれば補充されるようです。しかし実際に日光にあたると、シミ、ソバカスなどのお肌への影響が気になる方が多いですよね。(実は私もお肌が気になっています)
皆さん、不妊治療、妊娠中もビタミンDをしっかり補充して下さいね。
また、葉酸もお忘れなく!


やっぱり喫煙は、精子を少なくする?

喫煙と精液に関連する研究20件(参加者5865人)を用いて、喫煙の精液に対する影響をメタ解析で調査した報告が載っていました。
ざっくり言って、たばこを吸っていると、精子は約1000万、減少する。
運動性は3.5%低下する。
正常形態率は約1.5%低下する
Sharma R et al.;Eur Urol. 2016 Apr 21. pii: S0302-2838(16)30069-0

こうみると、たばこは明らかに精子の状態を悪くするのですが、見た目には思ったほどは、悪化しているのではないのかもしれませんね。
しかし、これは簡便な検査での見た目での評価です。
ご主人がたばこを吸っていると、体外受精での受精能力が1/4に低下するとの報告や、体外受精での妻の妊娠率は半分に低下し、流産率が2倍になる、との報告があります。
喫煙の影響は、見た目の精子の状態が問題なのではなく、その受精・妊娠機能への影響が問題なのだと考える方が良さそうですね

なお、当クリニックでは、男性の診察は、千葉大学泌尿器科教授の市川先生がおこなっています。
現在は、火曜日に加え、土曜日も診療(要予約)をおこなっています。土曜日も診療を開始したので、多くのご主人も通院しやすくなっているようです。不妊治療、生殖医学は泌尿器科でも特殊であり、すべての泌尿器科医が生殖医学に詳しいのではありません。市川教授は、生殖医療専門医であり、生殖医学会の副理事長です。生殖医療に詳しい泌尿器科医ですので、精子の状態が良くない方、ED(勃起不全)の方、射精障害の方、など、是非ご利用下さい。
当クリニックの、アシストワンは、亜鉛やビタミンCも多く、ビタミンB、コエンザイムQ10なども多く
含むので男性にも使用されます。また、補中益気湯などの漢方は、保険も適応されますので、ご利用下さい。薬のみでしたらば、婦人科医も処方致します。

2016年5月6日金曜日

出雲大社への縁の旅。妊娠祈願に行ってきました!

このGWで、所用があって島根県に行ってまいりました。
35年ぶりの、出雲大社、松江城、小泉八雲旧居への再訪問です。前回は、大学時代の貧乏旅行でした。
今回は、昔の記憶を呼びおこしつつの行程です。
出雲大社は縁結びの神ですが、皆さんとお子さんの縁の結びをお祈りしてきましたよ~!出雲大社は「二拝四拍手一拝」が基本なのですね。ぎこちなく拝んできました。
神様お願い致します。(科学に携わるものとしては、いかがなものかと思う方もいるかもしれませんが、少しでも多くの方が妊娠し下さると、私もとてもうれしく、幸福感を感じられるのです。破魔矢と、木札を購入しました。クリニックに掲示致します。出雲大社の棚を作りましょう。パワースポットになって欲しいな~。

 
松江城は、昨年7月に国宝に指定されたそうです。重厚な天守閣でした。歴女らしい女性も少なくなかったですよ。松江の皆さんは、みんなフィーバーだったそうです。がんばれ松江!がんばれ島根!がんばれ熊本!がんばれ日本!
 
もう一つの訪問地は、縁占いで有名な「八重垣神社」でした。右手には、杉から松の木が生えていました。共生のシンボルだそうです。
 
子宝の社にも、お賽銭を出してお参りしてきました。男性器がシンボルでした。皆さんも、ご主人にがんばって頂きましょう。
 

最後は、縁占いの鏡の池です。お札の紙を浮かべて、10円か100円をのせ、15分以内に沈めば、縁が近い、15分以上ならば縁は遠いとのことなのです。たくさんの方が占っていましたよ。
なかなか沈まないからと、10円や100円をもっと乗せて「財力にものを言わす方法」、高いところから強く硬貨を強く落とす「力技」などは、おこなってはいけませんよね~!神様に怒られます。
ちなみに、公式見解上、私はこの占いをおこなっておりません。何のためにおこなっているのか、妻に怪しがられますし、、、、