2013年11月16日土曜日

生殖医学会参加報告(2)ART難治症例に対する戦略

さすがは塩谷先生!
体外受精でも妊娠が難しい方への対策を明確に整理して示して下さりました。

42歳以上の方には、

胚盤胞より初期胚移植の方が良い

顕微授精よりも体外受精の方が良い、

凍結胚より新鮮胚移植の方が良い、

禁欲期間は2日以内が良い

などでした。

体外培養自体、凍結/融解自体がストレスであり、抵抗力が落ちている卵子へ出来るだけストレスをかけない方が良い、との方針なのです。
様々な考えもありますが、私はこの考えを支持します。
今後、当クリニックでもこの方針で皆さんに体外受精の方法を提案していきたいと思います。

2013年11月15日金曜日

2013年生殖医学会学術講演会、参加報告(その1) メラトニンの有効性と認知度の拡大

本日、日本生殖医学会(神戸)に参加してまいりました。
今年も各施設で様々な工夫がなされ、まだまだ様々なことが試されており、今年も収穫の多い学会でした。
今年で目を引いた一つが、アンチエイジング、卵子の老化、酸化ストレスと対策、に関して、様々な視点から取り上げられていることでした。

酸化ストレスと不妊の関係もシンポジウムが開かれ、メラトニンについての効果も取り上げられました。

その中では、反復不成功の方に
メラトニンの投与で、
1)採卵率、成熟卵、受精率の上昇を認めた。
2)妊娠率は2倍になった。
3)対象としては、採卵率が40%未満、体外受精での受精率が35%未満、ICSIでの受精率が40%未満のかたが、主な対象だと考えられる。
などでした。
当クリニックでも、積極的にメラトニンをお勧めしています(私もアンチエイジングで飲んでいますが)が、学会のシンポジウムでも取り上げられたことで、今後はより広く使用されるでしょう。

ただし、使用開始は早いほど妊娠率が高いというデータでした。
したがって、2回不成功例、初回で卵子の質が良くない場合などには、今後、より積極的にお勧めしていく方が良いかもしれません。

2013年11月6日水曜日

10月の妊娠数

10月の妊娠数がまとまりましたので、皆さんにご報告致します。

10月妊娠数    75例      今年の10月までの合計 732例

                       今までの妊娠累計は、10,144例に達しました。

 

ART妊娠    57例        ART累計  477例

     IVF  19例             累計 163例

     ICSI  13例            累計  74例

     凍結胚移植 25例          累計 240例

 

  

  AIH妊娠7例          今年のAIH累計  120例


ここまでの1ヶ月の妊娠巣の平均は73例ですので、安定した妊娠数を継続しています。
一般不妊治療での妊娠数は18例(24%)です。
AIHの妊娠数が平均より少ない分、ARTでの妊娠数は、1ヶ月あたり2番目の多さでした。
特に顕微授精での妊娠数は月妊娠数でトップでした。
凍結胚妊娠と、新鮮胚移植妊娠数はほぼ同等でした。

2013年11月1日金曜日

サンビーマーの再評価、妊娠困難例への効果の可能性

今回、サンビーマーの会社(サンメディカル)と共同で、妊娠困難例に対するサンビーマーの長期使用の効果について検討しました。
サンビーマーは、遠赤外線で1日40分ほどおなかを中心に暖めることで、子宮や卵巣の血流を改善し、体外受精の反復不成功、妊娠困難な方の妊娠の可能性を高めるという考え方です。

その検討の結果、妊娠困難と考えられる方の、7例中4例の方が妊娠しました。

妊娠された4人の方は、サンビーマーをおよそ200日から500日使用していました。
卵子が成熟するまで80日ほどかかりますので、サンビーマーの効果は少なくとも3ヶ月必要と考えられますが、今回の結果からは、妊娠困難例の場合には、半年以上は使用することが必要であることが推測されました。以下の方はすべて36歳以上の方です。

症例1) 前医で顕微授精3回施行し、妊娠せず。2回は顕微授精でも分割停止し、胚盤胞移植できず。
当クリニックでは1回目採卵18個、1個を初期胚凍結(8細胞)したものの、9個の受精卵は胚盤胞まで分割せず。後にこの初期凍結胚を移植後妊娠するも7週で流産。
その後サンビーマーを開始。
サンビーマー使用4ヶ月目の顕微授精では1個初期胚移植し妊娠せず。3個の受精卵は胚盤胞まで分割せず。

サンビーマー使用8ヶ月目に3回目の採卵。2個初期胚移植で妊娠せず。残存2個の受精卵の1個は胚盤胞で凍結。その後の胚移植で妊娠、卒業。


症例2) 当クリニックで3回の顕微授精で受精卵が得られずキャンセル。4回目、5回目の採卵時は受精卵を得られ胚移植するも妊娠せず。
サンビーマーを開始。
サンビーマー3ヶ月後、6ヶ月後の顕微授精では正常胚が得られずキャンセル。

使用開始10ヶ月後の顕微授精では2個胚移植でき、妊娠卒業。


症例3)AMH<0.1、FSH;15 両側卵管水腫。
3回の採卵で、正常受精卵が得られず、胚移植できず。
サンビーマー開始。開始後4ヶ月目の体外受精では受精卵得られずキャンセル。7ヶ月後の採卵で卵子得られず。10ヶ月後の顕微授精では1個胚移植(G3b)するも妊娠せず。 

サンビーマー開始11ヶ月後、自然周期で4個採卵、1個のみICSIし授精、胚移植、妊娠し、卒業。


症例4) リューマチ合併。初回の5個のICSIですべて変性。
サンビーマーを開始。
サンビーマ開始2ヶ月後の採卵では、体外受精で良好胚が1個得られるも妊娠せず。8ヶ月後の顕微授精では2個良好胚移植するも妊娠せず。凍結胚盤胞が1個得られ、胚移植するも妊娠せず。

サンビーマー使用15ヶ月の採卵では、2個胚移植し妊娠。GS確認。胚盤胞1個保存中。


サンビーマーを半年使用していた時点ではサンビーマーの効果の結果が得られていませんでしたが、サンメディカルの協力を得て、継続してサンビーマーを使用して頂きました。

妊娠がかなり困難と考えられる場合には、半年以上の継続を念頭にいれて使用する必要があると考えられました。

サンビーマーを毎日使用することは実際にはレンタルが必要になりますし、
もちろん、これらの方には様々な排卵誘発、サプリメントなども使用しており、「サンビーマーによる妊娠」とは言い切れません。また、学会発表できるまでの検討はしていません。
しかし、サンビーマーの可能性を感じられる結果であったと思います。
今後は、より詳しく検討して皆さんにまたご紹介していきたいと思います。
当クリニックでも、より積極的にサンビーマーをお勧めして行く予定です。

一方、「サンビーマーでなければならない」のではありません。目的は血液循環をよくすれば良いのです。半身浴、ジョギング、早歩きのウオーキング、岩盤浴、レーザー治療など、様々な方法があると思います。皆さんの出来ることで、体を温め、血液循環をよくしてみて下さい。