2014年6月22日日曜日

妊娠中期の妊婦さんの自動車運転で、事故の危険性は約40%上昇する

メディカルトリビューンという医学新聞からの転記です。カナダの調査で、妊娠中期の妊婦さんが自動車運転で、重大な事故の発生する危険性が42%上昇したとの結果でした。その理由についてはこの新聞ではわかりませんが、妊娠すると、反射速度や運動速度が低下する、注意力の低下、疲労感、睡眠不足、などが関係すると考えられます。1日のうちの時間帯では、朝が最も危険性が高いようで、約1.7倍になるそうです。
妊娠しても、運転をしてはならないとは言われませんが、自動車事故の危険性が高くなることを皆さん認識して、注意して頂きたいと思います。

悪性リンパ腫治療後のAIH妊娠

先日、36歳を超える方で、悪性リンパ腫治療後の方が、AIHで妊娠され卒業しました。この方は体外受精を翌月に予定していたのですが、その前周期におこなったAIHでの妊娠でした。
体外受精の前周期には、一般的には排卵誘発剤を使用しません。これは卵子の質の低下や、排卵誘発剤への反応の低下を避けるためです。
一方、人工授精は特に卵巣の反応に悪影響を及ぼすものではありません。したがって、体外受精の合間や前周期に、人工授精をおこなうことは特に問題は無いのです。体外受精を主治療にしていても、卵管が通っていれば、タイミングやAIHも無駄ではないのです。卵管が通っていれば、治療を体外受精に制限するのでは無く、少しでも可能性を高める手段を広くとることも大切だと考えています。皆さんも可能な方はそうされては如何でしょうか。

2014年6月21日土曜日

ご主人が癌治療前後の状態での顕微授精での妊娠例

最近、ご主人が癌治療前後の方の、顕微授精での妊娠例が数件ありました。
1)お一人は、ご主人が白血病であり、治療前に精子を凍結保存していました。白血病治療後には精子は0で、従来ではお子さんは諦めなければならない状況でしたが、現在ではこのようにお子さんを望めるようになってきたのですね。凍結胚盤胞も複数あるので今後も、追加治療も可能です。
2)もう一組のカップルは、ご主人の癌治療との競争の不妊治療でした。ご主人の癌治療の状態が思わしくなく、精子を凍結保存して、不妊治療を急いでいらっしゃいました。様々な困難な問題もあると思いますが、今後良い経過であることをお祈りしています。
顕微授精は不妊医療の幅を広げてくれる技術ですね。

今後、医学的な適応でない、社会的な理由による卵子の凍結保存(例えば年齢の理由による)が、学会でも許容されるようになる方向で検討が進んでいるようです。一方、制度の整備に伴って、精子の凍結保存も今より厳密な手続きが必要になりそうです。
この手続きがまた明確になりましたらば皆さんにご報告致します。

2014年6月18日水曜日

子宮腺筋症が体外受精の妊娠と流産へ及ぼす影響

ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)の雑誌Human Reproductin5月号のからの抜粋です。
子宮腺筋症(子宮内膜症が子宮筋肉層にできた状態)がある場合、体外受精、顕微授精に対して、どれだけの影響があるか、9件の信頼できそうな論文を調べた報告(メタアナリシス)がありました。
9件の研究で、1,865名の患者さんの調査でした。
医学論文は、すべて同じような結果ではなく、子宮腺筋症があっても妊娠率や流産率に影響ないという結果の論文もあります。したがって、一つの論文のみで判断はできないので、多くの論文をあつめて検討する必要があり、この手法をメタアナリシスと言います。

今回の結論として、
子宮腺筋症があると、(腺筋症がない方に比べて)
  体外受精/顕微授精の妊娠率は、28%低下する。
             (つまり妊娠率は2/3程度になる)
                流産率は、2.12倍に増加する。
という結果でした。
結論としては目新しいものではありませんが、多くの論文をまとめて明確にした意義があると思います。
子宮腺筋症の重症度と結果の関連は明確ではありませんが、重症になるにつれて成績も悪化すると推測されます。したがって、腺筋症のある方は、時間が経つにつれて悪化する可能性も高く、成績の低下が危ぶまれます。やはり治療を急ぐ必要があるでしょう。
また、不妊症予防の面からも、生理痛がひどい方は子宮腺筋症の可能性もあり、早期からピルなどを積極的に使用することをお勧めしても良いと思います。

2014年6月8日日曜日

第12回JISARTシンポジウム参加報告

6月7日、8日と札幌で、第12回JISARTシンポジウムに参加しました。
今年は、「これからの生殖医療、新しいチーム医療の在り方」がテーマでした。
実際に、生殖補助医療は、医師のみではなく、培養士、看護師、医療事務の各スタッフが協力して治療に当たる必要がありますが、医療事故防止の面からもチーム医療が必要であることなどが議論されました。







最近の情報ですが、
1)卵子提供などの「特定生殖補助医療」法案は審議中であり、日本でも徐々に卵子提供が認められる方向に進んでいます。
「JISARTは卵子提供をおこなう団体と勘違い」されている方が少なくないのですが、JISARTは生殖医療の質の改善を目指す団体であり、卵子提供を目指しているのではありません。実際には、現在はJISARTでも4施設が卵子提供をおこなっていますが、これは日本産婦人科学会や生殖医学会の公認の元におこなわれています。卵子提供は各施設の考え方によりおこなわれており、高橋ウイメンズクリニックでは卵子提供はおこなっておりません。
2)PGDについて
 着床前診断は、現在、習慣流産の方には認められていません。着床前診断には、学会の許可が必要であり、現在は致死的な重大な遺伝疾患のカップルや、染色体異常のあるカップルに対して認められています。単に習慣流産の方には認められていません。ただし、今後、限定された施設で臨床研究としておこなわれる方向ではあるようです。
3)未受精卵子、卵巣組織の凍結・保存
 癌患者さんなどの、医学的な未受精卵、卵巣組織の凍結保存はすでにガイドラインがあります。
 医学的適応に基づかない(つまり、単に高年齢での卵子凍結など)は、学会が関わることではない、との姿勢のようです。高橋ウイメンズクリニックでは、高齢などによる卵子凍結はおこなってはおりません。


今年は、札幌よさこい祭りの期間中であり、雨模様であったのが残念ですが、初めて生のよさこい祭りも見てきました。若者が団体で一糸乱れぬ、切れのある踊りを披露するのは、とても新鮮で興奮しました。わたしのクリニックの診療もこうありたいと考えるのは、単なるこじつけかな~~。
日々の診療や生活にメリハリをつけることは重要ですね。JIASRTのシンポジウムや学会に参加したり、新しいことを少しずつ取り入れるのも大切なことですね。



JISART(日本生殖補助医療標準化機関)は日本の生殖医療の質を向上させて、患者さんに安心して満足できる生殖補助医療を受けて頂くことを目的に2003年に設立された団体です。
2014年3月現在27施設が属し、関東では8施設、千葉県では高橋ウイメンズクリニックが属しています。JISART施設のある先生が、患者さんのアンケートをとったところ、JISARTについて知っている方が「0」だったとおっしゃっていました。
JISARTのホームページもありますので、是非皆さん一度訪れてみて下さい。
認定施設になるには、かなり高いハードルがあるのですが、大事なことは常に生殖医療の改善を積極的に図っている集団であるということです。皆さんの施設選択の参考にしてみて下さい。
また、今年も若手医師のための「未来を担う若手医師のための生殖医療フォーラム」も予定されています。生殖医療の将来も見据えた活動もおこなっており、高橋ウイメンズクリニックも主催側として参加します。

 
 
 
 

2014年6月7日土曜日

2014年5月の妊娠数

5月の妊娠数をご報告致します。GWがあったのですが、健闘したと思います。

2014年5月の妊娠数の報告をいたします。

1)5月の妊娠数 70例       今年の累積妊娠数 361例   全累積妊娠数 10,681例

 ART妊娠    44例    (内訳:  IVF 9例  ICSI 6例     凍結胚移植 29例) 

 AIH妊娠    12例     

その他一般不妊治療      14例  (タイミング、クロミフェンなど) 


 凍結胚移植、AIH、一般不妊治療は4月と同等でした。今回はGWの影響で、採卵数が少なかったことで、新鮮胚移植の減少がそのまま反映されている状況です。   
 
 
 

 エンブリオスコープという新型培養器も活用始めました。この培養器では、培養液もワンステップ培養液といい、5日間交換を必要としない培養液を使用しているのです。
 培養液もどんどん進歩してきています。
 今後、新しい培養液と培養器のこともご紹介致します。
 

2014年6月3日火曜日

エンブリオスコープのミーティング

昨日、新型培養器、エンブリオスコープのミーティングが羽田空港内で開催されました。
羽田空港は、二つのターミナルに分かれており、反対側の駐車場に止めてしまったために、かなり歩きました。空港全体が把握できなく訳が分かりません。

しかし、不妊治療については時代に取り残されてはいけませんね。
しっかりと、新型の培養器について勉強してきましたよ。
エンブリオスコープは、培養器の中の卵子をだいたい20分ごとに撮影できるので、観察の度に、培養器のドアを開けずにすむのです。したがって、それだけ胚を安定した条件下におけるので、胚盤胞到達率や良好胚の率が高くなると報告されています。
胚を空気中に出すと、その胚自体もその影響を受けると共に、同じ培養器内にあった他の胚も影響を受けることになるのです。出来るだけドアは開けない方が良いのです。
また、胚の分割の状態が動画のようによく分かり、感動的なのです。

今回も様々な施設の工夫などが発表され、非常に参考になりました。
当クリニックでも、現在試験運用しています。
興味のある方は私にお申し出下さい。試験運用中の現在は費用は頂いておりません。
以前の体外受精で、卵子の質が良くなかった方で、試験運用中の今は、卵子が主に10個以上とれそうな方(1枚の培養容器には12個まで入れられます)を主な対象にしています。

1)左側が新型培養器、エンブリオスコープです。


 
2)ユーザーズミーティングの開催されたギャラクシーホールは、羽田空港の最上階にある会議スペースです。


3)皆さん、とても勉強家です。

DHEAとメラトニンのパンフレット

DHEAとメラトニンの新しいパンフレットを作製しました。
卵巣機能の低下している方、卵子の質が良くない方にお勧のホルモンサプリです。
体外受精では採卵前日に終了して下さい。
一般不妊治療では、妊娠反応が出たら中止して下さい。

1)DHEAは、最も多いとされるホルモンで、男性ホルモンや女性ホルモンのおおもとのホルモンです。年齢と共に低下しますが、補充することで、卵巣機能の向上の報告もあります。
当クリニックでは、AMH<2.0(40歳相当)以下の方で、DHEAが低値の方にお勧めしています。


2)メラトニン
 メラトニンは、脳の松果体から分泌される睡眠ホルモンです。
 不妊治療としては、睡眠薬としてではなく、強い抗酸化作用を利用します。採卵の2週間以上前から使用することで、卵胞内の卵子を保護し、質の良い卵子を得られるようになるとされます。
 良好胚、受精率、妊娠率の改善の報告が増えています。
 1日1カプセルを、睡眠30分前頃に服用します。