2012年2月24日金曜日

本日の例と卵子の老化・当クリニックの目指す施設像

最近のブログでは、卵子の老化についてのブログの閲覧が非常に多いようです。やはり皆さん興味があるようですね。今後これについて再度報告をしたいと思います。
本日の診察でも、体外受精が最終手段ではなく、不妊治療の一手段と考えて、広く可能性を考えた方が良かった例がありました。
30才前の方で、他院で1年間に5回体外受精を受けていました。内服薬での排卵誘発が効果なく、HMG注射で誘発すると、卵巣過剰刺激症候群になり、キャンセルになるので体外受精を選択していたようです。
当クリニックでは、HMG注射を少量にするなどして、1~3個の排卵の調整で人工授精をおこない、1回目で妊娠されました。ご本人も驚いていましたが、不妊症治療は「体外受精が最も有効」とも限らないのです。
当クリニックでは、少しでも妊娠の可能性を高めるために、体外受精ももちろん千葉県内では最多数おこなっていますが、それ以外の妊娠も追求しています。
「体外受精だけしか出来ない施設」ではなく、「妊娠に向けて様々な手段がある中で、最も有効な方法を選択する事が出来る能力を持つ施設」を目指しています。最近は体外受精をおこなえる施設は増加していますが、その中身は同じではありません。その選択は、皆さんご自身が良く中身を理解しておこなう必要があるでしょう。

2012年2月23日木曜日

本日感じた事

今日の診療で感じたこと3題。
1)すでに7回AIH後、体外受精胚移植施行するも妊娠せず。次回の体外受精までにとAIHを施行し妊娠。体外受精後に人工授精や自然妊娠も時々あり得ます。体外受精を受けていても、また一般不妊治療をすることも珍しいことではありません。「体外受精は最後の治療だから、体外受精に 行ってしまうともどれないのではないか」と不安がる方もいらっしゃいますが、いまでは体外受精も不妊治療の一手段であり、「最終手段」とも言えない場合もあり得ます。時間(年齢)を重要視して手段を考えていきましょう。

2)腸の疾患で、大腸をすべて切除した方が、手術により両側卵管が閉塞しました。大きな腹部の手術であり、卵管の開通手術は非常に困難・危険であり、体外受精・胚移植をおこないました。ひとり出産し、今回は、凍結保存していた胚で第2子を妊娠。無事誕生されることをお祈りします。このような方には、体外受精が最終手段であり、体外受精・医学の進歩の恩恵を幸運にも受けられた方です。

3)AMHは10月から測定方法が変わりました。以前の値のおよそ8分の1の値になっています。今回、新測定法で、1.0ng(45才相当)と非常に卵巣機能が低下した方に、排卵誘発をしました。ショート法で、HMG300単位を10日間使用。予想に反して10個も採卵できました。1つの検査結果は、絶対正しいとは限らず、他の指標を参考にして挑戦してみることも必要でしょう。

皆さん、1つの証拠、1回のことで、あることを決めつけないで、再検査や別の視点から見ることも必要だと思いますよ。共にがんばっていきましょう。当クリニックでは、相談体制が充実していると思います。臨床心理士によるカウンセリングもご利用下さい。

2012年2月22日水曜日

HMG誘発法のメリット

本日は、ショート法での体外受精・胚移植の36才の方の例をご紹介致します。
卵管癒着と子宮腺筋症があり他院でマイルド法を5回受けて1回妊娠(流産)した方が当クリニックにいらっしゃいました。採卵数は1回、1~2個で、胚盤胞も含めて毎回胚移植は出来ていたようです。
今までとは違う方法を試す目的で当クリニックではショート法を選択しました。採卵数は14個、採卵3日目の初期胚を2個移植し双胎妊娠し心拍も認めました。また胚盤胞も4個凍結保存できました。分娩まではまだ長くこの方が順調に経過することを祈るのみですが、凍結胚も4個あるので、今後の胚移植も容易に可能で、出産後も妊娠希望の場合には36才時の胚なので期待が十分持てそうです。
これは単に一例ですが、結果的には、HMGによる排卵誘発も有効であることを示している例だと思います。ここではHMGによる誘発が最も良いと言うつもりはありません。ただ、マイルド法が万能ですべての方に良い方法であると決めつけては不利になる可能性があると思います。今回のように、若い時の凍結胚がたくさんあれば、若いときの胚での妊娠の可能性も高くなるのです。
当クリニックでは、自然周期法、マイルド法、アンタゴニスト法、ロング法、ショート法、すべてをおこなっています。皆さんは、1人1人条件が異なります。医療すべてがそうですが、一つの治療法ですべての方が治療できるのではないのです。
排卵誘発も、一つの方法がすべての方に最良なものはありません。画一的な治療法ではなく、1人1人の条件を考えたオーダーメードによる誘発が重要であろうと思います。
一つの治療法にこだわりすぎずに、広い視点で治療法を考えてみては如何でしょうか。
これは、不妊治療一般にも言えることですが、体外受精しか治療法がないと決めつけないで相談することも大切だと思います。
ご参考になれば幸いです。

2012年2月16日木曜日

卵子の老化;NHK クローズアップ現代

2月13日の夜、NHKのクローズアップ現代で、「卵子の老化」についての放送がありました。
この中で、杉浦教授は、医師の中では常識であるが、患者さんは「卵子も老化する」と言われると、非常に驚き動揺する旨の発言をされていました。
「卵子の老化」とは、女性の卵巣内の卵子数の低下のみではなく、染色体異常卵の増加(40才以上では、採卵される卵子の少なくとも半数以上が染色体異常)、卵子のエネルギー産生能力(ミトコンドリア機能)などが低下して、年齢と共に妊娠率は低下し、特に40才以上では妊娠しても半数以上が流産になってしまうのです。また、芸能人の方が45才ぐらいで妊娠・出産することが報道されると、簡単にその年齢まで出産できると考えるのは、誤解を招き、不妊治療が送れる原因になり得る旨のお話をしていましたが、確かにあり得ることと思います。
妊娠できるかどうかは女性の年齢が最も重要なのですが、「卵子の老化」について説明をすることをわれわれはまだ十分にはおこなえてなかったのでしょう。
患者さんが「卵子の老化」について聞いて驚いた、との話は、私も考えてしまいました。診察では強調していたつもりでしたが、まだ一般的には伝わってはいなかったようです。今後は、このホームページやパンフレットでも早期から皆さんにお伝えしていくようにしていきたいと思います。

2012年2月3日金曜日

アンチミューラリアンホルモンと実年齢の誤解と不安

アンチミューラリアンホルモンにより「卵巣年齢」が評価できるようになりました。AMHにより、早期に卵巣機能の低下がわかるようになり、治療計画をたてやすくなりましたが、一方で「卵巣年齢」について誤解があり、過剰な不安を持つ皆さんも増えてきました。
AMHは、あくまで残存卵子数の評価をしているものであり、卵子の質を示しているものではありません。したがって、「AMHでの卵巣年齢」が高い結果であっても、流産率が上昇したり、ダウン症などの染色体異常の確率の上昇はしません。この点は心配されないでよいと思います。
実際には、卵子の質を評価する方法はなく、その方の実年齢で推測することになるのです。
ただし、AMHが低く残存卵子数が少ない場合には、AMHが高い方よりも妊娠する確率は低くなりますので、やはり治療は急ぎましょう。
AMHは不妊治療に非常に有用ですので、不妊治療の初期に検査をうけることをお勧めいたしますし、積極的に利用してみては如何でしょうか。