2014年11月24日月曜日

卵管切除側の排卵で妊娠した例がありました!

この間、診療とは直接には関係ない用事がたてこみ、2週間ぶりのブログとなりました。
今年最後の3連休(私には2連休でしたが、、)は皆さんは楽しまれましたか?

今回、卵管切除側の排卵で自然妊娠された方がいらっしゃいましたので、ご紹介致します。
20歳代後半の方で、子宮が妊娠で左の卵管を切除されていました。
卵管造影検査で、右卵管の開通と、左卵管切除を確認しています。
クロミフェンで排卵誘発をしていましたが、左の排卵であったので、通常通りに交渉をもって頂いていました。
生理が来たら体外受精を予定していたのですが、生理が来ないと言うことで来院されたところ、子宮内に妊娠されて、胎嚢も認めました。

皆さん、卵管が切除されていても、反対側の卵管で卵か拾われて、妊娠することは珍しいと思っていませんか?
実は私も、その可能性はせいぜい5%程度だと思っていました。
しかし、今回、調べてみると、最近のデータではもっと多いことが報告されています。

子宮外妊娠などで片側の卵管を摘出した場合、卵巣は残ります。この卵巣から排卵した場合に反対側の卵管で卵子をキャッチする確率はどの程度でしょうか。
この論文では、約1/3の確率で反対側の卵管が卵子をキャッチすることを示しています。

Hum Reprod 2013, 28: 937 (advance access published feb 3, 2013)
1999年~2010年のカルテの記録を検討。子宮外妊娠により片側の卵管摘出術を受け、その後自然妊娠が成立した707名のべ842妊娠を対象。
超音波所見から黄体(排卵後にできる卵巣の変化)が左右どちらにあったかを卵管摘出した同側と対側で調べたところ、摘出側で31.6%(266/842)でした。正常妊娠(32.0%, 246/769)と子宮外妊娠(28.8%, 21/73)の場合の摘出側の比率に有意差は認めませんでした。

皆さんの説明の絵では、卵管が子宮の左右反対に描かれていることが多いと思います。
しかし、実際には、卵巣と卵管は左右とも子宮の裏側に、近くに存在していますから、左右の卵管は非常に近い位置にあります。
片側の卵管摘出や、片側の卵管閉塞の場合には、そちら側の排卵を無駄なものと考えてしまいがちですが、この論文では決して無駄ではなく、妊娠の可能性が十分あることを示しています。




2014年11月9日日曜日

抗加齢学会セミナー参加報告2014.11(男性にはもっとバイアグラを)

抗加齢学会のセミナーに参加してまいりました。


男性医学とアンチエイジングでは、不妊症にも関連する話がありましたので、民さんにご紹介致します。
1)テストステロンは、「男性をハツラツとさせる」そうです。
テストステロンは、男性にはやはり重要なのですね。男性を、意欲的、チャレンジ精神をおこし、社会貢献度を高め、公平、公正を求める気持ちを高めるのだそうです。
テストステロンは、喫煙、肥満で低下し、運動で上昇します。
Tが低くなると、高血圧、糖尿病、ガン、心血管疾患、うつ病が増えて、病気になりやすく、死亡率が高くなるのだそうです。
欧米では、テストステロンの補充療法が、アンチエイジングとして増加しているそうです。しかし、テストステロンを補充すると、精子量は抑制されて、少なくなります。したがって、不妊治療としては、体内のテストステロンをどのように増加させるかが大切になります。
一言で言えば、タバコはやめて、肥満の場合には減量して、運動をすることです。

2)また、バイアグラやシアリスなどの、ED治療薬を、週1回飲むことで、体内のテストステロンは増加したそうです。6ヶ月使用することで、Tが2倍になりました。EDは動脈硬化の初期症状である可能性もあります。今後当クリニックでは、EDの方には、血管年齢を測るPWVと、酸化ストレスの8OHdGも検査して、動脈硬化がある方には定期的に、バイアグラ、シアリスをお勧めしてみましょう
これらの薬は、酸化ストレスを低下させる作用もあるそうです。むしろ定期的に飲んだ方が良いのですね。

2014年11月5日水曜日

アメリカ生殖医学会(ASRM)参加報告(その3)(二重刺激法、その他)


1)卵巣機能低下症例に対する、二重刺激法とは?

O188 二重刺激法で採卵数の上昇が得られた。
 卵巣機能低下症例に、マイルド刺激の初回の採卵後、採卵2日目からレトロゾールとHMG注射を投与すると、
採卵数は1回目は1.7個、2回目は3.5個だった。
生存胚はすべて凍結した。移植あたりの妊娠率は36.6%だった。
つまり、マイルド法で採卵した後の2日目よりすぐに強い排卵誘発を行うと、採卵時には小さな卵胞であったものが、おおきくなって、また採卵できるというものです。
例えば、AMH<0.1の方で、採卵時に1cm未満の小さな卵胞が数個あったならば、続けてHMG注射をすることで、それらが大きくなって、より多くの採卵ができるかもしれませんね。
早速、当クリニックでもおこなってみましょう。ただし、対象は、卵巣機能が低くて、採卵時に小さな卵胞がある場合ですね。


2)メトフォルミンが効果ない方には、ジャヌビア(インクレチン)という、新しい糖尿病薬を使用すると、効果があるかも。

O187 メトフォルミンの効果が無い患者にsitagliptinは卵胞発育、妊娠率の上昇を来す。薬品名としては、ジャヌビアという薬があります。Ⅱ型糖尿病の方にのみ使用します。低血糖はおこしにくいようですね。


3)排卵刺激をしても、染色体異常の胚が増えるわけではない。

O121 自然周期と刺激周期のIVFで、胚の異数性の染色体の差異は認めない。
  35~37歳では 異数体染色体異常は約38%
  41~42歳では            71~89%
  43歳以上では            84~91% 
むしろ排卵誘発をおこなった方が、異数染色体異常の割合は少なかった。「自然周期の方が染色体が正常な卵子が多い」とは言えない、ということだと思います。
ただ、この報告でも、40歳以上の方の胚は、8割~9割が染色体異常だったようですね。やはり年齢が最も重要な因子でしょうか。

他にも様々な報告があり、いくつか当クリニックでも試してみたいと思います。外来でも提案させて頂きます。






2014年11月4日火曜日

10月の妊娠数(2014.10)

10月は、妊娠数80人台に戻りました。

2014年10月の妊娠数

10月の妊娠数 81例       今年の累積妊娠数 771例   全累積妊娠数 11,095例

                   今年ART妊娠 572例(74%)   一般不妊治療 199例(26%) 

ART妊娠    61例    (内訳:  IVF 15例  ICSI 11例     凍結胚移植 35例) 

 AIH妊娠    13例     

その他一般不妊治療   7例  (タイミング、クロミフェンなど) 

10月は、不妊カウンセリングセミナーの講師、アメリカ生殖医学会(ASRM)への参加など、大きなイベントがあった月でした。この中での新しい情報などは、ブログで紹介致しますので是非ご覧下さい。
やはり、勉強会、学会に出ると、様々な情報が得られて、すぐに診療で試してみたいこともたくさん出てきます。刺激は大切ですね。

2014年11月3日月曜日

ビタミンDを発売致しました。

この度、ビタミンDを発売致しました。
ビタミンDは、主にカルシウムの吸収を助け、健康な骨をつくる脂溶性ビタミンとして知られていますが、食事の変化や日光に当たる時間が減少している事などで、最近ではビタミンD 不足の方が増加しています。

ビタミンDは生殖活動においても大変重要な役割を担っており、

40代ではビタミンD濃度が低いほど卵子の減少が早い(AMH濃度が低い)

〇卵胞液中のビタミンDの濃度が高い女性ほど体外受精の妊娠率が高い

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の女性はビタミンD不足が多く、補充することで排卵率が改善される、等の報告があります。 また、

〇ビタミンDの濃度が高い女性は、子宮筋腫にかかるリスクが低い

〇妊娠中にビタミンDが不足すると、妊娠や出産のリスクが高くなる

 との報告もあります。
 
日本人のビタミンD の血中濃度は20ng/L以上が正常とされます。
しかし、おう生殖医学での理想的なビタミンDの血中濃度は30ng/L以上とされています。

通常のサプリメントの量では不十分であり、当クリニックでは、

ビタミンD濃度が20ng/mL 未満では2カプセル(50㎍:2,000単位)

        2030ng/mLでは、1カプセル(25㎍:1,000単位)の服用をお勧めしています。
妊娠中も継続して問題なく、最近では妊娠中の服用も推奨されています。

日光を1日15分あびれば、受分量のビタミンDが産生されるようですが、なかなか、実行は難しいようですね。

ビタミンDを測定して、30ng未満の方は、特に20ng未満の方は、積極的にビタミンDをお取り下さい。



1カプセルに1000IU配合
【内容量】 120カプセル(24ヵ月分)
【価格】 3,000円(税別)

アメリカ生殖医学会報告(その2)(ダブルトリガーと内膜刺激法)

アメリカ生殖医学会報告です。
これらは学会報告ですので、まだ評価が明確ではないものもあります。
あくまで、参考情報の一つとしてお考え下さい。

1)未熟卵の多い方には
O64 成熟卵が66%未満(2/3未満)の患者に、ダブルトリガー法をおこなった。
 採卵40時間と34時間前(当クリニックでは17時と23時ぐらい)にHCGを注射する。
 ダブルトリガー法と、HCG単独法での成熟卵子は、平均7個と3.6個と、成熟卵が約2倍に増えた。
 MⅡ期胚の率は、78.4%と52.4% 最良好胚は3.1個と0.8個だった。

 ダブルトリガーの方が、単に成熟卵子が増えるだけではなく、良好胚も増える可能性があると思います。未熟卵が多く、卵子の質が良くない方には、ダブルトリガー法も試しても良い方法かも。
 早速、当クリニックでおこなってみましょう。


2)子宮内膜刺激法(さっか法)
O87 IVF失敗対象者に、子宮内膜バイオプシーをおこなった場合、胚移植の11~15日以内に、つまり同一周期におこなった場合に、最も妊娠率が高くなるとの結果を得た。
 当クリニックでも、すでに行っていたのですが、オリジナルの方法は、胚移植周期の高温期に行っています。今までは、主に前周期に行っていたのですが、今後は、前周期高温期と、月経時期と
当クリニックでも比較してみる必要がありますね。まだどの時期が最も良いか、また、刺激法自体が有効なのかも、まだ明確ではないと思いますが、皆さんのご協力もお願い致します。

アメリカ生殖医学会(ASRM)報告(その1:アリバイ工作なのか??)

10月18日~22日まで、ハワイでアメリカ生殖医学会(ASRM)に参加してまいりました。
ちゃんと学会場に行ってきましたよ~。決してビーチで遊んでいたのではありません。
証拠写真は以下の如くです。(わざわざアリバイ写真を出すところが、やましいところがあるからか??)


ASRM会場前での重要なアリバイ写真です。どうも自撮りでは思うように笑顔は作れましぇん!

当クリニックからの発表ポスターの前で。(あくまで当クリニックから、であり、私の発表ではないのですが、、、内緒ですよ。  藤田先生お疲れ様でした~)
私も、抄録をASRMに送ったのですが、落ちる以前に、どうも届いてなかったようです。残念~。
最近のネットでの抄録の送付方法は、よく分かりましぇん!

 
  
総合ビタミン剤の、アシストワンの共同制作者、パートナーズ代表取締役の細川忠宏さんと。真ん中は、細川さんが翻訳した「妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法」の著者の、ジョージ・チャヴァロ先生との写真です。チャヴァロ先生の忙しい合間を縫っての挨拶でしたが、皆さん、「妊娠しやすい食生活」はおもしろいですよ。ぜひ読んでみて下さい。
なお、私の監修、小浦ゆきえさん執筆の「子宝サプリ 授かりやすいカラダになる!」自由国民社も、ぜひ併せて読んでみて下さい。アンチエイジング、サプリメントにも力を入れているのです。
 
 
 
ハワイのコササ先生(教授)と、IVF大阪の福田先生との記念撮影です。コササ先生の病院は数年前に見学させて頂きました。ハワイの不妊治療のリーダー的存在です。コササ先生は70歳とは思えないほど若いのですね。私も見習わねば!! 中身は追いつけそうにありませんが、外見だけでもセッセと、はあ~~若作り、若作り と、
 
 

 
精子の研究で世界的にも有名な、柳町先生にご挨拶させて頂きました。
虎の門病院時代に、山梨大学から来ていた先生方も、柳町先生の研究室に留学していたのです。私も来たかったな~。(動機が不純なのが見え見えか~)柳町先生ごめんなさ~い。
今でも現役で仕事をまとめているのだそうです。お手本の先生方がたくさんなのですね。

さて、皆さん、私がしっかりと学会に行ったことをご理解頂けましたでしょうか。(しつこいところがいかにも怪しい??)
「詳しい中身は、Webで(学会報告:その2)」って、、、少し古いかも、、

ベストドクターズ雑誌届く!

ベストドクターズの雑誌が届きました。
私のところへは初めての配布です。
今回は、大阪の、整形外科医の川端先生の紹介でしたが、やはりその方の哲学と信念があるのですね。この情報社会でも専門が異なると、なかなか耳に入らないのですが、お手本になる先生がたくさんいらっしゃいますね。
川端先生の名医を割り出す計算式とは、
「病気を上手に治す技術、新しい治療法に精通していることは、否定できない当然の条件」かつ、「患者さんに寄り添い、思いやりを持ってあたる人間味・ヒューマニティーもまた誰もが求める条件であるはず」
これを足し算するのではなく、掛け算をする。
そうすると、一方がとても高い値でも、一方がゼロならば、答えはゼロ。
「どちらかだけ突出していても名医、良医とは言えないということです」
とのことでした。
なるほどと思います。しかし、なかなか厳しい基準、計算式ですね。
この基準だと私は少々自信がないのですが、幸いにスタッフには恵まれています。高橋ウイメンズクリニックの職員は、皆さんへの説明は私の考えている以上に丁寧に説明していると感じています。また、臨床心理士によるカウンセリングや管理栄養士による栄養相談もおこなっています。川端先生の基準、計算式には、高橋個人の力量を当てはめるのではなく、職員のサポートも点数に入れて、皆さんはお考えいただければ幸いです。

新患予約の拡大開始しました!

11月に入り、今年も残すところ2ヶ月となりました。毎年のことですが、こうなると、あっという間に年末、新年になりますね。
前回のブログから1ヶ月も空いてしまいました。
この間、アメリカ生殖医学会(ASRM)への参加など、がありましたが、皆さんに報告する機会がとれませんでした。反省!!
今後、この1ヶ月間に勉強したことをまたご紹介致します。

11月からのクリニックの変更点としましては、
新患の予約枠を増やすことができました。
午前中は依然として処置が多く、お待ち頂くことが少なくありませんが、午後は何とか少し余裕ができてきました。
午後が中心ですが、新患予約を増枠致しました。
治療をお急ぎの方は、受付にご相談頂けますか。可能な範囲で何とか対応致します。

体外受精のみでなく、卵管鏡下卵管形成術、子宮鏡下子宮筋腫切除術も日帰りでおこなっています。
卵管鏡下卵管形成術を県内でおこなっているところは当クリニック以外には1~2カ所ぐらいと非常に少ないです。
子宮内膜ポリープも、掻爬(ソーハ)術では手探りの手術であり、取り残しも少なくありません。とくに多発性の子宮内膜ポリープは、きれいにとり来ることは非常に困難です。子宮内膜ポリープも、子宮鏡下に切除する事の方が取り残しが少ないのですね。

クリニックの外壁は今改装中で、皆様にはご不便をおかけしています。
しかし、クリニックの中身もしっかりと改善を進めていこうと思います。