2015年10月20日火曜日

抗精子抗体陽性での自然妊娠例

先日、抗精子抗体(精子不動化抗体)が陽性でも、自然妊娠された方がいらっしゃいました。
当クリニックでも数人いらっしゃるのですが、今回はSI50(精子不動化抗体の抗体価を示す)が6.8と、そこそこ高い方の妊娠でした。(抗体価はSI50≧10は、高抗体価とされます)
年齢は30歳代前半で、体外受精も1回受けていました。
精子不動化抗体が陽性の方には、基本的に体外受精を勧めるのですが、抗体価が10未満の場合には、人工授精なども数回しても良さそうですね。

尚、抗精子抗体の検査には、定性試験(SIV値)と、定量試験(SI50)のように抗体価の定量試験があります。
定性試験で「強陽性」と出ても、抗体価が高いことを示してはいません。単に「陽性」といっているのです。抗体価を調べるには、SI50の定量試験で確認して下さい。

精子不動化抗体の第一人者である、柴原先生(現:兵庫医科大学 産婦人科教授)の論文では、

1)精子不動化試験では、およそ2~3%の女性が抗体を持っている。

2)ヒューナーテストと精子不動化抗体陽性群では
  SI50が10以上の高抗体価群は10人全員がヒューナーテストが異常でしたが、
  SI50が10以下の低抗体価群では、21人中14人(66.7%)がヒューナーテスト異常だった。
(ヒューナーテストが正常でも、精子不動化抗体が陽性の方はいるのですね)

3)したがって、SI50が10以下の群で性交渉(あるいはAIH)での妊娠が望める可能性がある。

今回の例は、柴原先生の論文を支持する1例ですね。
ちなみに柴原先生は私と同年代で、私も虎の門病院時代に抗精子抗体を検討した縁で、お付き合いさせて頂きました。最近は学会の理事も歴任されてあまり会えませんが、さすが、改めてその研究の意義に感心しました。もちろん、人格もすこぶる良く、話の突っ込みも鋭いため、私はいつもいじられる側なのです。

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