2012年5月15日火曜日

体外受精と顕微授精での先天奇形発生リスク

2週間のご無沙汰でした。パソコンを更新したのですが、設定に時間がかかり、ブログを更新することが疎かになってしまいました。 やっと再開できましたので、再開のご挨拶とまた皆さんに情報提供を致します。 体外受精とイントラリピッドの関係は皆さん興味が大変あるようですので、もう少し調査してからご報告致します。 本日は、体外受精と顕微授精のリスクについて、見つけましたので転記ご紹介致します。 New England Journal of Medicineという非常に権威のある(つまり報告に信頼性のある)論文で、オーストラリアでの31万件の出産でのデータ報告がありました。 その結果では、 1)体外受精では先天異常の増加はなかった。 2)顕微授精での先天異常は、1.57倍だった。   とのことです。 このような報告は珍しいことではありませんが、31万件という膨大な数が信頼性を高めています。 当クリニックでも、「体外受精での先天異常の上昇はない」「顕微授精では、先天奇形や染色体異常の発生は、1.2倍程度に増加する」と説明しています。 今回皆さんに理解して頂きたいことは、以下のようなものです。 1)体外受精では先天異常や染色体異常は増加しない。一般的には、虚弱体質、発達遅延や知能の低下も認めていません。 2)顕微授精では、先天異常はわずかに増加する。ただし、通常でも先天奇形は1%以下、染色体異常は0.5%以下の割合で生まれますが、顕微授精でも先天奇形が1.5%程度、染色体が1%未満の割合で生まれる、ということです。この増加は、顕微授精でないと受精しないカップルにおいては、一般的には許容されると考えられています。したがって、顕微授精が必要な方には、顕微授精は非常に信頼できる技術なのです。 3)ただし、顕微授精で妊娠率は上昇しません。顕微授精はあくまで受精を手助けする技術であり、妊娠率を上げる技術ではないのです。むしろ顕微授精の方が妊娠率は数%低いのです。 4)採卵数が少ないとの理由で、顕微授精をすることで受精率は上昇せず、意義はないことを以前書き込みました。採卵数で顕微授精を選択する意義は明確ではないことを再度ご報告致します。 最近は、顕微授精が必要とも思えない方に、比較的安易に顕微授精が行われているような印象がしばしばあります。 顕微授精で先天異常がおよそ1.5倍となることを、「許容できる」か「リスクの増加」と見るかは、その方の置かれている状況にもよるでしょう。 大切なのは、皆さんご自身が顕微授精の必要性とリスクを理解した上で、「怖がりすぎず」「安易にではなく慎重」に顕微授精をするかどうかを判断してほしいと思います。 パソコンも新しくなり、スピードがアップしました。私の思考スピード・仕事・診察のスピードはどんどんスピードダウンしていますが、皆さんと一緒に勉強していきたいと思います。 今後ともよろしくお願い致します。 高橋ウイメンズクリニック 高橋敬一

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