2014年1月25日土曜日

DAZ遺伝子欠損の方のICSI妊娠例と遺伝の注意事項

以前に、DAZ遺伝子欠損の重度の乏精子症の方が、ICSIで妊娠、卒業されました。
DAZ遺伝子は、Y染色体上にあり、精子の生成に関わっている遺伝子です。これか欠損すると、造精機能が障害されて、無精子症や重度の乏精子症になります。
しかし、DAZ遺伝子が欠損していても、必ずしも無精子症になるとは限らないのですね。
この方は、射精精液内に少ないながらも運動精子が認められ、ぎりぎりですが、射精精子でICSIがおこなえて、妊娠されたのです。このような方には、ICSIの技術が本当に役立った例と言えます。今回は2回目の妊娠ですが、良い経過であることをお祈りしたいと思います。

さて、今回の例では、皆さんに考えて頂きたいいくつかの参考事項と注意事項があります。
まず第一に、無精子症でなくても、重症の男性因子の場合には、染色体検査(Gバンド)とDAZ遺伝子の検査を受けておいた方が良い、ということです。今回の妊娠では、DAZ遺伝子の欠損がY染色体上になるのですから、お子さんが男児の場合には、男児に遺伝することになります。女児の場合にはY遺伝子はないので、DAZ遺伝子も関係ないことになります。つまり、染色体・遺伝子の問題が遺伝することがあり得るのです。料金は2つで5万円程度だと思いますがこれをしっかりと調べておくことは、対象の方にも有益な情報となり、学会でも推奨されております。

第二に、第一で述べましたが、男児には遺伝することになります。したがって、ICSIをする前から、男児の場合にはDAZ遺伝子欠損が遺伝することをご理解しておく必要があります。ただし、DAZ遺伝子欠損は、いわゆる奇形の発生とは関係ありません。

第三に、これは今後変わる可能性がありますが、現時点では、着床前診断の対象にはなりません。第二点で述べましたように奇形の発生や致死的な因子でもないので、着床前診断の対象としては認められないでしょう。

この方は、ICSIの恩恵を得られた典型的な方です。今後も多くの方に補助生殖医療の恩恵が届けられるようにがんばりたいと思います。
一方で、おこりうる問題などには皆さんもしっかりとした理解と対策が必要でしょう。疑問に思うことや不安に思うことは、様々な方法で解決しておきたいものですね。

0 件のコメント :

コメントを投稿