2014年3月2日日曜日

着床障害とは?受精着床学会ART研修会「卵子老化への挑戦」参加報告(その1)2014/03/02

本日、日本受精着床学会第10回ART生涯研修コースの研修会がありました。
今年は「卵子の老化への挑戦と新しい生殖医療」です。
昨年同様、今年も非常に中身の濃い、非常に役立つ内容でした。皆さんにもご報告致します。
まずは着床障害についてです。
特に、最近は、「着床しない原因は何ですか?着床障害の検査と治療をして下さい。」と、着床障害についてしばしば質問を受けます。
本日は、専門家の弘前大学、福井先生の講演を聴き、質問してきました。

さて、私なりの解釈です。

まず、着床不全の定義自体が明確になっていないようです。
40歳以下で少なくとも3回以上の新鮮胚移植で妊娠しない場合、
8細胞期胚を8個以上、胚盤胞を5個以上で妊娠しない場合
10個以上の良好胚移植で妊娠しない場合、
3回以上の良好胚移植で妊娠しない場合、など様々です。
それぞれの国で、それぞれの施設で独自に検査や治療をおこなっているようで、着床障害自体、明確にはなっていないようです。

一方、着床障害の原因としては
1)子宮因子として  子宮奇形、粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症、子宮内腔癒着(アッシャーマン症候群)
2)重症の卵管水腫
3)免疫因子
4)凝固因子
などがあります。

皆さんは、イメージとして、免疫因子と凝固因子をイメージなさっていませんか?
これらの原因を考えると、
① 1)2)に対しては、子宮鏡と子宮卵管造影検査が必要なのですね。そして、子宮筋腫や内膜ポリープ、重症の卵管水腫、子宮内腔癒着に対しては、手術を考慮することになります。

②次に、免疫因子に関しては、NK細胞が関係しているとのことでした。ただし、血中のNK細胞では判断は出来ないようで、臨床的に利用できる検査は現在ではまだ無いようです。

③凝固因子に関しては、今回は話題に上りませんが、明確な着床障害の原因としては、まだ認められてはいません。ただし、抗リン脂質抗体などがあるようでしたらば、試しにアスピリンやヘパリンの抗凝固剤を考えても良いかもしれません。(ヘパリンは副作用もあり、やり過ぎかも)

したがって、現在行える着床障害の検査は、子宮鏡と卵管造影検査になります。
また、免疫因子の検査は出来ませんが、試してみる治療法としては、当クリニックでも行っていますが、
①ボンゾールの投与:ボンゾールは子宮内膜症の薬で、特に子宮内膜症のある反復不成功の方には当クリニックでも使用してます。ボンゾールの使用により、2.3%の妊娠率が20.6%に増加したとの報告でした。この数字はでき過ぎかもしれませんが、積極的に試してみてもよいと考えています。
②子宮内膜擦過法:子宮内膜を(例えば前周期に)擦過して炎症をおこすことで、免疫能が変化して着床しやすくなる可能性があります。子宮鏡をしただけでも、着床率が上昇した報告もあるそうです。
③グロブリン点滴は、NK細胞の働きを抑えて着床しやすくなるようですが、1回10万~15万円で、週1回ずつおこなう必要があります。データでは4倍ぐらいの成績になるようですが、世界的にはまだ効果が認められているとは言えないようです。当クリニックでおこなっておりません。

なお、数年前にテレビでも報道された、イントラリピッドという大豆栄養製剤により、免疫が抑えられて、着床障害や流産を防止して、赤ちゃんを得られる、との話は、NK細胞には影響しないようで、またこの治療法自体も広まらずに、すたれているようです。

さて、まとめますと、
着床障害には、子宮鏡と卵管造影検査を行い、ボンゾールや内膜擦過法を試してみては如何でしょうか。

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