2015年1月21日水曜日

生殖医療ジャーナルクラブ2015報告(その3)運動しましょう!

生殖医療ジャーナルクラブ2015報告第3弾です。
1年間の不妊症に関する論文を網羅した勉強会なので、報告も1回ではできなので、複数の分割報告になってしまいますが、お付き合い願います。

1) IVFと運動
 IVFと身体活動性を検討すると、過去1年間の身体活動性が継続して高いレベルの運動をした場合には、妊娠率は1.96倍、スポーツや運動群は1.48倍、すべての運動を含めると1.52倍となった。

やはり体を動かして、血流を良くすることは、妊娠に繋がるのですね。
皆さん、どんどん運動をしましょう。なかなか運動の時間を毎日とるのは難しいと思いますが、毎日の家事でも、ちょこちょこ動き回り、小走りすることをお勧めしています。


2)胚移植後の安静の程度は、妊娠率に影響はなかった。

今では、一致した意見です。胚移植後は当クリニックでは5~10分ですが、すぐに動いても問題ないのですね。皆さん、胚移植後の安静時間は、あまりこだわらないで良いですよ。


3)子宮腺筋症の影響について、
しばしば質問があります。実際には、個々人で、子宮腺筋症の大きさ、位置にもよるので一概には言えないのです。しかし、ざっくり言うと 子宮腺筋症があると、妊娠率は約30%低下し、流産率は約2倍になった。

子宮腺筋症が大きいときには、手術も考える必要があります。しかし、子宮腺筋症の手術は非常難しいのです。不妊症にも詳しく、丁寧な手術をおこなってくれる医師を見つける必要がありますね。


4)卵子成熟とダブルトリガー(HCG注射と、GnRHaスプレー)
未熟卵が25%を超える患者に、ダブルトリガー法をおこなうと成熟卵子の割合は上昇した。
しかし、成績はやや不良であり、未熟卵が多い背景には、卵子の成熟機能障害が関係していると推測される。 Fer Ster 2014.102:405-409
ダブルトリガー法とは、卵子の成熟をおこすために、HCG注射や、GnRHアゴニスト(ブセレキュアなど)を使用するのですが、両方の方法をおこなうことで、より多くの卵子の成熟を期待するものです。
 

未熟卵が多いのは、その卵巣の成熟機能が、弱いのであり、ダブルトリガー法でも、完全に解決できるとは言えないようです。しかし、容易におこなえるので、どんどん試してよい方法でしょう。


5)乳癌とIVF
 乳癌患者に、体外受精をおこなう事は珍しくはない。ここでは46名の患者を対象とした。
乳癌患者にはタモキシフェンを使用していることもあるが、IVF周期に使用していても、成績が低下することはなかった。
また、ロング法やアンタゴニスト法のIVF周期により、エストラジオールが上昇したが、最大10年間の再発のリスク上昇は認めなかった。                   Fer Steril 102:488-495e3

最近にも、乳癌の患者さんが来院しました。抗癌剤の仕様前なのですが、ロング法でおこなう予定です。一時的にエストラジオールが上昇しても、再発リスクが上がらないとの報告は、自信を持って排卵できますね。

つづく

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