2017年1月1日日曜日

顕微授精でも受精しにくい方の妊娠、卒業例

精子の状態が悪い場合には、顕微授精(ICSI)が通常おこなわれ、ICSIの授精率はおよそ80%程度とされます。ICSIでは、卵子内に精子を注入することはほぼ100%出来るのですが、注入された精子と卵子の核が融合すること(これは現在での本当の意味の受精です)は100%ではなく、精子と卵子の力次第であり、それがおよそ80%なのです。

しかし、ICSIをおこなっても、授精しない場合、授精率がかなり低い方もまれに存在します。その原因は、精子の核の状態が非常に悪いか、卵子の受精・分割能力が悪いか、明確には調べることが難しいのです。
このような場合には、精子を卵子の中に注入したあと(ICSI後)に、カルシウムイオノファーという薬剤や、電気刺激などをおこなって、授精分割を促進することがおこなわれますが、その効果はまちまちで、おこなってみないと分からない、という状況なのです。

この方は、30歳代後半の方で、AMH=2.84、前医で、ICSIを2回受けています。1回目12個採卵、2回目1個採卵で、2回ともICSIで授精卵が得られませんでした。
当クリニックでは、カルシウムイオノファーを半分使用する予定で、10個ICSIをしたのですが、初回は全く授精しませんでした。精子も良くなく、ICSIが必要でしたが、ICSI時の卵子の状態は悪く、精子よりも卵子の問題が大きいのではないかと判断しました。BMI=18.6と、肥満よりもむしろ痩せすぎに近い体型でした。
その後、ビタミンC、D、メラトニンも使用。2回目の顕微授精では、7個ICSIして、2個授精。4細胞1個(G1)を新鮮胚移植して幸いに妊娠、出産されました。

今回、二人目を希望して再来院。
アシストワンを併用し、産後1回目は9個ICSIし、2個授精、1個胚移植して妊娠せず。
2回目、遠赤外線のサンビーマーを併用し、16個ICSIし、5個授精。凍結初期胚を移植するも妊娠せず。胚盤胞なし。
3回目、6個ICSIし、1個授精。4細胞(G2)新鮮胚移植し、妊娠、卒業となりました。
カルシウムイオノファーは使用していましたが、多少の授精率の改善はあったと思いますが、卵子の問題か、劇的な改善とは言えなかったともいます。

ICSIも万能ではなく、ICSIしても授精しない、授精率が低いことは、時々おこることである。
ICSIの受精率が低いのは、精子の問題とは断言できず、卵子の問題のこともありうる。
ICSIでも卵子の質が良いことが最低限必要である。
カルシウムイオノファーも万能ではない。
1個でも授精するならば、妊娠の可能性がある。
 痩せすぎも、卵子の質に関係する可能性がある。

などが、この症例で参考になる事だと思います。




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