2014年1月1日水曜日

反復・習慣流産の取り扱い(日本産婦人科学会ガイドラインより)

反復・習慣流産の日本産婦人科学会のガイドライン(案)より、
いくつかピックアップして皆さんに、知っておいて頂きたいことをご紹介致します。
これは現在新しいガイドラインを作成中の案で、多少の変更はありえますが、最も新しいとも言えます。

1)3回以上連続する自然流産を習慣流産と診断する。
  これは従来と変更無いようです。流産の間に分娩している場合には、3回以上流産していても習慣流産とは言いません。「連続3回以上」なのです。

2)精神的・心理的支援を行いカップルの不安を出来るだけ取り除く
  不安、憂鬱、怒り、喪失感、夫婦関係の不和、などがあると、流産率は上昇します。また医師との話す機会が多く、不安感が少ない場合には、流産率は低下します。したがって、習慣流産の検査をしないで不安でいるよりも、検査を受けた方が漠然とした不安は少なくなるでしょうから、不安感が強い場合には検査を受けるのも治療の一つと言えます。また当クリニックには臨床心理士もいますが、各施設の相談体制も利用する方が良いでしょう。

3)特に高齢でない既往流産が3~4回女性の場合、次回妊娠が無治療で継続できる率は60~70%である。
 流産の最も重要な因子は年齢です。早い妊娠を心がけることが、最も有効性の高い流産防止とも考えられます。反復流産でも胎児染色体異常が50%なのです。例として、31歳ならば、過去3回流産があっても約70%が出産でき、最終的には83~85%の方が出産できるとされています。

4)原因不明流産に対する確立された治療法はない。
 様々な検査を受けても50%以上が原因不明です。また原因不明の方が無治療でも、2回流産だった方は、次には80%で妊娠継続します。3回流産でも70%、4回流産でも60%、5回流産でも無治療でも50%が妊娠継続します。「原因不明習慣流産患者では、夫リンパ球免疫療法、アスピリン療法、アスピリン/ヘパリン療法、免疫グロブリン療法の有用性はおおむね否定的である」というのが、現時点での学会の認識です。
 したがって、原因不明の方へのアスピリンや、それ以上の治療は、「何もしない不安感を取り除く」以上のものは、あまり期待できないのかもしれません。当クリニックでも原因不明の場合には、負担の強い治療法はせずに、柴苓湯(さいれいとう)、HMG注射、アスピリン、などを使用しています。原因不明の場合にも、妊娠を急ぐのが最も良い治療法かもしれませんね。

5)習慣流産の検査には、以下の検査をおこなう。
①抗リン脂質抗体
②カップルの染色体検査
③子宮形態以上検査(経膣超音波検査、子宮卵管造影、子宮鏡など)
 習慣流産の検査は、血液の凝固能のみではなく、染色体分析と子宮の形態検査も伴って、しっかりとした検査になるのです。皆さん、抗リン脂質抗体などの検査だけが重要だと誤解していませんか。

6)抗リン脂質抗体陽性を複数回示した習慣性流産患者は抗リン脂質抗体症候群と診断する。
 抗リン脂質抗体は日々増減します。抗リン脂質抗体が1回の陽性で抗リン脂質抗体症候群と言われた方がしばしばいらっしゃいます。しかし学会では、偽陽性多いため、12週間以上持続することを基準としています。つまり、12週(3ヶ月)あけて、2回以上の検査で陽性でないと、抗リン脂質抗体症候群とは言えないのです。
 また、抗リン脂質抗体の検査はいくつもあり、検査会社によって基準値が異なります。1回の検査で確実に診断できると考えるのは誤解なのです。

習慣流産・不育症も、血液凝固異常のみでは無く、総合的な検査と妊娠を急ぐ治療を心がけることが必要だと思いますが、皆さんの参考になりましたでしょうか。
 

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