2014年2月16日日曜日

タバコは体外受精に「悪影響を与えない?

タバコ喫煙はIVFの転帰に有害な影響を与えない?

European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biologyという雑誌に、喫煙が体外受精の成績に悪影響を与えないという論文が載りました。

これは、当クリニックの考え方とは異なりますので、医学論文への考え方も含めて、コメントをしたいと思います。
この論文では、いくつかの問題点があります。
1)まず、タバコを吸っている女性が、わずか43例であるとです。(内訳は、女性非喫煙者[n=171]、男性非喫煙者[n=118]、女性喫煙者[n=43]、男性喫煙者[n=96])
わずか43例の女性の喫煙者の妊娠率を比較して、差が無かったとの結論は信頼度がかなり低いのです。この患者数では差が無かったが、もっと患者数を増やせば差が出る可能性が十分あります。
2)採取した卵細胞の総数と、成熟卵細胞数は喫煙者群の方が多かったことです。つまり、喫煙者のグループの方が、偶然、卵巣機能が良い人が集まった可能性が高いのです。
3)実際に、アンタゴニスト群内で検討したところ、非喫煙者に比べて喫煙者の平均年齢は有意に低く、採取した卵母細胞の総数は有意に多かったようであり、喫煙者のグループがやや若い可能性があるのです。
 
医学論文には、結果が真逆の報告が山ほどあります。内容も信頼の置ける報告から、ほとんど信頼の置けない報告まで様々なのですね。したがって、一つの医学論文の結果を見てそれが正しいと考えるのは早計なのです。実際には、タバコが妊娠率を低下させる論文はたくさんあります。
 
当クリニックでは、タバコは明らかに妊娠率を下げ、流産率を上昇(2倍)させると考えています。
喫煙している方は、すぐに禁煙して下さいね。
なお、タバコを減らしても、1本1本大事に吸うことになり、むしろニコチン、タールが上昇します。減らしても意味が無いのですね。きっぱりとやめることをお勧め致します。
 
ちなみに、テレビでやっていた事が正しいとは、同様な理由ですべて信じてはいけません。特に、私も楽しく観ていますが、サンマのほんまでっかTVで、様々な論文のことが紹介されています。しかしそこで紹介される話も、「そのような論文もある」と言うだけで、それが信頼を置いて正しいとはとらえない方が良いでしょう。TVでも「ほんまでっか?」という姿勢で楽しんで下さい、と断りを入れていますね。
ただ、さんま(さん)は、58歳であのテンションは非常に励みになりますね。私のお手本の一人です。
 私の目指すのは「笑いのとれる生殖専門医」なのか??? 何を目指しているのだ~!
 
 
 
 

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