2014年8月17日日曜日

不妊治療2014臨床懇話会セミナー(その2)根拠に基づいたART最適医療

国際医療技術研究所の荒木重雄先生の、データに基づいた講義はいつも感動なのです。

印象に残る項目を、ご紹介します。

・1日1単位(12g)を超えるアルコール、男女の喫煙、カフェインの摂取は、ART(IVF・ETなど)の成績を低下させる。(やはり生活習慣は、妊娠に影響するのですね)
(・カフェインの摂取は、妊娠率には影響を与えない、とする報告と、悪影響を与えるとする報告が混在しています。当クリニックでは1日2杯程度のコーヒーは問題ないと考えています)
・体重(BMI)は19~30の範囲が望ましい。痩せすぎも太りすぎも妊娠率は低下するのですね。
・43歳以上の女性には、ARTは勧められない。(医学的には、43歳以上の方は明らかに成績が低下するので、体外受精ももうお勧めする状況ではない、と考えられています。日本での補助金もこの考えに沿っているのでしょう。やはり年齢が最も重要であり、比較的高齢の方は、治療を急ぐ必要があるのですね)
・子宮内膜が5mm未満で胚移植をしても妊娠は望めない。(一般的には7~8mm以上が理想的とされます。6mmでも妊娠例もあります。5mm未満の場合には、またの機会にするべきでしょう)
・凍結融解胚移植では、自然周期とホルモン補充周期では、同等の成績が得られる。
・2個を超える胚移植をすべきではない。
・2個の胚を移植する場合には、2個の最良胚盤胞を移植してはならない。(日本では原則1個の胚移植ですが、35さい以上や反復不成功例には2個の胚移植も許容されます。しかし、良好の胚盤胞は2個移植するべきではないとの意見が一般的です。当クリニックでは、胚盤胞移植はほぼ100%1個移植にしています)
・37歳未満の女性では、初回の完全ART周期(初回の採卵でとれた胚すべて)では1個移植にするべきである。
・40~42歳の女性では、初回の体外受精から2個移植を考慮しても良い。
・不妊女性には風疹ワクチンの検査をしておくべきである。ワクチン接種後は少なくとも1ヶ月は避妊すべきである。(日本では接種後2ヶ月ですが、海外では1ヶ月で良いとされることも多いのです)
・IVF患者には、HIV、B型肝炎、C型肝炎の検査をおこなう必要がある。
・不妊期間が長いほど、ARTでも妊娠率は低下する。
・採卵数が多いほど妊娠率は上昇し、生児出産率も上昇する。(やはり採卵数は多いほど、妊娠出産率は上昇するとの考えが一般的なのです)
・ARTの回数と共に、成績は低下し、4回目には0.55倍(つまり半分程度に)に低下する。
・BMI(体重÷身長(m)の二乗)が25以上(肥満)の場合、体外受精での、妊娠率は低下し、流産率は上昇する。
・大部分の女性で、ARTが不成功に終わっても、自然妊娠の可能性をのこしており、自然妊娠する例もある。(当クリニックでも以前から皆さんに説明しているように、体外受精をしていても、併せて、自然妊娠も含めて一般不妊治療もおこなってきましょう)
・ロングプロトコールとアンタゴニスト群では、出産率に差は無い。
・ロングプロトコールは、アンタゴニスト群より妊娠率は高い。しかし、低反応のグループでは、差は無かった。一方、OHSSはロングプロトコール群で多かった。したがって、ロングプロトコールは、OHSSのリスクが低い女性に用いるべきである。
・ロングプロトコールは、ショートプロトコールよりも妊娠率は高かった。低反応の女性には、ショートプロトコールが勧められる。
・クロミフェン周期と自然周期では、クロミフェン周期の方が妊娠率が高かった。
・低反応に対する成長ホルモンは、有意な妊娠率の向上は得られていない。
・自然周期では、刺激周期よりも妊娠率は低いことをカップルに十分説明する必要がある。
・初期分割胚移植では、1個胚移植よりも、2個移植した方が妊娠率は上昇した。一方、胚盤胞移植では、2個移植と1個移植では妊娠率に有意なはなかった。(したがって胚盤胞移植では、1個ずつの移植が適当であると思います)
・2個胚移植をした場合には、多胎妊娠が上昇し、障害児や周産期死亡率のリスクは上昇する。(したがって、「原則1個の胚移植」は正しいと考えられます)


さまざまな論文に、様々な結論があり、正反対の結果の論文もたくさんあります。また常識と考えられたことが徐々に、否定されることも良くあることです。
1個の論文で、それに振り回されることなく、しっかりと診療の方針を担当医と相談して「選んでゆく」ことが大切だと思います。
荒木先生は、いつも膨大なデータを出してくるので、ついて行くのも大変なのです。夏ばてがもっと進んでしまいそ~。




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