2013年12月31日火曜日

体外受精での、精子の採取場所(院内・自宅)の影響は大きくない!?3時間までは全く問題なし。

体外受精では、精子を出来るだけ院内で採取した方が、受精率/妊娠率が高いだろうとの期待があります。
したがって、無理をしてでも、ご主人が採卵に同行することがしばしばあるようです。
実際には、どの程度影響するのでしょうか。
今回、日本カウンセリング学会雑誌に、横田マタニティークリニックからその検討論文がでました。
これによると、
1)時間経過と共に、精子の運動率は低下する。しかし、採取後3時間以内では、運動率の低下はみられなかった。
2)体外受精では、精子採取後6時間までは、受精率は時間と共にやや低下する傾向はあったが、有意差はなかった。
3)顕微授精では、精子採取後10時間までは、受精率の低下はなかった。
4)体外受精でも、顕微授精でも、院内採取よりも、自宅採取の方が妊娠率が高かった。

自宅採取の方が妊娠率が高かった理由は、この論文でも明確には判っていませんが、たまたまである可能性が高いと思います。いずれにしても自宅採取でも悪い影響がないと言うことでしょう。
他の報告でも、精子採取後3時間までに、精子の処理を開始できれば、妊娠成績に影響はなかったとの報告があります。

当クリニックでは、8時半から採卵をおこない、精子の処理は来院時に精子を持ってきて頂けるならば8時半には開始します。したがって5時以降に精子を採取できるならば、妊娠成績には全く問題ないと考えられます。顕微授精では、朝3時以降ならば問題ないですよ

皆さん自宅採取の場合、あまり神経質にならず、心配せずに自宅採取をされて良いのではないでしょうか。

2013年12月30日月曜日

12月の妊娠数、2013年の妊娠数(速報)と1年間の御礼・ご挨拶

12月の妊娠数、2013年の妊娠数の速報がでました。ご報告致します。


1)12月の妊娠数 78例       今年の1年間合計 893例

           今までの妊娠累計は、10,319例に達しました。

 ART妊娠    52例    (内訳:  IVF 17例     ICSI 8例     凍結胚移植 27例) 

 

 AIH妊娠    19例     

その他      7例  (タイミング、クロミフェンなど) 

12月は、AIH妊娠が2013年で最も多い月でした。ARTでは、新鮮胚移植と凍結胚移植がほぼ同数であるのは、1年間通じた傾向です。年末でしたが、月間平均以上の妊娠数であり、健闘したと思います。

2)2013年 年間妊娠数 

 2013年、年間合計 893例

ART合計    584例    

          IVF・ET(新鮮胚移植)    209例   

          ICSI(新鮮胚移植)      84例

          凍結胚移植(主に胚盤胞)  291例


AIH妊娠    153例

           妊娠累計は、10,319例に達しました。

今年は、900例にもう少しで到達したのに、実現できなかったのが残念ですが、今までに3番目の年間妊娠数でした。東日本大震災からは、右上がりに多くなっており、大震災前の2年間の妊娠数に次ぐ実績となりました。千葉県も被災地の一つなのですが、少しずつ復興を遂げているならばうれしいですね。私のこの地でがんばりたいと思います。

人工授精だけで153例は、誇れる実績だと思います。
またARTでの当クリニックの特徴としては、新鮮胚移植での妊娠数も、凍結胚と同等の妊娠数であることも、一つの特徴でしょう。
最近は高齢の方のART希望者が増えてきています。当クリニックのART施行の平均年齢は39歳ぐらいに上がってきています。

高齢の方の場合には、胚の抵抗力が低下しており、胚盤胞・凍結融解移植、よりも、初期胚・新鮮周期移植の方がストレスが少なくて良いのではないか、との意見もあります。当クリニックでもその意見に賛同しており、特に高齢の方には初期胚・新鮮周期移植もお勧めしています。

ARTでは、「すべての方に一番良い方法」があるのではありません。

自然周期、刺激周期、 初期胚、胚盤胞、 新鮮胚移植、凍結胚移植、それぞれにメリット、デメリットがあるのですね。

同じ方法をいつまでも続けるのではなく、その方に合った方法を考えながら少しずつ変えていくことも必要でしょう。皆さんも担当の先生とよく相談しつつ、良い方法を探ってみて下さい。その蓄積がまた、全体の治療の改善、進歩につながるだと思います。

1年間、皆様のご支援を頂きましてありがとうございました。
今年も様々な勉強をさせて頂いた1年でした。
来年は、また気持ちも新たに、藻掻きながらも、職員のみんなと共に、新しいことにも挑戦したいと思います。
来年が皆さんに良いお年でありますことをお祈り申し上げます。

2013年12月25日水曜日

「子宝サプリ 授かりやすいカラダになる」 高橋監修の本が発刊されました

「子宝サプリ 授かりやすいカラダになる」  発刊

小浦ゆきえ(著) 高橋敬一[監修] 自由国民社 1,400円


小浦ゆきえさんが、実体験と様々なデータを集めて、お子さんを授かりやすいカラダになるための、サプリメントの使用方法をしたためた本が発刊されました。私も監修として参加しております。
皆さん是非、手にとって読んでみて下さい。

この本の中では、最初に、「妊活とサプリの誤解」が載っています。

妊娠できるのは、排卵日のセックススだけだ。
月経がある間は妊娠できる
妊娠が判ったら、葉酸サプリはやめる
卵子は老化するが、肌や体が若々しい人は卵子も若い
食事を工夫すれば葉酸サプリはいらない
不妊治療を考えるのは、2年間妊娠しない場合だ
1回の排卵で卵子は1こずつ減っていく
年齢が同じなら、持っている卵子の数は同じぐらいだ
抗酸化は美容のためにするものだ

などなど、
これらはすべて間違いなのです。みなさん如何ですか。詳しくは、本の中でご確認下さい。是非ご購入下さって下さい。

それはいつが良いでしょう?  今でしょ!!
じぇじぇじぇ!! と感動する内容ですよ~
本を購入された方へは、メリットが倍返しです!
クリニック内では、本を待合室に多数おいてあり、皆様を「お」「も」「て」「な」「し」おもてなし~」しております。
書いてから、全くオリジナルの「落ち」の出せない自分がまた嫌になるな~。
さらに、こんなとこに自己嫌悪するのは、全く感覚ずれてますね。
本来の仕事がうまくいかないときに落ち込めば良いものを、、、、、
「お」「ち」「が」「な」「し」「おちがなし~」
もうヤケのヤンパチダー
お粗末!!! 

低温期のままでの妊娠例。基礎体温表で判断できない妊娠。

以下のような低温期のままで妊娠反応陽性(HCG 1000)、胎嚢が8mmの方がいらっしゃいました。40歳以上、AMH<0.1、自然妊娠です。黄体ホルモンは、1未満であり、黄体ホルモンでも基礎体温表でも、とても妊娠しているようには見えませんでした。不正出血があるので、妊娠反応をおこなったらば陽性であった症例です。
医師の間では、「女性をみたら妊娠と思え」と教えられます。特に子宮外妊娠では、見逃すと命に関わるので、とても重要な教えであり、過去には私も痛い目に遭っています。
今回は、この基礎体温表をみると、単なる不正出血にしか見えません。超音波検査で小さな胎嚢のエコー像が見えたので妊娠反応をして、陽性であり驚きました。




基礎体温表で低温期であっても、妊娠を否定は出来ないのですね。出血がある場合には、超音波検査と妊娠反応は必須であることを、再度思い出しました。
今後、基礎体温表が低温期であっても、妊娠反応を見ることにご協力をお願い致します。

2013年12月23日月曜日

着床障害は多いのでしょうか?着床しない大きな原因はやはり卵子の問題なのです。 

最近、着床障害について、よく質問されます。

内容は、「インターネットで調べると、妊娠しない原因として着床障害があり、習慣流産と同じ原因(おもに血液凝固能)が関係していると記載されているので、私に当てはまるのでしょうか?」とのようなものです。
個々で質問される方のイメージとしては、着床(妊娠)しない主な原因が、子宮や血液凝固にあるのではないか?とのことのようです。

これは少し異なったイメージがあると思います。
まず、体外受精における着床障害とは、胚移植しても妊娠しない事なのですが、、、、

着床障害の原因として、明確なものは、子宮鏡で観察して、子宮内膜ポリープ、粘膜下子宮筋腫、子宮内腔癒着、などなのです。血液凝固などによる着床症障害は、世界的にもいまだに明確には認められていないのが実情です。
子宮鏡検査で問題なければ、妊娠しないことと着床障害を、臨床的に明確には区別できません。
また、妊娠しない原因の80%程度は、胚の状況によると考えられています。子宮側における着床障害のしめる可能性は、残りの20%の中のそのまた一部のみなのです。したがって妊娠しない原因の多くても10%程度の症例に対しての漠然とした検査になるのです。
アメリカでの卵子提供においては、50歳以上の方への卵子提供の成績は、卵子提供した20歳代の方の妊娠率と同等です。子宮の問題はあまり関係ないのですね。

以上より、着床障害の検査は、現時点では、子宮鏡検査をすることがその検査・対策なのです。
同じ努力をするならば、その方向性は、胚の状態をいかに良くするかが、最も理にかなった効率的な考え方なのですね。最も重要なのは、①胚に対する対策と子宮鏡検査、②次に残り約10%に対する着床障害の検査?をすること、が、重要性の論理的な順番なのですね。

着床障害を疑う状態とは、良い胚を何度移植しても妊娠(着床)しない状況なのです。
形態の良くない胚、胚盤胞まで至らずに分割がストップしてしまう胚しか得られない、様な場合に、着床障害を疑って、習慣流産の検査をしても、的がずれている検査や治療になってしまうのではないでしょうか。

私たちは、子宮鏡をおこなって、子宮因子・着床障害の原因を排除できたならば、それ以降は胚の状態を良くすることに力を注いでいます。ビタミンC,Dや、酸化ストレステスト、DHEA検査、血糖検査、動脈硬化度テスト、脂肪酸、などの検査を行い、メラトニン、EPA、DHEA、サンビーマー、血糖改善薬、マルチビタミン、などをお勧めしています。
皆さんがすぐにおこなえる事としては、半身浴、早歩きのウォーキング、ジョギング、などもあります。
不育症の検査や治療と重なる部分もあるのですが、それ以外におこなえることも多いのではないでしょうか。

それぞれの想いを込めた感動の涙のショートプログラム

フィギアスケート、全日本の女子のショートプログラムを皆さんもみましたでしょうか。
最終グループのそれぞれの想いを込めた演技に、私、55歳が涙してしまいました。

1)最終グループ最初の安藤美姫さんは「マイウェイ」で、この激動の数年間の思いを込めた、非常に落ち着いた演技でした。復帰後の道のりで、聞こえてきたのはあまりうまく演技できていないとの報道。私もオリンピックまではそんなに甘くないだろうと考えていましたが、今回の演技をみて、オリンピックに行けるかどうかは別にして、現在の自分の想いを込めた演技に、今までの自分の勝手な評価がむしろ恥ずかしくなるような、感動する完璧な演技でした。今期自己ベスト。
2)2番手は浅田真央さん。彼女は今回のオリンピックで引退を表明しています。安藤美姫さんの直後で、やりにくかったとも思えますが、しっかりと演技をまとめ、1位に。この数年の絶不調から立ち直った精神力はすばらしい!の一言。
3)3番目は村上佳菜子さん。今年の演技は絶不調。大会直前にプログラムを変更して望んだ全日本。滑る前から最後まで、あの加奈子スマイルは全くなし。緊張している様子はシロート目からも明らかでした。演技は完璧であり、終わった時にもスマイルはなく、涙があふれて、号泣状態でした。今期自己ベスト。
4)ラストは鈴木明子さん。彼女も引退を表明しているようで、曲は「愛の賛歌」。演技もよく、感情もしっかりとでており、自分の世界がすばらしく表現されていたと思います。会場はスタンディングオベーション。今季自己ベスト。

この4人は転倒もなく、(単なるシロートの感覚ですが)世界的に見ても、今回のショートプログラムは、感情のこもったハイレベルのものであったと思います。歴史的なショートプログラムであったのではないでしょうか。
このように、自分の選んだ道で、自分の世界を表現できる技術、精神力、想い、には本当に感心させられます。皆、オリンピックを目指して、この全日本に標準を合わせて集中する能力はやはり世界で戦える能力なのですね。
しかし、その道は能力のみで説明するには失礼でしょう。それぞれが、それぞれの問題を抱え、そして努力し、克服しての演技に、私、55歳のおっさんですが、感動して、この4人の演技中には涙が止まりませんでした。

私の仕事は、「短期間の勝負」ではなく、ハイレベルを「維持する」忍耐なのですね。妊娠しない場合には、がっくり肩を落としつつも、妊娠した場合には皆さんからも喜びのパワーを頂き、一緒にがんばれます。
私も、自分で選んだ不妊治療に関われてうれしく思っています。これについては迷い無くがんばれますし、むしろ、関わることに喜びを感じています。この世界で、今後、どのように自分を表現していけるか、今年の終わりから来年にかけて、考えて実行して行ければ、と、来年の抱負を考える事が出来た、感動のショートプログラムでした。
皆さんにも、来年が良い年であるように!


胚盤胞1個の移植で、男女の双子を出産した例

胚盤胞1個の移植で、双子を出産された方から出産報告がありました。
お子さんは、男女の双子でした。
妊娠初期には、2羊膜2絨毛膜の胎嚢の袋が二つある双子でした。胚盤胞1個の移植でも、早期に分離すると、胎嚢が二つある双子になります(1%程度)ので、不思議ではない状況です。この場合には、1卵性の双胎で、よく似ている子が生まれます。
しかし、今回のように1個の胚盤胞移植で、男女の性別の差が出る例は、非常に珍しいことです
このようなことが理論的におこるか、と不思議に思う方も多いでしょう。

しかし、当クリニックでは2例目のことなのです。
前回も今回の例も、自然周期の胚移植であり、卵管は開通。排卵時期に卵胞を認めていました。
したがって、胚盤胞移植による妊娠と、自然排卵+性交渉での妊娠が、同時に起きたと推測されます。

自然周期の場合、交渉を持つと、凍結胚移植があった場合には、このようなことがおこりうるのですね。これは採卵周期でもおこり得ます。以前に採卵周期に1個の胚移植で、その時期に性交渉があり、品胎を妊娠したとの報告もあったと記憶しております。
体外受精をしているのですから、妊娠はしにくいはずです。しかし、採卵周期でも凍結胚移植周期でも、交渉がある場合にはこのようなことがおこり得るのですね。一方、少しでも妊娠の確率が上がる方法を考えている場合には、「避妊する」ことをおこなうことは難しいです。これも悩むことの一つなのです。




2013年12月22日日曜日

手軽な「新しい出生前診断」ご注意を

朝日新聞に、中国の会社が、格安(10万円程度)で「新しい出生前診断」を請け負っていることが報道されました。
当クリニックにも同様な営業のパンフレットが来ましたが、これには以下のような問題点がありますので、皆様もご注意下さい。日本産婦人科学会や日本医学会も注意を喚起しています。

 血液だけで利用できる新型出生前診断は、陽性の場合には、十分な情報と知識なしに人工妊娠中絶につながる可能性があるため、日本産科婦人科学会は、遺伝に関する専門外来の設置などを要件にした日本医学会が実施施設を認定しています。
 しかし、この中国の会社が契約した医療機関はいずれも、学会の認定施設ではないとのことです。
 
 日本医学会の「遺伝子・健康・社会」検討委員会は、このままでは新型出生前診断の検査が野放しに広がりかねないと判断して、日産婦の指針や、慎重な実施を求めた厚生労働省の通知を守るよう呼びかけることを決めたそうです。

 私が知る限りでは、千葉県内では、2013年12月現在、千葉大学付属病院のみが実施しています。
 この検査は、明確に言えば統計的な検査であり、断定できる検査ではありません。最終的な確認には、羊水検査などが必要になります。
 この点なども、検査の前に、遺伝専門医がしっかりと説明とカウンセリングをおこなってから検査をするはずです。

 皆さんも、検査を受ける場合には、検査を認定されている施設か、検査の前に遺伝専門医によるカウンセリングがあるか、などを確認されてから受けるようになさって下さい。
 世の中は、グローバル化しているのですね。また医療技術もビジネスチャンスととらえる考え方が広まっていることを実感する報道でした。

2013年12月11日水曜日

11月の妊娠数

11月の妊娠数がまとまりましたので、皆さんにご報告致します。

11月妊娠数    83例      今年の11月までの合計 815例

今年は、11月で、過去2年間の妊娠数を超えました。


                       今までの妊娠累計は、10,241例に達しました。

 

ART妊娠    55例        ART累計  532例

     IVF  29例             累計 192例

     ICSI  2例            累計  76例

     凍結胚移植 24例          累計 264例

 

  

  AIH妊娠14例          今年のAIH累計  134例


11月は、今年3番目の妊娠数です。
先月10月の顕微授精での妊娠数は月妊娠数でトップでしたが、その反動か、今月の顕微授精妊娠数は、少なくなっていました。一方、体外受精の妊娠数は29例で、月間最多人数でした。

通院中の皆さん!
クリニックへのご来院ありがとうございます。
皆さんの喜びのお顔をみたいために、引き続きがんばっていきますよ~~

2013年11月16日土曜日

生殖医学会参加報告(2)ART難治症例に対する戦略

さすがは塩谷先生!
体外受精でも妊娠が難しい方への対策を明確に整理して示して下さりました。

42歳以上の方には、

胚盤胞より初期胚移植の方が良い

顕微授精よりも体外受精の方が良い、

凍結胚より新鮮胚移植の方が良い、

禁欲期間は2日以内が良い

などでした。

体外培養自体、凍結/融解自体がストレスであり、抵抗力が落ちている卵子へ出来るだけストレスをかけない方が良い、との方針なのです。
様々な考えもありますが、私はこの考えを支持します。
今後、当クリニックでもこの方針で皆さんに体外受精の方法を提案していきたいと思います。

2013年11月15日金曜日

2013年生殖医学会学術講演会、参加報告(その1) メラトニンの有効性と認知度の拡大

本日、日本生殖医学会(神戸)に参加してまいりました。
今年も各施設で様々な工夫がなされ、まだまだ様々なことが試されており、今年も収穫の多い学会でした。
今年で目を引いた一つが、アンチエイジング、卵子の老化、酸化ストレスと対策、に関して、様々な視点から取り上げられていることでした。

酸化ストレスと不妊の関係もシンポジウムが開かれ、メラトニンについての効果も取り上げられました。

その中では、反復不成功の方に
メラトニンの投与で、
1)採卵率、成熟卵、受精率の上昇を認めた。
2)妊娠率は2倍になった。
3)対象としては、採卵率が40%未満、体外受精での受精率が35%未満、ICSIでの受精率が40%未満のかたが、主な対象だと考えられる。
などでした。
当クリニックでも、積極的にメラトニンをお勧めしています(私もアンチエイジングで飲んでいますが)が、学会のシンポジウムでも取り上げられたことで、今後はより広く使用されるでしょう。

ただし、使用開始は早いほど妊娠率が高いというデータでした。
したがって、2回不成功例、初回で卵子の質が良くない場合などには、今後、より積極的にお勧めしていく方が良いかもしれません。

2013年11月6日水曜日

10月の妊娠数

10月の妊娠数がまとまりましたので、皆さんにご報告致します。

10月妊娠数    75例      今年の10月までの合計 732例

                       今までの妊娠累計は、10,144例に達しました。

 

ART妊娠    57例        ART累計  477例

     IVF  19例             累計 163例

     ICSI  13例            累計  74例

     凍結胚移植 25例          累計 240例

 

  

  AIH妊娠7例          今年のAIH累計  120例


ここまでの1ヶ月の妊娠巣の平均は73例ですので、安定した妊娠数を継続しています。
一般不妊治療での妊娠数は18例(24%)です。
AIHの妊娠数が平均より少ない分、ARTでの妊娠数は、1ヶ月あたり2番目の多さでした。
特に顕微授精での妊娠数は月妊娠数でトップでした。
凍結胚妊娠と、新鮮胚移植妊娠数はほぼ同等でした。

2013年11月1日金曜日

サンビーマーの再評価、妊娠困難例への効果の可能性

今回、サンビーマーの会社(サンメディカル)と共同で、妊娠困難例に対するサンビーマーの長期使用の効果について検討しました。
サンビーマーは、遠赤外線で1日40分ほどおなかを中心に暖めることで、子宮や卵巣の血流を改善し、体外受精の反復不成功、妊娠困難な方の妊娠の可能性を高めるという考え方です。

その検討の結果、妊娠困難と考えられる方の、7例中4例の方が妊娠しました。

妊娠された4人の方は、サンビーマーをおよそ200日から500日使用していました。
卵子が成熟するまで80日ほどかかりますので、サンビーマーの効果は少なくとも3ヶ月必要と考えられますが、今回の結果からは、妊娠困難例の場合には、半年以上は使用することが必要であることが推測されました。以下の方はすべて36歳以上の方です。

症例1) 前医で顕微授精3回施行し、妊娠せず。2回は顕微授精でも分割停止し、胚盤胞移植できず。
当クリニックでは1回目採卵18個、1個を初期胚凍結(8細胞)したものの、9個の受精卵は胚盤胞まで分割せず。後にこの初期凍結胚を移植後妊娠するも7週で流産。
その後サンビーマーを開始。
サンビーマー使用4ヶ月目の顕微授精では1個初期胚移植し妊娠せず。3個の受精卵は胚盤胞まで分割せず。

サンビーマー使用8ヶ月目に3回目の採卵。2個初期胚移植で妊娠せず。残存2個の受精卵の1個は胚盤胞で凍結。その後の胚移植で妊娠、卒業。


症例2) 当クリニックで3回の顕微授精で受精卵が得られずキャンセル。4回目、5回目の採卵時は受精卵を得られ胚移植するも妊娠せず。
サンビーマーを開始。
サンビーマー3ヶ月後、6ヶ月後の顕微授精では正常胚が得られずキャンセル。

使用開始10ヶ月後の顕微授精では2個胚移植でき、妊娠卒業。


症例3)AMH<0.1、FSH;15 両側卵管水腫。
3回の採卵で、正常受精卵が得られず、胚移植できず。
サンビーマー開始。開始後4ヶ月目の体外受精では受精卵得られずキャンセル。7ヶ月後の採卵で卵子得られず。10ヶ月後の顕微授精では1個胚移植(G3b)するも妊娠せず。 

サンビーマー開始11ヶ月後、自然周期で4個採卵、1個のみICSIし授精、胚移植、妊娠し、卒業。


症例4) リューマチ合併。初回の5個のICSIですべて変性。
サンビーマーを開始。
サンビーマ開始2ヶ月後の採卵では、体外受精で良好胚が1個得られるも妊娠せず。8ヶ月後の顕微授精では2個良好胚移植するも妊娠せず。凍結胚盤胞が1個得られ、胚移植するも妊娠せず。

サンビーマー使用15ヶ月の採卵では、2個胚移植し妊娠。GS確認。胚盤胞1個保存中。


サンビーマーを半年使用していた時点ではサンビーマーの効果の結果が得られていませんでしたが、サンメディカルの協力を得て、継続してサンビーマーを使用して頂きました。

妊娠がかなり困難と考えられる場合には、半年以上の継続を念頭にいれて使用する必要があると考えられました。

サンビーマーを毎日使用することは実際にはレンタルが必要になりますし、
もちろん、これらの方には様々な排卵誘発、サプリメントなども使用しており、「サンビーマーによる妊娠」とは言い切れません。また、学会発表できるまでの検討はしていません。
しかし、サンビーマーの可能性を感じられる結果であったと思います。
今後は、より詳しく検討して皆さんにまたご紹介していきたいと思います。
当クリニックでも、より積極的にサンビーマーをお勧めして行く予定です。

一方、「サンビーマーでなければならない」のではありません。目的は血液循環をよくすれば良いのです。半身浴、ジョギング、早歩きのウオーキング、岩盤浴、レーザー治療など、様々な方法があると思います。皆さんの出来ることで、体を温め、血液循環をよくしてみて下さい。

2013年10月31日木曜日

AMH<0.1、卵管水腫切除が妊娠に繋がった方(重症の卵管水腫は着床を妨げます、その2)

AMH<0.1 FSH14.4で、卵管水腫切除後、妊娠された41歳の方のご紹介です。
40歳で来院、AMH 0.35、FSH;14.4 両側卵管水腫を認めて体外受精の方針となりました。
腹腔鏡の手術は4ヶ月待ちとのことで、その前に1回目の体外受精で3個採卵、1個胚移植で妊娠せず。
両側卵管切除後、AMH<0.1で、2回目の体外受精  5個採卵、2個胚移植で妊娠されました。
今後順調に進行することを祈るのみです。

この方は、年齢も高く、卵巣機能も低いため、卵管切除の決断は非常に難しい状況でした。したがって、手術待ちの時期にも体外受精に挑戦し、DHEAやビタミンD、ビタミンCも併用しました。

2回目の体外受精時にはAMH<0.1であり、何とか妊娠まで間に合った方です。
前医ではHSGをおこなっていませんでしたが、体外受精の方針でも、HSGをする意義もあることを感じます。

2013年10月29日火曜日

日帰りの精巣精子採取(TESE)により妊娠された2例のご紹介

当クリニックでは、千葉大学医学部泌尿器科の市川智彦教授が毎週火曜日に重症男性不妊の方の診察を受け持って下さっています。お陰様で、クリニック内でスムーズに重症男性不妊の方への治療も行えています。
無精子症の方には、日帰りで精巣精子採取(TESE)をおこなっていますが、精子がいれば無精子症のカップルも妊娠/出産が不可能ではないのです。
最近の2例の方をご紹介致します。

1)来院時、妻は30歳前半、無精子症でしたが、TESEをおこない、精子を10本に分けて保存できました。1回目の採卵で18個採卵、凍結胚移植で妊娠/出産(保存精子は1本使用)。2回目の採卵で採卵周期に妊娠し、出産。今回凍結胚移植で妊娠し、卒業、妊娠継続中。

2)新潟方面より、無精子症で当クリニックを紹介され来院。幸いTESEで精子を10本に分けて保存。初回の体外受精(採卵8個:マイルド法)で妊娠、卒業されました。

TESEでも精子さえいれば複数のお子さんが得られるのですね。
また、遠方よりわざわざ来院される方がいらっしゃると、またがんばろうという気持ちになります。北海道からいらしている方もいらっしゃりますが、このように信頼して頂き、本当にありがたいことです。
皆さんに来院して頂けると、私もまた元気が出ます。最近気づいたのですが、来院される方が少ない日は、とても疲労を感じるのです。
やっぱりワーカーホリックかも?!

2013年10月28日月曜日

2回の顕微授精で受精卵が得られず、通常の体外受精で受精、妊娠、卒業されたAMH<0.1の方のご紹介

41歳、前医で2回(1個、4個)採卵し、凍結精子で顕微授精するも受精卵を得られず来院。
AMH<0.1、 FSH 18 DHEAs 111 とかなりの卵巣機能の低下を認めました。
当クリニックでは、DHEAを投与し、クロミフェンのみで排卵誘発しました。
4個採卵し、通常の体外受精で3個受精、2個胚移植(新鮮初期胚)して妊娠、卒業されました。

この方から学ぶものとしては、
AMH<0.1でも、卵子は複数得られることもありますし、妊娠も不可能ではないこと、
「顕微授精は常に通常の体外受精よりも受精卵が多く得られる」というものでは無いこと、
だと思います。
このブログを見ている方は、AMH<0.1でも妊娠は可能であることはご存じだと思いますが、この方はラッキーでした。卵子が少ない場合には、治療はお急ぎ下さい。

卵巣癌手術、抗癌剤治療後の妊娠例(その2)

卵巣癌、抗癌剤治療後の体外受精で妊娠された方をもうお一人ご紹介致します。
この方は、この夏の治療の方です。
来院時30歳前半、卵巣癌(Ⅰ期)で片側卵巣切除、抗癌剤治療3クール、AMH40歳程度。
前医で子宮内膜ポリープ手術、人工授精を2回受けていました。
当クリニックの検査では、ポリープの再発を認め、内膜ポリー切除術の再手術をおこないました。
体外受精1回目、8個採卵、凍結胚移植で妊娠するも流産。
2回目の体外受精で3個採卵、1個胚移植して妊娠、卒業しました。

卵巣癌治療後の方も、今回紹介しました2例の方のように、体外受精が貢献している実感を感じるます。他にも、乳がん治療後のかたの妊娠、出産もしばしば経験しています。
癌治療後の方の励みになれば幸いです。

卵巣癌手術、抗癌剤4クール施行後、体外受精妊娠、出産報告

以前、卵巣癌治療後の方が、妊娠可能かどうかのご質問がありました。
今回、卵巣癌手術/抗癌剤治療後に、無事出産された方がいらっしゃいましたのでご紹介致します。
この方は、卵巣の手術を4回受けており、片側の卵巣しか残っていない状況でした。
また抗癌剤も、4回受けています。
来院時、30歳前半、月経不順で、基礎体温でも高温期が不明瞭であり、排卵も明確には認めていませんでした。
AMHは感度以下(当時で<1.0pM)、DHEAs:90  FSH:22.36 とかなり卵巣機能は低下していました。
DHEA、エパデールを投与し、体外受精を試みました。
クロミフェン周期で、7回採卵を試みるも、3回は採卵0、4回は1個採卵するも変性、未受精などで移植できませんでした。

しかし、8回目の挑戦で始めて胚移植でき、そして妊娠・出産されました。
お子様も元気の成長されており、今回二人目の挑戦に来院されたのです。

この方は年齢が若いことも幸いしたと思いますが、卵巣癌手術、抗癌剤治療後でも妊娠/出産される方は最近では珍しいものではありません。
ただ、やはり若いほど妊娠しやすいので、卵巣機能が低下している場合には不妊治療を急ぎましょう。
皆さんのご参考になれば幸いです。


2013年10月6日日曜日

IVF・ET5回経験、AMH<0.1で、HSG後、双胎妊娠の出産報告 体外受精”も”それ以外の方法”も”

今年の初めに、他院でIVF5回経験、AMH<0.1、FSH;20の39歳の方が、当クリニックでHSG後双子を妊娠されたことをご紹介しました。そして今回、帝王切開で男女二人のお子さんを出産されたとの報告を頂きました。
この方は、最後の体外受精を計画し、出来ることをと、サンビーマー(週2~3回)、エパデール、DHEA、ビタミンD、カウフマン療法 などを使用していました。お二人は、サンビーマーが最も効果的だったと、書かれています。

私には、AMH<0.1であっても、体外受精以外でも妊娠の可能性があること、の証明された1例であると考えています。

確かに妊娠する可能性は体外受精が最も高く、この方へも第一の治療法は間違いなく体外受精です。ただ、当クリニックの方針として、受診する皆さんにお話ししているのは、体外受精のみでなく、少しでも妊娠の可能性を上げるために、「体外受精”か”それ以外か」ではなく、「体外受精”も”それ以外の方法も!」おこなっていきましょう、とお勧めしています。

この方へは、卵管造影検査もおこない、左の卵管は抵抗がありましたが開通致しました。今回幸いにも左右の卵巣から1個ずつ排卵し、2卵性の双子の誕生とつながったと思います。私たちは、妊娠に向けても、様々な角度から総合的に治療する事を今後も進めていこうと思います。


2013年10月3日木曜日

2013年9月の妊娠数

夏ばて?のため、8月の妊娠数のご報告をしていませんでした。9月ととものご報告致します。
8月、9月とも73例の妊娠数でした。

               8月     9月

妊娠数          73例     73例

 ART           50例     49例

IVF/ICSI      20例     26例
   凍結胚移植      30例     23例

AIH              17例      16例

当クリニックの新鮮胚(初期胚)移植と、凍結胚盤胞移植の妊娠数はほぼ半々になっています。
顕微授精より、体外受精が2倍の妊娠数になっています。

皆さんご存じですか? 顕微授精よりも体外受精の方が妊娠率は高いのです
勘違いされている方が時々いらっしゃいます。顕微授精の方が技術が高いので、妊娠率も体外受精よりも高いと考えている方がいます。顕微授精は、授精をさせる技術であり、妊娠率を上げる技術ではありません。一般的には、顕微授精の方が、体外受精よりも3~5%妊娠率が低いのです。通常の体外受精で受精するならば、その方が顕微授精よりも妊娠率は高いのです。

今年は妊娠800件を超える可能性が高くなっています。
開業以来の妊娠数は 10,069例になりました。