2012年4月26日木曜日

体外受精と免疫とイントラリピッド(世界仰天ニュース)

昨日、世界仰天ニュースで、免疫が強すぎて妊娠できない方に、イントラリピッドという高エネルギー輸液をおこなった後に体外受精をして妊娠できた例の紹介がありました。
このような情報は、私も初めてだったので、気になり、少し検索してみました。
夜なので、あまり詳しくは検索しませんでしたが、イントラリピッドと体外受精の報告に関しては、PubMed検索システムでは見当たりませんでした。
テレビも途中からでしたので、経緯がわかりませんが、この情報には慎重な確認が必要だと現在考えています。
まず、「免疫が強すぎて妊娠できない」中身が明確ではありません。何を指標に免疫が強いというのか、が不明瞭です。NK細胞も習慣流産に使用する場合もありますが、NK細胞の測定は、かなりばらつきがあり、習慣流産でもその意義は確立されていません。
体外受精では免疫が強すぎて妊娠できない症例については、聞いたことがないのです。
また、1週間前にイントラリピッドをおこなうことで、簡単に免疫を変えられるというのもまだ聞いたことがありません。
この件は、私も気になりますので、再度十分に情報を集めて皆さんにお知らせ致します。
新しい方法は、いつも最初は過大評価される傾向があります。これについてもすべて解決されるのではなく、効果があるとしても、「この治療法がある一部の方には効果がある」程度である可能性が高いと思います。あまり期待しすぎずに、少し詳しい情報を集めてから考えてみましょう。

2012年4月16日月曜日

日本の生殖医療問題の先駆者(発信者)

本日、朝日新聞社の「アエラ」の現代の肖像欄で、長野のSマタニティークリニック院長のN先生がレポートされていました。N先生には一度お目にかかる機会がありましたが、アエラでは、代理出産、減胎手術など、産婦人科学会と対立しても、目の前にいる患者さんのために、「もがき、苦しみながらも=文中引用」信念を貫いて医療を続けた姿が報告されています。
体外受精も含めて生殖医学に対しては様々な考えがあり、なかなか公表しにくい問題を含みます。S医科大学のI教授(私が研修医の時に指導頂いた方です)が、N先生を「発信する人」と表現していますが、患者さんのために困難な道が予想されるのに問題提起を発信した姿勢には頭が下がります。
70才になられるN先生は、患者さん家族とご一緒の写真では笑顔満面でとてもお若い印象です。非常に高く遠い目標ですが、これも私の目標としたい姿ではあります。
様々な問題がこのレポートにはあげられていますので、皆さんにも是非読んで頂くことをお勧め致します。

2012年4月15日日曜日

AMHが0.1未満でも妊娠された例

アンチミューラリアンホルモン(AMH)は、残存卵子数を示し、卵子の質を示しているのではない、ことは以前にもアップしたと思います。
今回、AMH<0.1、FSH>35であり、卵巣機能がかなり低下して、残存卵子がほとんどない状態でも妊娠された方をご紹介致します。
約40才の方で、AIHを3回受けていました。更にこの方は子宮内膜増殖症で3回の内膜掻爬術を受けていました。しかし、幸いなことに、この方の子宮内膜は薄くはありませんでした。
AMH<0.1であり、体外受精を開始した昨年8月からは、排卵誘発剤を使用してもほとんど卵胞発育もなかったのです。クロミフェン誘発では2回とも採卵できず、3回目の自然周期では1個採卵できるも受精せず。
4回目の自然周期の採卵で1個採取でき、受精/胚移植して妊娠されました。
これほど卵巣機能が低い方には、排卵誘発剤は無効であり、プレマリンなどを使用して自然に卵胞発育を待つ方が良いかもしれません。
今回は、AMH<0.1でも妊娠する可能性を皆さんにお示ししました。ただし、この方は非常にラッキーだったと考えられ、実際にはAMH<0.1での妊娠はかなり難しいのです。皆さんもAMHが低下している方は治療をお急ぎ下さい。

2012年4月13日金曜日

凍結胚の移送による胚移植の時代

他院で体外受精をして1児出産後、千葉県に引っ越してきた方が、当クリニックでの凍結胚移植で妊娠されて、先日卒業されました。  何を皆さんに伝えたいかと言いますと、この方の凍結胚は、神奈川にあるクリニックで凍結保存されていたものでした。ご本人は、凍結胚を移送して当クリニックで保管し、こちらでの胚移植を希望されたのです。

移送の方法は、輸送用の液体窒素タンクに凍結胚をいれて送るのです。
これは、当クリニックでは初めてのことではなく、当クリニックから広島や九州のクリニックに送ったこともあり、そちらでも妊娠しています。技術的には飛行機での輸送も可能で、そのうちに外国との凍結胚の移送もありうるでしょうし、すでに経験のある施設もあるかもしれません。

今や凍結胚は容易に輸送可能であり、もちろん精子も容易に送れます。
ご存知の方も多いと思いますが、日本の胚凍結技術(特にVtrification:ガラス化凍結法)は世界で最も進んでいるのです。未受精の卵子凍結は、まだ臨床的には良い成績ではありませんが、胚凍結は確立された技術と言って良いでしょう。
実際には、これらの胚の移送には、両クリニックの技術が共に信頼おけることが前提であり、現在では、主に知り合いの医師同士での個人的な信頼関係でおこなわれている程度でしょう。

昨日、できるだけ若いときの胚を凍結保存するメリットをお伝えしましたが、転勤が多い方でもこの方法を利用すれば、そのご心配は多少は軽減されるのではないでしょうか。

2012年4月12日木曜日

体外受精における多数採卵のメリットの1例

最近、体外受精において、HMG誘発で多数の卵子を採取するメリットを感じた例がありましたので、皆さんにも参考になると思い、ご紹介致します。
患者さんは40才を超える方です。ご主人の体外受精へのご了承が得られず、ご本人の希望もありAIHを20回以上おこなっていました。今回、やっとご了解が得られ、初めての体外受精をおこなえたのです。幸いに多くの卵子が得られ、最終的に5個の凍結胚も得られました。
この方は、1回目の凍結胚移植で妊娠し卒業されましたが、無事元気なお子さんが誕生されることを心よりお祈り致します。
ところで、この方にはまだあと4個の胚が凍結保存されています。この方は、お子さんが誕生された後にも、二人目を妊娠/出産する可能性が十分残っていると思います。
これが、もし少数の卵子採取で、凍結胚が残っていない場合にはどうなるでしょうか?この方が無事、妊娠、出産したとしても、出産まで1年、授乳していれば、二人目の不妊治療はおよそ2年後になります。この場合、年齢的には二人目の妊娠はかなり困難な状況になってしまうでしょう。
特に、卵巣機能が低下気味であり、年齢が比較的高い方は、できるだけ若いときの卵子を採取して、できるだけ若いときの凍結胚を保存するほうが、二人目のお子さんを得られる可能性はぐっと高くなります。高齢になればなるほど、妊娠率は低下し、流産率は上昇し、染色体異常の率も上昇するのです。
以前は、「体外受精で一人授かれば十分」と考えられてきたのかもしれませんが、二人目、三人目を考えるとき、1人1人採卵・妊娠・出産するよりも、できるだけ若いときの胚を保存する方がメリットがずっと多いのではないか、とこの方の経過を振り返って見て考えました。
多数の採卵がすべてに於いて良いとは考えませんが、少数の卵子採卵がすべてにおいて良いとも限らないでしょう。皆さんの選択肢を広げる参考になれば幸いです。
皆さんご自身は如何お考えでしょうか。

2012年4月11日水曜日

卵子の取材と高橋の万端?な準備

先日、某国営放送のディレクターが取材に当クリニックに来院しました。内容は、「クローズアップ来年?」での不妊症での卵子について、もう少し深く切り込んで続編を作りたいとのことでした。
「取材」の連絡を頂いたときに、全国の視聴者の皆様にくたびれた恥ずかしい姿は見せられないと考えた私は、前日には整髪店に行き、髪から眉毛・鼻毛の手入れにはじまり、雑然とした診察室の机周りの物品の待避(整頓とはとても言えない状態)、何がおきても大丈夫なように下着も新調(何を想定しているのか全く意味不明)し、準備万端で撮影隊を待ったのでした。妻も夫の髪が乱れてもすぐに直せるように、櫛・ジェル、あぶらとり紙、などを携えて、控え室に陣取っておりました。クリニックのスタッフも撮影に備えて残ってくれています。準備はOKです。
さて、某国営放送のディレクターが着いたとの受付からの知らせに、落ち着いてゆっくりと診察室を出てスタッフを出迎えました。胸の中ではあたかもドラマのように大きく手を広げながらの歓迎のポーズで、、、

待合室に行くと、1人の男性が椅子に座っていました。彼こそ天下の某国営放送のディレクターなのです。撮影スタッフはまだ着いていないようで、器材を搬入している最中なのでしょう。私は名刺交換をして、まずはディレクターを診察室に招き入れました。挨拶をして、どのような「取材」かをあらためて伺い、どこからインタビューと撮影を始めれば良いか、頭の中で計算しながら、話の内容を組み立て始めました。撮影は斜め横からが良いだろう、カメラ目線は不自然になってしまうから、カメラは見ないようにしなければ、などと考えながら、、、、、
ディレクターの話はノートを広げてメモをしながらどんどん進む。ビジュアル系はどうなっているのだ!肝心なところが終わってしまうではないか! どうもおかしい!!いっこうに撮影スタッフが入ってくる様子がない。
ディレクターの話が進むにつれて、ハイテンションだった気持ちの高揚が、徐々にではなく、一気に冷めていく自分に気づきながら、話は進んでいくのでした。

その通りです。ディレクターは「取材」の申し入れであり、「撮影」の申し入れではなかったのです。
これに気づいたのは、私だけではありません。スタッフからもこの状況を見て、気怠く「もう帰っていいですか」と言われ、「後ろからの妻からの何とも言えない視線」を感じながら、取材は終了したのでした。
その夜の脱力感は、いかばかりのものか。風呂からもすぐには出られない。その為か?インフルエンザも下火になっているのに、本日は微熱と倦怠感を感じながら、「またやっちまった~」と自己嫌悪の53才なのです。

なお、このストーリーは、事実を元にしたフィクションであり、登場人物は現実とは全く関係ありません。(つまりどうゆうこと?)

2012年4月7日土曜日

昨年の妊娠数

遅くなりましたが、2011年の妊娠数をご報告致します。昨年の妊娠数は768名でした。月およそ50~80名の妊娠数です。
昨年は、やはり東日本大震災と原発事故が大きく影響し、4月の34名、5月の53名が最も少ない月でした。しかしその後は回復し、最多月は7月の81名でした。その後は月60~80名の安定した妊娠数で、スタッフもよく頑張ってくれたと思います。
思い起こせば、震災直後は日を追う毎にその被害の大きさが報道され、また先の見えない原発事故があり、日本はどうなってしまうのか、皆さんも不安な日々であったと思います。
1年経った現在も、決して震災や原発事故の復興が済んでいるとは言えず、むしろ遅々として進まない事態が続いています。
しかし、出産した皆さんからの報告を目にすると、むしろ私が元気づけられました。後ろ向きではなく、今後はできるだけ前向きに進んでいきたいと思います。
今年は、新しいことに挑戦して、何とか妊娠率をあげて、皆さんと喜びを共有したいと思います。
今回は色文字に挑戦しました。そのうち、写真なども挿入したいと思います。

2012年4月4日水曜日

40kg以上の減量で妊娠した例

今夜は台風のような強風が吹いています。皆さん、ご無事でお過ごしでしょうか。
さて、
先日、7回目の採卵(すべて顕微授精)で、ようやく妊娠された方がいらっしゃいました。
アラ4の方ですが、
1回目はHMG注射で排卵誘発するも1個採卵するも、未熟卵のため顕微授精もできず。
2回目はHMG注射で2個採卵するも、正常受精なし。
3回目は5個採卵できるも受精せず。
4回目、5回目は採卵できず。
6回目に8個採卵でき2個移植し妊娠するも7週で流産。
7回目に1個採卵で、顕微授精で受精・胚移植し妊娠し胎児心拍も認めました。
この方は、当初はBMIが30を超える高度肥満で、当初は卵子の状態も不良でしたが、非常に前向きの姿勢の方であり、40kgを超える減量をおこない、それに伴い、卵子の反応と状態が改善したと考えられた方です。
一般的に、体重の増加に伴い、妊娠率は低下し流産率は上昇します。やはり、体重管理の重要性をうかがわせる例でした。
体重も妊娠には重要な因子だと考えられています。この方のようにしっかりとした減量ができれば問題ないのですが、なかなかここまでの減量は難しいでしょう。そのような場合には、糖代謝改善薬のメトホルミンなども積極的に使用しては如何でしょうか。
また、当初は全く受精しなかったり、採卵すらできない経過でしたが、諦めずに努力・減量することで妊娠まで到達した例は、皆さんへの励みにもなると思います。皆さんも参考になさってみて下さい。
今後も、この方のような例をご紹介して参ります。

2012年4月2日月曜日

新年度のご挨拶

新年度が始まりました。
東日本大震災から1年が経ちましたが、昨年度1年間は日本全体は震災後からの復興を期する年だったと思います。私も大きな影響を受けましたが、同時にたくさんの経験をし、学ぶことが多かった年でした。
この3月で、千葉市医師会の医療担当理事を退任致しました。この間は、千葉市医師会員が行政・救急隊・多くの病院とも協力して、千葉市の救急医療を支えていることを実感した2年でした。医師の多くは、千葉市の救急医療を支えるためにがんばっているのです。確かに問題ある場合も認めますが、基本的には信頼できる医師が多いことを皆さんにもご理解頂ければと思います。
さて、私自身は、医師会の理事を退任したので、今後はまた高橋ウイメンズクリニックで、不妊治療に集中して力を注いでいこうと思います。
今後は毎月の妊娠数や様々な経験した例を皆さんに提示して、一緒に考えていきたいと思います。
今後もブログを時々見て下さい。あらためまして、不妊治療をより進めていきたいと思います。一緒にがんばっていきましょう。

2012年3月12日月曜日

卵子が少ないときの顕微授精は有効なのでしょうか?

先週、受精着床学会主催の勉強会がありました。
卵子が1~2個などと少ない場合には、顕微授精(ICSI)を選択している施設は少なくありません。
以前より、私は精子が正常ならば、卵子が少ないとの理由で顕微授精をすることに疑問を持っていました。
しかし今回の講習会で、精子が正常である場合に、卵子が少ない場合の通常の体外受精と顕微授精の受精率に関しての調査結果の報告がありました。その中では、顕微授精と通常の体外受精の受精率は同等で、決して顕微授精の受精率が高くなる様ではないようでした。
また、顕微授精は通常の体外受精より2~5%程度は妊娠率が低下する結果も認めます。したがって、精子が正常の場合、卵子が少ないことで顕微授精をおこなう理由はほとんどないと考えられます。
この調査結果には非常に感動しました。さすがは、Hウイメンズクリニック(関西)のST先生です。
当クリニックの顕微授精の比率は、およそ50~60%です。H]ウイメンズクリニックも、現在、顕微授精の基準を明確に定めたことで、顕微授精の比率はおよそ50%程度に低下したとのことです。
皆さん、顕微授精は受精しにくい状況で受精させる手段であり、妊娠率を上げる手段ではありません。すべて顕微授精にすることが妊娠率を上げる方法、ではないのです。最近は安易に顕微授精を勧める傾向がある様ですが、考え直すべき時の始まりの時期かもしれません。

2012年3月1日木曜日

クルーガーテストの信頼性?

精子の精密な形態検査をクルーガーテストと言います。通常は、クルーガーテストでの精子正常形態率は15%以上だとされることが多いようです。3%未満だと、受精率が低くなるので、顕微授精を考慮する必要があるとされます。
しかし、これは絶対的なもではありません。ある方には、採卵日のクルーガーテストで1.1%でしたので、顕微授精をお勧めしました。しかし、最初なので、ご夫妻は通常の体外受精をご希望し、実際に6個中5個が受精分割し、妊娠に至りました。
精子はかなりばらつくものであり、ましてや採卵日でない時の精子のクルーガーテストを参考に顕微授精をするかどうかを決めることは出来ません。
またクルーガーテストが悪くても、卵子や精子数に余裕があれば、スプリット(体外受精と顕微授精を半々ずつおこなう)などを試しても良いと思います。
精子も卵子も、人間の体もいつも一定ではないのです。検査で決めつけずに可能性をよく考えて対策を進めてみては如何でしょうか。

2012年2月24日金曜日

本日の例と卵子の老化・当クリニックの目指す施設像

最近のブログでは、卵子の老化についてのブログの閲覧が非常に多いようです。やはり皆さん興味があるようですね。今後これについて再度報告をしたいと思います。
本日の診察でも、体外受精が最終手段ではなく、不妊治療の一手段と考えて、広く可能性を考えた方が良かった例がありました。
30才前の方で、他院で1年間に5回体外受精を受けていました。内服薬での排卵誘発が効果なく、HMG注射で誘発すると、卵巣過剰刺激症候群になり、キャンセルになるので体外受精を選択していたようです。
当クリニックでは、HMG注射を少量にするなどして、1~3個の排卵の調整で人工授精をおこない、1回目で妊娠されました。ご本人も驚いていましたが、不妊症治療は「体外受精が最も有効」とも限らないのです。
当クリニックでは、少しでも妊娠の可能性を高めるために、体外受精ももちろん千葉県内では最多数おこなっていますが、それ以外の妊娠も追求しています。
「体外受精だけしか出来ない施設」ではなく、「妊娠に向けて様々な手段がある中で、最も有効な方法を選択する事が出来る能力を持つ施設」を目指しています。最近は体外受精をおこなえる施設は増加していますが、その中身は同じではありません。その選択は、皆さんご自身が良く中身を理解しておこなう必要があるでしょう。

2012年2月23日木曜日

本日感じた事

今日の診療で感じたこと3題。
1)すでに7回AIH後、体外受精胚移植施行するも妊娠せず。次回の体外受精までにとAIHを施行し妊娠。体外受精後に人工授精や自然妊娠も時々あり得ます。体外受精を受けていても、また一般不妊治療をすることも珍しいことではありません。「体外受精は最後の治療だから、体外受精に 行ってしまうともどれないのではないか」と不安がる方もいらっしゃいますが、いまでは体外受精も不妊治療の一手段であり、「最終手段」とも言えない場合もあり得ます。時間(年齢)を重要視して手段を考えていきましょう。

2)腸の疾患で、大腸をすべて切除した方が、手術により両側卵管が閉塞しました。大きな腹部の手術であり、卵管の開通手術は非常に困難・危険であり、体外受精・胚移植をおこないました。ひとり出産し、今回は、凍結保存していた胚で第2子を妊娠。無事誕生されることをお祈りします。このような方には、体外受精が最終手段であり、体外受精・医学の進歩の恩恵を幸運にも受けられた方です。

3)AMHは10月から測定方法が変わりました。以前の値のおよそ8分の1の値になっています。今回、新測定法で、1.0ng(45才相当)と非常に卵巣機能が低下した方に、排卵誘発をしました。ショート法で、HMG300単位を10日間使用。予想に反して10個も採卵できました。1つの検査結果は、絶対正しいとは限らず、他の指標を参考にして挑戦してみることも必要でしょう。

皆さん、1つの証拠、1回のことで、あることを決めつけないで、再検査や別の視点から見ることも必要だと思いますよ。共にがんばっていきましょう。当クリニックでは、相談体制が充実していると思います。臨床心理士によるカウンセリングもご利用下さい。

2012年2月22日水曜日

HMG誘発法のメリット

本日は、ショート法での体外受精・胚移植の36才の方の例をご紹介致します。
卵管癒着と子宮腺筋症があり他院でマイルド法を5回受けて1回妊娠(流産)した方が当クリニックにいらっしゃいました。採卵数は1回、1~2個で、胚盤胞も含めて毎回胚移植は出来ていたようです。
今までとは違う方法を試す目的で当クリニックではショート法を選択しました。採卵数は14個、採卵3日目の初期胚を2個移植し双胎妊娠し心拍も認めました。また胚盤胞も4個凍結保存できました。分娩まではまだ長くこの方が順調に経過することを祈るのみですが、凍結胚も4個あるので、今後の胚移植も容易に可能で、出産後も妊娠希望の場合には36才時の胚なので期待が十分持てそうです。
これは単に一例ですが、結果的には、HMGによる排卵誘発も有効であることを示している例だと思います。ここではHMGによる誘発が最も良いと言うつもりはありません。ただ、マイルド法が万能ですべての方に良い方法であると決めつけては不利になる可能性があると思います。今回のように、若い時の凍結胚がたくさんあれば、若いときの胚での妊娠の可能性も高くなるのです。
当クリニックでは、自然周期法、マイルド法、アンタゴニスト法、ロング法、ショート法、すべてをおこなっています。皆さんは、1人1人条件が異なります。医療すべてがそうですが、一つの治療法ですべての方が治療できるのではないのです。
排卵誘発も、一つの方法がすべての方に最良なものはありません。画一的な治療法ではなく、1人1人の条件を考えたオーダーメードによる誘発が重要であろうと思います。
一つの治療法にこだわりすぎずに、広い視点で治療法を考えてみては如何でしょうか。
これは、不妊治療一般にも言えることですが、体外受精しか治療法がないと決めつけないで相談することも大切だと思います。
ご参考になれば幸いです。

2012年2月16日木曜日

卵子の老化;NHK クローズアップ現代

2月13日の夜、NHKのクローズアップ現代で、「卵子の老化」についての放送がありました。
この中で、杉浦教授は、医師の中では常識であるが、患者さんは「卵子も老化する」と言われると、非常に驚き動揺する旨の発言をされていました。
「卵子の老化」とは、女性の卵巣内の卵子数の低下のみではなく、染色体異常卵の増加(40才以上では、採卵される卵子の少なくとも半数以上が染色体異常)、卵子のエネルギー産生能力(ミトコンドリア機能)などが低下して、年齢と共に妊娠率は低下し、特に40才以上では妊娠しても半数以上が流産になってしまうのです。また、芸能人の方が45才ぐらいで妊娠・出産することが報道されると、簡単にその年齢まで出産できると考えるのは、誤解を招き、不妊治療が送れる原因になり得る旨のお話をしていましたが、確かにあり得ることと思います。
妊娠できるかどうかは女性の年齢が最も重要なのですが、「卵子の老化」について説明をすることをわれわれはまだ十分にはおこなえてなかったのでしょう。
患者さんが「卵子の老化」について聞いて驚いた、との話は、私も考えてしまいました。診察では強調していたつもりでしたが、まだ一般的には伝わってはいなかったようです。今後は、このホームページやパンフレットでも早期から皆さんにお伝えしていくようにしていきたいと思います。

2012年2月3日金曜日

アンチミューラリアンホルモンと実年齢の誤解と不安

アンチミューラリアンホルモンにより「卵巣年齢」が評価できるようになりました。AMHにより、早期に卵巣機能の低下がわかるようになり、治療計画をたてやすくなりましたが、一方で「卵巣年齢」について誤解があり、過剰な不安を持つ皆さんも増えてきました。
AMHは、あくまで残存卵子数の評価をしているものであり、卵子の質を示しているものではありません。したがって、「AMHでの卵巣年齢」が高い結果であっても、流産率が上昇したり、ダウン症などの染色体異常の確率の上昇はしません。この点は心配されないでよいと思います。
実際には、卵子の質を評価する方法はなく、その方の実年齢で推測することになるのです。
ただし、AMHが低く残存卵子数が少ない場合には、AMHが高い方よりも妊娠する確率は低くなりますので、やはり治療は急ぎましょう。
AMHは不妊治療に非常に有用ですので、不妊治療の初期に検査をうけることをお勧めいたしますし、積極的に利用してみては如何でしょうか。

2012年1月31日火曜日

傷つく言葉、うれしかった言葉

本日、NPO法人Fineから会報誌が届きました。Fineは、{不妊当事者とその予備軍、妊娠を望むすべてのカップルや周辺の人たちに向けて「妊娠・不妊についての正しい情報の発信」を目的}にしています。ご存じの方も多いと思います。今回の会報は『Fine祭り2011 ひとりじゃないよ! 不妊』の報告集でした。当クリニックも毎年協賛しているのです。皆さん、ひとりではありません。共にがんばっていきましょう。
ところで、このスタッフブログ紹介の中で、「傷つく言葉」として、「元気出して」「あきらめていると思ったわ」「子供ができたらできたで大変なのよ」「教育費がかからなくていいじゃない」などがあげられていました。使用している本人は気づかずに使用しているのかもしれませんが、やはり相手の気持ちを考えて欲しいものです。
一方、うれしかった言葉のひとつに、
治療経過をわかっている医師から「もうこれ以上、やることはないです」と言われて、もう努力しなくて良いのだと、ホッとした。
との紹介がありました。これは医療提供側としては、やるせない気持ちになります。なかなか医師側からはこの言葉を言うには勇気がいります。受け取る人により、「見放された・見捨てられた」と受け取られるのではないかと思ってしまうのです。この言葉を言えるのは、やれることを互いにしっかりやって、信頼関係ができた患者さんにのみ言える言葉なのだと思います。しかし、信頼関係を築けた方に「もうやることがない」と言えるという、ジレンマを感じてしまいます。
今回はやや暗い話題になってしまいました。

2012年1月22日日曜日

他施設見学

1週間のご無沙汰でした。年が明けて様々な会議や新年会などの用事が一気に始まり、ブログを綴る時間がない1週間でした。
本日は、名古屋にある浅田レディースクリニックの見学に職員と共に行ってきました。名古屋駅前のプラダの上という一等地にあり、クリニック自体も非常に美しく、また様々な工夫がなされた、流石、日本を代表する不妊症治療医の一人である浅田先生のクリニックです。待合室は空港、培養室は宇宙船をイメージしたコンセプトでつくられており、スマートな印象です。他施設を見ることは非常に勉強になります。皆さん様々な工夫をしており、当クリニックにも取り入れてよりよいクリニックにしたいと思います。すばらしい先生方と交流を持てて、私は非常に幸運だと思います。
さて、当クリニックでは、胚移植後の安静時間を徐々に短縮して15分ほどにしています。浅田レディースクリニックも徐々に短縮し、現在では胚移植後の全く安静時間をとっておらず、妊娠率も低下しないとのことでした。胚移植を受けた方は、すぐに立つと胚が落ちてしまうと心配なさる方が多いと思います。しかし、胚は1mmにも満たない大きさであり、すぐに立っても落ちたりしないのです。皆さんも今後は心配されないでよいでしょう。

2012年1月16日月曜日

ブログを見ていただいている御礼

最近、このブログを見て下さっている方から、お声を頂いています。大変ありがたく、うれしく感じています。ブロガーがたくさんいらっしゃって、個人の生活の様子などもどんどん発信している方も多いのが以前はよく理解できませんでしたが、見てくれている方から声をかけられるとやはりうれしいもので、その気持ちがわかる気がします。ただ、今のブログは、単色の文章のみであり、非常に色彩にも乏しいので、今後はより色彩などにもこだわって、できるだけが画像も入れたいと思います。今回は決意表明でした。今後ともよろしくお願い致します。

2012年1月12日木曜日

黄体機能不全

本日、黄体機能不全に非常のこだわる方がいらっしゃいました。黄体機能不全とは、基礎体温表で、11日以内の高温期、高温中期の黄体ホルモンが15未満、などの定義があります。黄体機能不全は不妊症の大きな原因と考えている方もいらっしゃいます。
ただ、当クリニックでは黄体機能不全をあまり重視していません。基礎体温は測り方で容易に変化し、また毎周期同じものでもないのです。黄体ホルモンも、毎周期異なっているものでしょう。
実際には黄体機能不全は不妊症の原因としては、小さい原因なのです。治療としては、黄体ホルモンを補充するよりも、まずは排卵誘発剤を使用するのが根本治療だと思います。排卵誘発剤を怖がって使用せず、黄体ホルモンのみ補充しているのは、あくまで基礎体温表を整えている程度の治療法でしょう。
皆さん、あまり「黄体機能不全」という言葉を気にしないでよいと思いますよ。