2014年2月28日金曜日

「日本生殖医学会 認定研修施設」に認定されました!!

本日、日本生殖医学会より、認定研修施設として認定されたとの連絡が届き、生殖医学会の
ホームページにも、掲示されました。
千葉県では、千葉大学などと並んで、5施設のみの認定です。
皆さんも一度、生殖医学会のホームページを訪れてみて下さい。
日本生殖医学会の認定研修施設とは、生殖医療専門医の研修施設として、認められたと言うことです。今後は、当クリニックで専任で研修した場合には、専門医の試験を受けることが出来ると言うことなのです。
それが何だ、と言われれば、当クリニックで研修をする人以外は全く関係の無いことですが、あるレベル以上の施設であると認められたと言うことです。
つまり、とにかく、このように言わせて頂きたいだけなのです。
読んで頂きありがとうございました。
今後も高橋のたわ言に、時々、お付き合い頂ければ幸いです。
まだまだ好き放題、たわごとを書いていくぞ~~!

2014年2月26日水曜日

男性への薬剤投与の影響(子供への影響は?)

本日、リュウマチの薬、リウマトレックスを夫が飲んでいるが、赤ちゃんへの影響、奇形発生が増えるかどうかの質問がありました。
すぐには、確信を持って答えられなかったので調べてみました。

結論から言えば、夫がリウマトレックスを飲んでいても、特に赤ちゃんの奇形発生が増加することはないようですので、あまり心配しないで良いでしょう。

夫に対しての薬剤投与の一般的な考え方をこの機会に説明致します。

一般的には、男性に投与された薬剤が妊娠に与える影響は非常に少なく、奇形児が増えるようなことはほとんどない、と考えられています。
もし、精子が薬剤の影響を受けたならば、通常は影響を受けた精子は受精能力がなくなります。影響を受けなかった精子が選ばれて受精するのです。
精子が出来るのには70日ほどかかります。射精される精子は、数日前にはすでにできあがっている精子なので、例えば、射精の数日前に服用した薬などはほとんど影響はないのです。

ただし、注意するべき薬として、痛風治療薬のコルヒチンと抗癌剤があります。

コルヒチンは、夫が服用した場合、その配偶者から、ダウン症候群及びその他の先天異常時が出生する可能性があるとの報告があるようです。ただし、現在ではその危険性は少ないと考えられているようです。
抗癌剤は、男性の精巣に影響し精子がしばしば少なくなり、妊娠しにくくなります。もし妊娠した場合には、奇形よりも染色体への異常が関係する可能性があります。
また、抗悪性腫瘍薬のサリドマイド(サレド)とレナリドミド(レブラミド)、抗ウイルス薬(C型慢性肝炎治療薬)のリバビリン(レベトール)などは、精液中にも分泌される可能性があり、パートナーが妊娠している場合、または妊娠の可能性のある場合には、精液が女性に入らないよう性交を控えるか、コンドームの使用が義務づけられています。
したがって、男性が以上のような薬を使用した場合には、新しい精子が出来る3ヶ月程度は、避妊をした方が良いでしょう。

基本的には、男性には、風邪薬、抗アレルギー剤、ワクチン、その他、ほとんど問題なく使用可能です。
また、薬ではありませんが、タバコはやめましょう。明らかに赤ちゃんへの悪影響をおこします。

AMH<0.1、凍結胚移植で妊娠された例

先日、34歳、AMH<0.1で、4回目の採卵で4個採卵、ICSIで4個受精、新鮮胚で1個移植するも妊娠せず。残存3個中1個胚盤胞になり凍結。その後1個の胚盤胞を移植して妊娠。の方がいらっしゃいました。

35歳以下の方でもAMH<0.1と、非常に低い方はいらっしゃいます。妊娠希望の方は、やはり早期にAMHを検査しておいた方が良いという1例だと思います。

AMH<0.1での妊娠は、珍しくはありません。「AMH<0.1は卵子が無いことを示している」のではありません。AMH<0.1でも複数の卵子は採卵できることもあります。諦めずに挑戦してみましょう。この方は、最初の頃は卵子の状態があまり良くなかったので、DHEAとビタミンDを使用しました。
ただし、年齢が高くなると、折角採卵できた卵子も染色体異常が高くなり、妊娠しにくくなります。
特にAMH<0.1の方は、残されている時間が少ないことをしてみていますので、より治療を急ぐ必要があることをご理解下さい。
今度AMH<0.1の方の集計をしてみたいと思います。結果が出ましたらまた皆さんにもご報告致します。

久々の1日10例の妊娠;元気が出ます!

先日、久々に1日の妊娠数が10例に達しました。
たまたま妊娠の波が重なっただけなのかもしれませんが、やはり妊娠数は元気の源です。
妊娠数が少ないと元気が出ず、多くなると気分も上昇します。
人間はやはり、感情の生き物なのですね。この年になっても、単純な自分にあきれることもしばしばありますが、、、
開業して13年経ち、同じ事の繰り返しかもしれない毎日なのですが、妊娠の結果を見るとやはりうれしいのですね。これは幸せなことです。感情レベルでは、まだ私は毎日の不妊治療では、マンネリ化してはいないことを実感します。
毎日の仕事で、うれしい事、気落ちする事を感じられることは、むしろ幸せなことなのでしょう。
今も深夜の1時ですが、今日も精一杯生きられました。
また明日も、皆さんと、職員(付き合わされてあきれられているかもしれませんが、、)と、共に一緒にがんばりましょう。

2014年2月25日火曜日

重複子宮の方への診療(腟中隔切除のメリット)

最近、重複子宮の方が複数受診され、いくつか気になりました。重複子宮とは、子宮が完全に左右に分かれており、子宮が2個あり、それぞれの子宮に1本の卵管がある状態です。

重複子宮の方の中には、しばしば腟中隔といって膣にも中隔があり、膣が2分されています。
1)このような方の中には、腟口も2分されるので、痛くて性交渉が困難な方もいらっしゃいます。(普通に交渉も持てる方もたくさんいらっしゃいますが)
この様な場合には、腟中隔を切除すると、交渉の痛みが軽減する可能性があります。当クリニックでは日帰りでおこなっていますが、手術時間も10分程度であり、術後の痛みもあまりありません。
2)膣が2分されていると、性交渉を持てても、精子は交渉を持てた側の子宮/卵管にしか行けないので、通常は妊娠のチャンスが少なくなります。しかり、腟中隔を切除することとで、両側の子宮/卵管に精子が進めるので、左右どちらの排卵でも妊娠の可能性が得られます。
3)腟中隔があると、通常は腟口は左右同じ大きさではないのですが、中隔を切除することで、人工授精の場合でも、どちら側の子宮にも容易に人工授精もおこなえるようになります。また子宮鏡検査や卵管造影検査も、容易に両側おこなえるようになります。

腟中隔をそのままにしても、不妊治療は可能なのですが、このように腟中隔を切除することで、不妊症の検査や治療も容易におこなえるメリットがあるのです。
今回の対象の方々は、前医では腟中隔をそのままで、治療を受けていました。
そのために、行える検査や治療が制限されていたのです。

今回、39歳の方は腟中隔切除後、人工授精2回(前医で3回)の後に、体外受精・凍結胚移植で妊娠されました。今後も順調に進んでいくことを祈るばかりです。
重複子宮があっても、人工授精や体外受精なども大きな問題なく受けられるのですね。

AMH<0.1、FSH41、体外受精で妊娠した症例

AMH<0.1、FSH;41で、体外受精1回目で妊娠された36歳の方をご紹介致します。
4cmの筋腫もある方で、子宮内腔の変形がややありました。AMH<0.1でもあり、筋腫の手術をせずにすぐに体外受精のスケジュールに入りました。
しかし、体外受精予定の前周期には、生理16日目でも内膜は5mm未満で卵胞も全く見えませんでした。E2;47、FSH;41、LH;54と、閉経に近い状態にありました。これに対して、プレマリンを使用することで卵巣を休め、プラノバールで生理をおこしリセットしました。
その次の周期には、生理3日目よりプレマリンを使用したところ、生理10日目で右卵胞が19×16mmとなりました。幸いに、採卵でき、受精、何と胚盤胞まで成長したのです。これを移植し妊娠。先日心拍も認めました。
この方は、36歳と比較的若く、AMH<0.1であったので、すぐに体外受精に進んで良い結果が得られました。今後も順調に経過することを祈るばかりです。
この方には、対策はプレマリンとDHEAのみの使用でしたが、初診受診後1ヶ月で体外受精の決断をご夫婦でおこなったスピードが幸いしたのかもしれません。

2014年2月24日月曜日

ICSIでなく、マイクロドロップ法という選択肢

先日、通常ならば顕微授精(ICSI)が必要な方が、どうしてもICSIを避けたいとの要望があり、マイクロドロップ法を10年ぶりにおこないました。
その結果、採卵した3個の卵子がすべて受精して、胚移植が出来ました。顕微授精が当たり前におこなわれている現在では、マイクロドロップ法はすたれていった技術ですが、若い胚培養士が顕微授精をおこなわずに受精したことに驚いていました。
私は、培養士の大半がマイクロドロップ法を知らない世代になったことに驚きました。皆さんの選択肢としてもあり得る方法なので、ここでご紹介致します。

皆さんご存じでしょうか?通常の体外受精で受精するにも、1CCあたり10万匹程度の運動精子が必要なのです。精子1匹いれば受精する、のではないのですね。
顕微授精がおこなわれる以前には、通常の体外受精しか受精させる方法がなく、重症の乏精子症の方には、精子が足らずに、卵子がたくさんとれても受精できないことがしばしばおこりました。
そのようなときに、マイクロドロップ法がおこなわれたのです。精子と卵子をおよそ1CCの培養液の中で受精させるのですが、その場合に元気な運動精子が10万匹ほど、つまりそれだけの精子濃度を必要とするのです。しかし、運動精子が少ない場合には、培養液を1/10にする事で、精子濃度を10倍にする事が出来るのです。このように工夫して、少ない精子でも体外受精で受精卵が得られることがあるのですね。
今回の方は、原精液の精子運動率が12%、総運動精子が360万でした。一般的にはICSIの適応でしたが、幸いに、今回はマイクロドロップ法で受精卵が得られたのです。

どうしてもICSIをしたくない方には、挑戦してみることができる方法でしょう。マイクロドロップ法は一つの選択肢といえますので、ここでご紹介致しました。
ただし、この方法は、非常に重症な乏精子症には使えません。やはりICSIの方が、重症の乏精子症にもおこなえるし、より高率で受精卵を得られるのです。マイクロドロップ法は、ギャンブルのような方法になります。受精しないことも少なくないことを受容した上で、どうしてもICSIにしたくない場合にはあり得る方法なのです。

2014年2月23日日曜日

今年(2014年)4月からの体外受精補助の制度改正

本日、千葉県より、2014年4月からの特定不妊治療助成事業の改正の予定のお知らせが届きました。
平成26~27年は、移行時期であり、ややわかりにくくなっていますが、以下のパターンでした。

①平成26年度(4月以降)に新規に申請される方
  ア) 39歳以下: 通算6回まで(年間制限なし;43歳まで)

  イ) 40歳以上:  初年度は年3回まで  2年度目は年2回まで
       (ただし、28年度以降は、43歳以上の方は女性対象外)

②平成25年度までに助成を受けたことがある方
 
現行制度(初年度は年3回まで、2年目以降は年2回まで 通算5年度 10回まで(年齢制限なし))
 (27年度で終了)

平成28年度からは新制度に全面移行
   ア) 39歳以下: 通算6回まで(年間制限なし)
   イ) 40~42歳: 通算3回まで(年間制限なし;43歳未満)
   ウ) 43歳以上: 助成対象外 




言い換えますと、4月以降に新規申請する方は、

1)39歳以下の方は、体外受精は 通算6回まで (43歳未満まで)

2)40歳以上の方は、最高5回(26年度3回、27年度2回として)まで


すでに申請をしていた方は、
26年度 27年度は、年2回ずつ 助成を受けられます(通算10回まで)
詳しいことは、各自治体の窓口におたずね下さい。

すでに、体外受精の助成制限は始まっているのですね。
利用の出来る方は、早めに助成を受け事もお考え下さい。
今後は、回数の制限が明確になっているので、我々も、1回1回の体外受精を大切に、より少ない回数での妊娠を目指して努力をしていきたいと思います。

2014年2月20日木曜日

4回胚移植不成功後、卵管水腫切除し、その後3回妊娠反応陽性となった例

両側の重症の卵管水腫があり、4回胚移植をしても妊娠しなかった方が、卵管を切除して1回目の胚移植で妊娠された30歳頃の方の例を2013年9月に紹介致しました。
残念ながら、その初回の妊娠は8週で流産となりましたが、卵管切除後2回目の胚移植は妊娠反応が出て化学的流産となったものの、3回目の胚移植でまた妊娠され7週で卒業となりました。

重症の両側卵管水腫があって、術前は4回胚移植しても妊娠されなかった方が、卵管水腫の手術後は、3回とも妊娠され、無事卒業となった例です。
この方は、卵管水腫の手術前後で、妊娠の結果が劇的に変化した、典型的な例です。

超音波検査で判るような、重症の卵管水腫がある場合には、このように卵管水腫の手術も選択肢とお考え下さい。

2014年2月19日水曜日

2014年1月の妊娠数

2014年1月の妊娠数の報告を致します。

1)1月の妊娠数 55例     

 ART妊娠    24例    (内訳:  IVF/ICSI 7例     凍結胚移植 17例) 

 AIH妊娠    13例     

その他      18例  (タイミング、クロミフェンなど) 

1月は、まだ採卵が少ないので、例年での妊娠数は年間で最も少ない月です。
開始としては、通年と同様だと思います。

最近は、診療での皆さんの待ち時間が長くなり、大変ご迷惑をおかけしております。
看護師さんの休職、転勤などがあり、ご不便をおかけします。
比較的午後は待ち時間が少ないので、可能であれば、午後の診察時間もご利用下さい。
現在、混雑解消に向けて、鋭意努力中です。今しばらくのご理解をお願い申し上げます。

今年も、年始は過ぎて、2月も終わろうとしています。
毎日が過ぎるのがどんどん早くなっていると感じる毎日です。皆さんは如何でしょうか。
早くなる毎日でどれだけ出来るのか、挑戦する気持ちを持ち続けたいと思います。
また一緒にがんばっていきましょう。

2014年2月17日月曜日

万能細胞、小保方さんの業績を聞いて

万能細胞のSTAP細胞は、そのあまりにも簡便な方法でできる事に世界中が驚きました。
しかし、その事実が分かるまでの努力は相当のなものだと思います。
小保方さんの会見や背景を聞いて、一番印象に残ったことは、皆さんは何でしたか?

私は、彼女が「いつも仕事のことを考えていた」ことが印象に残っています。
やはり、常にそのことを考えていることで、今回の偉大な発見になったのだと思います。

私もまだまだ不妊治療でやりたいことがあります。常に考えていく姿勢を持って行きたいと思います。

また、STAP細胞などが、生殖医療に応用できる時代を追求していきたいですね。

ところで、どのような施設、医師が信頼できるかしばしば質問されます。
なかなかどの先生が良いか?などは実際には判りませんが、
1)治療の成績をしっかりと公開している
2)質問にしっかりと答えてくれる
3)希望に対して、出来る範囲で希望に応える姿勢を見せてくれる
などが、挙げられるでしょう。

2014年2月16日日曜日

タバコは体外受精に「悪影響を与えない?

タバコ喫煙はIVFの転帰に有害な影響を与えない?

European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biologyという雑誌に、喫煙が体外受精の成績に悪影響を与えないという論文が載りました。

これは、当クリニックの考え方とは異なりますので、医学論文への考え方も含めて、コメントをしたいと思います。
この論文では、いくつかの問題点があります。
1)まず、タバコを吸っている女性が、わずか43例であるとです。(内訳は、女性非喫煙者[n=171]、男性非喫煙者[n=118]、女性喫煙者[n=43]、男性喫煙者[n=96])
わずか43例の女性の喫煙者の妊娠率を比較して、差が無かったとの結論は信頼度がかなり低いのです。この患者数では差が無かったが、もっと患者数を増やせば差が出る可能性が十分あります。
2)採取した卵細胞の総数と、成熟卵細胞数は喫煙者群の方が多かったことです。つまり、喫煙者のグループの方が、偶然、卵巣機能が良い人が集まった可能性が高いのです。
3)実際に、アンタゴニスト群内で検討したところ、非喫煙者に比べて喫煙者の平均年齢は有意に低く、採取した卵母細胞の総数は有意に多かったようであり、喫煙者のグループがやや若い可能性があるのです。
 
医学論文には、結果が真逆の報告が山ほどあります。内容も信頼の置ける報告から、ほとんど信頼の置けない報告まで様々なのですね。したがって、一つの医学論文の結果を見てそれが正しいと考えるのは早計なのです。実際には、タバコが妊娠率を低下させる論文はたくさんあります。
 
当クリニックでは、タバコは明らかに妊娠率を下げ、流産率を上昇(2倍)させると考えています。
喫煙している方は、すぐに禁煙して下さいね。
なお、タバコを減らしても、1本1本大事に吸うことになり、むしろニコチン、タールが上昇します。減らしても意味が無いのですね。きっぱりとやめることをお勧め致します。
 
ちなみに、テレビでやっていた事が正しいとは、同様な理由ですべて信じてはいけません。特に、私も楽しく観ていますが、サンマのほんまでっかTVで、様々な論文のことが紹介されています。しかしそこで紹介される話も、「そのような論文もある」と言うだけで、それが信頼を置いて正しいとはとらえない方が良いでしょう。TVでも「ほんまでっか?」という姿勢で楽しんで下さい、と断りを入れていますね。
ただ、さんま(さん)は、58歳であのテンションは非常に励みになりますね。私のお手本の一人です。
 私の目指すのは「笑いのとれる生殖専門医」なのか??? 何を目指しているのだ~!
 
 
 
 

子宮外妊娠での、卵管を残す意義は?

子宮外妊娠での、卵管切開(保存)と卵管切除ではその後の妊娠率はほぼ同等

ランセットという、有力雑誌で、子宮外妊娠における、卵管切開(保存)手術と、卵管切除を受けた群では、その後の妊娠率に大きな差は無かったとの論文が載りました。
卵管を残した群の3年間の累積妊娠継続率は、卵管切開術で60.7%、卵管切除術で56.2%で、ほぼ同等な結果でした。一方、卵管切開(保存)群では、子宮外妊娠の繰り返しが高かったようです。

このような報告は今までにもありましたが、有力紙に載った報告であり、再確認されたと考えて良いでしょう。
つまり、卵管妊娠では、もう一方の卵管が正常であるならば、子宮外妊娠の卵管を残しても、その後の妊娠率が上昇することはごくわずかであり、ほとんど変わらない。一方、子宮外妊娠が繰り返す率は上昇する。したっがって、無理に卵管を残す意義は少ないのですね。
ただし、すでに片方の卵管がない方にとっては、子宮外妊娠の再発が高くなるリスクを受け入れるならば、出来るだけ卵管を保存する手術はあり得る選択肢です。
Salpingotomy versus salpingectomy in women with tubal pregnancy (ESEP study): an open-label, multicentre, randomised controlled trial.The Lancet, Early Online Publication, 3 February 2014.

最近では体外受精が広く受け入れられており、卵管を残すことが少なくなっています。
また、手術ではなく、子宮外妊娠にメソトレキセートという、抗癌剤を投与することで手術せずに、子宮外妊娠部の萎縮をおこして手術せずに済ませる選択肢も増えています。

余談ですが、体外受精でも子宮外妊娠はおこります。体外受精では子宮外妊娠は予防できません。また、卵管を両方切除している場合でも、体外受精で子宮外妊娠はおこり得ます。子宮と卵管の境の卵管間質部や、子宮の入り口の子宮頸管部にも妊娠することがあり、この場合も子宮外妊娠なのですね。

糖質制限食(低炭水化物食)の安全性(29年間の長期追跡)

皆さん、雪の影響は如何でしたでしょうか。
私はこの2週間、家とクリニックを行き来していただけで、遠出は出来ませんでした。
この間、ブログを更新すれば良いのですが、その気力も起こらず過ごしていた次第です。
本日は久しぶりに電車に乗り、アンチエイジングの測定器械の説明会参加のために東京に出かけてきました。
さて、久しぶりの投稿です。

当クリニックでは、アンチエイジングを不妊治療にも積極的に取り入れています。
肥満、高血糖は、妊娠率を下げ、流産率を上昇させます。
BMI:体重(m)÷身長(kg)の2乗:が25以上の方には、糖負荷試験を積極的におこない、ダイエットをお勧めしています。

ダイエットには様々なやり方がありますが、当クリニックでは、糖質制限食(低炭水化物食)を推奨しています。糖質制限食の良いところは、無理なカロリー制限をしないで良いことです。炭水化物を制限すれば量は無理な制限は不要なのですね。「簡単に言えば、パン、麺類、ご飯を1/3にして下さい。」とアドバイスしています。しかし、最近でもいまだに、糖質制限食(低炭水化物食)の危険性を強調している意見もみられます。
まだデータが十分ではないとの意見なのですが、実際には、アメリカの糖尿病学会の指針でも、「低炭水化物食は、体重減少に有効」とうたっているのです。

日本でのデータは確かにほとんど無かったのですが、2月13日付けのメディカルトリビューンで、1面に「糖質制限食の安全性にエビデンス」(京都女子大学:中村保幸氏)との記事が載っていました。
それによると、緩やかな糖質制限食(低炭水化物食)は、女性においては、心血管死や総死亡の低下を認めた、との報告のようです。男性では、外食や喫煙などもあり、明確な結果は得られなかったようです。
この報告では、マイルドな糖質制限食は29年間の長期的にも安全であり、健康、長寿に有効であることを日本で始めて明確にした報告かもしれません。
これを励みに、当クリニックでも、糖質制限食をもっと積極的に広めていこうと思います。
当クリニックでは、管理栄養士さんが栄養相談をおこなっておりますので、皆さんも是非ご利用下さい。

私も現在、83kgの壁に当たっては跳ね返されておりますが、何とか80kgを切りたいと思います。(過去の栄光よ再び!!!)
皆さん、ご一緒にがんばっていきましょう。(タカハシは何をがんばっているのだ??)

2014年1月29日水曜日

AMH<0.1で、体外受精6回目で妊娠、卒業した例

AMH<0.1で妊娠された方は珍しくないことは、何度もご紹介していますが、今回はAMH<0.1で、6回目の体外受精(当クリニックでは3回目)で妊娠、卒業された方をご紹介致します。
年齢は30歳代後半
他院で、ロング法2回(採卵数は2回とも2個)、クロミフェンのみ使用で1回(採卵数1個)、胚移植は1回のみでした。
当クリニックでは、AMH<0.1であり、
1回目はクロミフェンのみで1個採卵1個移植。
2回目はクロミフェンーHMGで、2個採卵1個移植。
3回目は、フェマーラと同様な薬の、アナストロゾールのみで2個採卵、2個移植で、妊娠、卒業されました。

いくつかのコメントを致します。
①AMH<0.1でも、年齢がまだ30歳代で、卵子がとれるならば、がんばってみる意義はあると思います。AMHは卵子の質ではありませんし、妊娠しにくい事を示しているのではありません。
②AMHが非常に低いときには、ロング法のようなHMG注射を多く使っても、必ずしも多数の卵子をとれるものではありません。その場合には、マイルドな方法の方が良いのでしょう。採卵数は多いほどキャンセル率も少なくありますし妊娠率も高くなりますが、AMHにより誘発方法を考える事は非常に重要でしょう。
③前医では3回中1回の胚移植でしたが、当クリニックでは3回とも移植できています。準備としては、DHEA、ビタミンCやDを測定し、低下していたのでCとD、DHEAを補充しました。また3回目の2ヶ月目にはサンビーマーも毎日使用しています。これらも効果があったと希望的な見方をしています。
④3回目は、誘発方法として、フェマーラと同様なアナストロゾールを使用しました。子宮内膜への悪影響が少ないとされる薬ですので、新鮮胚移植には有効かもしれません。

さて、勝手なコメントを書きました。
当クリニックでおこなったことが有効であったかどうか、どれが有効であったか、全く有効なものがなく偶然妊娠されたのか、それは残念ながら1例の報告では分かりません。
したがって当クリニックのやり方が有効であったとは断言しません。実際にはこのような例が蓄積されることで、有効であったかどうかが徐々に分かるものでしょう。
しかし、このような例があることを皆さんにお知らせする意義はあるでしょう。
また、「試してみる意義がありそうな方法」の紹介にはなると考えています。
皆さんの参考になりましたでしょうか。


2014年1月25日土曜日

DAZ遺伝子欠損の方のICSI妊娠例と遺伝の注意事項

以前に、DAZ遺伝子欠損の重度の乏精子症の方が、ICSIで妊娠、卒業されました。
DAZ遺伝子は、Y染色体上にあり、精子の生成に関わっている遺伝子です。これか欠損すると、造精機能が障害されて、無精子症や重度の乏精子症になります。
しかし、DAZ遺伝子が欠損していても、必ずしも無精子症になるとは限らないのですね。
この方は、射精精液内に少ないながらも運動精子が認められ、ぎりぎりですが、射精精子でICSIがおこなえて、妊娠されたのです。このような方には、ICSIの技術が本当に役立った例と言えます。今回は2回目の妊娠ですが、良い経過であることをお祈りしたいと思います。

さて、今回の例では、皆さんに考えて頂きたいいくつかの参考事項と注意事項があります。
まず第一に、無精子症でなくても、重症の男性因子の場合には、染色体検査(Gバンド)とDAZ遺伝子の検査を受けておいた方が良い、ということです。今回の妊娠では、DAZ遺伝子の欠損がY染色体上になるのですから、お子さんが男児の場合には、男児に遺伝することになります。女児の場合にはY遺伝子はないので、DAZ遺伝子も関係ないことになります。つまり、染色体・遺伝子の問題が遺伝することがあり得るのです。料金は2つで5万円程度だと思いますがこれをしっかりと調べておくことは、対象の方にも有益な情報となり、学会でも推奨されております。

第二に、第一で述べましたが、男児には遺伝することになります。したがって、ICSIをする前から、男児の場合にはDAZ遺伝子欠損が遺伝することをご理解しておく必要があります。ただし、DAZ遺伝子欠損は、いわゆる奇形の発生とは関係ありません。

第三に、これは今後変わる可能性がありますが、現時点では、着床前診断の対象にはなりません。第二点で述べましたように奇形の発生や致死的な因子でもないので、着床前診断の対象としては認められないでしょう。

この方は、ICSIの恩恵を得られた典型的な方です。今後も多くの方に補助生殖医療の恩恵が届けられるようにがんばりたいと思います。
一方で、おこりうる問題などには皆さんもしっかりとした理解と対策が必要でしょう。疑問に思うことや不安に思うことは、様々な方法で解決しておきたいものですね。

2014年1月23日木曜日

人工授精の黄体補充 (生殖医療ジャーナルクラブ報告その3) 

人工授精での黄体補充は、HMG注射周期でのみ有効である。
人工授精では、排卵誘発をした方が妊娠率が高くなります。そして、黄体期にプロベラやルトラールなどの黄体ホルモンがしばしば使用されます。
当クリニックでは、単に黄体ホルモンを補充することは推奨しておらず、黄体機能不全の治療には、クロミフェンやHMG注射などの排卵誘発をお勧めしています。これは、黄体機能不全は、良い排卵がおこっていない結果であって、単に黄体ホルモンを補充することで卵子の質が改善して妊娠率が上がるとは考えていないからです。根本的には良い排卵をおこすために排卵誘発剤を使用することで、結果的に高温期も安定すると考えているからです。
人工授精でも、クロミフェン周期では、御本人の希望や、クロミフェンを使用しても高温期が短い方などに対して、黄体ホルモンは補助的な意味で使用していました。
一方、HMG注射での排卵誘発では、高温期が短いことがしばしばおこる(約20%)ので、HMG注射を使用する場合には、ルトラールを使用することを標準としてきました。

今回の2013年の報告(Fer.Ster. 2013;100:1373~1380)では、5つの有効な論文を集めて検討した結果、人工授精での黄体ホルモン補充は、HMG注射をおこなった場合に有効であったと報告されました。HMG注射+人工授精では、黄体ホルモンを補充した方が、1.5倍の妊娠率、2倍の生産率得られるようです。
一方、クロミフェン+AIH、 クロミフェン+HMG注射+AIHでは、黄体ホルモン使用による妊娠率の上昇は認められなかったようです。クロミフェン使用周期には、漫然と黄体ホルモンを使用するのではなく、黄体ホルモンが低く、高温期が短い場合などに限定する方が正しいのでしょうね。

これは今まで当クリニックでおこなってきた方法が正しかったことを証明した論文であり、黄体補充の意義を明確にしたものです。
皆さんへもこれで、今まで以上に明確に自信を持って黄体ホルモンの使用/非使用を説明できると思います。

2014年1月17日金曜日

JISART(日本生殖補助医療標準化機関)審査通りました!!

昨日、2013年のJISART(日本生殖補助医療標準化機関)施設認定審査が通ったとの連絡が来ました。
昨年の10月に審査を受け、是正事項を改善してこの度通りました。
培養室の停電時の対応策、超音波検査の定期点検、ホルモン検査の信頼性の確保、など、細かい点まで改善し、外部の点検を入れて、しっかりと信頼性と安全性を確保しているのです。
これも、様々な準備、点検、改善をしてくれた職員の皆さんの努力の賜です。
これが、審査を通過した証拠のバナーです。
もちろん、これを取ることが目的ではなく、いかに信頼の置ける、高度な水準の不妊治療を実際におこなっていくかが重要なのですが、この審査も一つの目標になるのです。
皆さんも、JISARTのホームページを訪れてみて下さい。現在27施設が認定されています。


今回の認定を励みに、今後も内容の伴った不妊治療を進めていきたいと思います。
今年は、より進歩したアンチエイジングも取り入れようと考えていまので、その際には皆さんのご協力もお願い致します。

追加説明です。
インターネットを見ると、JISARTは「卵子提供をおこなっている団体」とする情報がいくつか見られます。しかし、これは正しくはありません。
JISARTはそもそも、高度の不妊治療を目指す団体なので、卵子提供を目指している施設の集まりではないのです。
実際には、卵子提供に関しては、各施設の考えによります。卵子提供をおこなっている施設は現在4施設であり、JISART=卵子提供施設ではありません。ただし、JISART内では卵子提供に関しての検討はおこなっていますし、これは産婦人科学会や生殖医学会でも認められている検討です。


2014年1月14日火曜日

生殖医療ジャーナル 参加報告 その2 ライフスタイル

今日、プロフェッショナルをみました。
24歳ですが6冠の天才囲碁プロ棋士の話でした。過去、勝負所で「自分を信じる」ことが出来なかったために勝てないことが続いた壁の話を語っていました。若者ですが、勝負の世界に生きている勝負師の言葉で、とても共感できる話でした。私はこの年になってもまだまだ後悔、反省、ブレブレの日々ですが、やっと「自分を信じる」の言葉の意味を少しは理解出来つつあるのかな、と感じました。
確かに、不妊治療でも、お手本となる一流の先生方は、ご自分のスタイルを持っていますね。

さて、ジャーナルクラブのお話です。
今回はライフスタイルのお話です。(  )は私のコメントです。

肥満
・排卵誘発、AIH、IVFなどの治療では、肥満の方には体重減少を図ることで、排卵誘発率を高めて、妊娠率の向上が期待できる。
・BMIが25以上の女性の、IVF、ICSIでの、妊娠率は低下し、流産率は上昇する。
・BMIが20未満の女性でも、IVFの妊娠率は低下する。
(やはり、肥満は妊娠/出産には良くないのですね。理想的にはBMI;25以下を目標にしたいですね。一方、痩せすぎも良くないのですね。)

アルコール
・1日12g以上のアルコールを取ると、IVFの成績は低下する。

煙草
・IVF前に、煙草を吸っていると、IVFの成績は低下する。
・IVFの成功率は男性の喫煙でも1/2~1/3に低下する。
(体外受精を予定する方は、夫婦共に禁煙する必要がありますね)

カフェイン
・カフェインは、自然妊娠率、IVFの成績には影響を与えない、との報告と、悪影響がある報告が混在する。
・IVFでは、コーヒー2~3杯までは、影響がないとの報告もある。
(実際には2杯までは問題ないと考えています)

食事・サプリ
・乳製品(チーズなど)の取り過ぎは、精子の形態を悪化(奇形精子の増加)させる。
・週2回のサウナを3ヶ月続けたらば、精子の状態は悪化した。
・βカロテンやルテインで、前進運動精子が6.5%高かった。
・リコピンで正常形態精子の比率上昇。
・ビタミンCは、精子濃度を上げた

サプりメントのように楽に卵子の状態を得することは困難ですが、運動は最も明確な対策です。体を動かし、循環を良くすることが、明確な対策になります。
(やはり、しっかりと運動した方が良いでしょう)




2014年1月12日日曜日

生殖医療ジャーナルクラブ(15周年)参加報告 その1 

本日、栃木県りんどう湖のホテルで、毎年恒例の生殖医療ジャーナルクラブに参加してきました。
今年は15周年であり、15周年特別企画の不妊症の総論の講義もありました。
荒木先生、横田先生、ありがとうございます。
さて、皆さんには数回に分けて勉強した内容をご紹介致しましょう。
この会は、毎年1月に前年1年間の不妊症専門雑誌のすべてを、2泊3日で通読する過酷な修行の会なのです。朝は7時から、夜は8~9時まで、ホテルに缶詰になって勉強します。外は寒風吹き荒れるので、脱走者は命がない!のです。
私は今年は非常に残念?ながら、明日が休日当番なので12日の日帰り参加でした。\・)()(・/

今年は100名以上の方が参加されましたが、若手も多くなりました。
私もいつの間にか、ベテランの中に分類されているようです。
ついこの前までは、若手で通用していたのだけれどな~。
 



さて、肝心の勉強した中身です。

まず、大事なことは、論文や報告は、その一つで正しいとは限らないことです。その執筆者の1意見だと考えて頂いた方が良いでしょう。学会誌に掲載されている論文も、多くの方に認められるには数年かかるわけですから、インターネットの情報は、その正確性については、信頼性はかなり低いのです。
今回の1年間の論文の通読でも、主張されている意見が割れていることは多くにあるのですね。
したがって、論文はもとより、インターネットの情報はなおさら、それが正しいと決めつけない方が良いでしょう。
このブログの意見や情報も、私の視点がかなり入った情報の選択ですので、そのつもりで眺めて下さい。なお、私のつぶやきは(  )です。

まず第1回は、クロミフェン療法について、
・クロミフェンは排卵障害の方には第一選択の治療法です。
原因不明不妊のカップルには、クロミフェン+タイミングでは妊娠率(3.3%)は高くはならない
・原因不明のカップルには、クロミフェン+AIHならば、妊娠率の上昇(9.5%)が期待できます。
(・したがって、原因不明不妊の方には、①クロミフェン+AIH、②HMG注射(+AIH)の治療法が当クリニックではお勧めします。)

黄体機能不全の診断基準は、確定はしていないのですが、クロミフェンは、黄体機能不全の是正に用いられてきました。
(黄体機能不全の治療の第一選択は、クロミフェンだと思います。)
・クロミフェンの開始日を変えても妊娠率に差は認めない。
(当クリニックでは、子宮内膜への影響を考えて生理開始3日目からの使用を標準としていますが、さほど大きな差は無いので、3日目でも4日目でも、5日目でも、神経質になる必要は無いですね)
・クロミフェン単独で排卵しない場合には、メトフォルミンの投与が勧められる。ただし、メトフォルミンを使用する場合には肝臓と腎臓の検査も実施しておく必要がある。
(当クリニックでは、メトフォルミンは、PCOの方、肥満の方、糖代謝異常の方に使用しています。肝機能は通常おこなっていますが、腎機能も今後検査をしておきましょう。ご理解をお願い致します。またHMG注射の追加使用もあり得ますね。)
・クロミフェンの副作用としては、①情緒不安定、②ホットフラッシュ、があります。視力障害も2%未満でありますが、視力障害がある場合には、他の排卵誘発を試みるべきである。
・クロミフェンでは、先天奇形のリスクは高くならない。流産率も自然妊娠と変わらない。卵巣癌と排卵誘発剤の関係も、現在では否定されている。
などでした。
もうすぐ夜中の12時ですが、千葉駅に着きますので、本日、速報はここまでです。